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SF・短編 #1-3 愛撫

どうもビビビです。本日はグレッグ・イーガン日本オリジナル短編集「しあわせの理由」ピックアップ第二弾、「愛撫」をご紹介します。

はい、読む前はもちろんそっちの意味だと思っていました。違いました。愛撫とは19世紀のベルギーの画家クノップフの「(スフィンクスの)愛撫」という絵画で、Wikipediaにも画像が載っている彼の代表作です。

美しい男女が頬を寄せ合う幻想的な絵画ですが、ここに登場する、体は獅子で頭部は女性のスフィンクスが実際に発見された、というところから物語は始まります。

今回はちょっと本筋と関係ないところで気になった点があったので、そっちを掘り下げてみようかなと思います。少しネタバレますので、未読の方ご注意ください。今回のテーマは、この黒幕、見たことない?です。

あらすじ

とある科学者の家で発生した強盗殺人事件の現場で、主人公の若い警察官は、女性の頭部が豹の体と融合している昏睡状態のキメラを発見する。キメラを目覚めさせるため捜査を始めた警察官だったが、黒幕を突き止めたと思った途端、自らもその計画の一部に巻き込まれていることを知る。

キメラ

キメラとは1つの個体内に遺伝子が2セットある個体のこと言います。胚の段階で一緒に受精した兄弟とまじりあって発生すると考えられています。顔の半分が全然違う柄の猫の写真を見たことはないでしょうか?左側はクロネコちゃんで右側はサビちゃんの遺伝子で構成されているヴィーナスさん↓などが有名です。(彼女の場合は本当のキメラかは意見が割れています。)

でもこれを人為的に生み出そうというのは素人が考えてみてもどえらい技術と時間とお金と人員と権力が必要になります。自己免疫疾患が起こるなどの後発的な問題はもとより、どうやって胚の段階で全然違う生物同士を、しかも狙った部位だけ入れ替えることが出来るのか。どこが何に発達するかわかるもんなんか?しかし、今回出てくる黒幕はそれを成し遂げるに足る人物でした。

黒幕

そう、この人物こそがこの短編集中最もクレイジーな輩なのです。他にもヤバイ科学者が登場する短編内でこの人がダントツに危ない。まず、見た目が危ない。

❝ 男はゆったりとした白いスーツを着て、白い覆面、というよりフェンシングマスクのようなものをかぶっている。わたしが近づいていくのに気づくと、男は大げさに両手をあげて出迎えた。❞

えー、フェンシングマスク被って日常生活している人怖すぎん?


他にも特徴を挙げるとすれば

・紳士的

・作品のモデルたちのことを愛している

・実は体は二代目

・世界的富豪でバイオアーティスト

・自分の見たい世界を実現することに手段を択ばない


なんか、既視感を覚えませんか。

ボンドルド

画像引用:アニメ「メイドインアビス」公式サイト

そう、かの「黎明卿」ボンドルド氏ですね!バリ似です!話を読み進んでいくと、「愛撫」の黒幕も黎明卿に負けず劣らずのクレイジーさが浮き彫りになっていきます。

まとめ

今回は本当に、ボンドルド氏見つけたよ、というご報告だけの記事です。どんなところが似ているかは、是非読んで確かめてみてください。

本当は、キメラを描いたクノップフがモチーフにしたのは豹じゃなくてチーターだとか、それは模様を見れば分かるからヒョウとジャガーとチーターの模様比べようとか、色々したいことは有ったんですが、まあ、次の機会に譲ります。

次回は「SF・短編 #1-4 ボーダー・ガード」です。

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