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日本の自治体でのナッジの広がり②:宇山生朗さん(北海道)

このシリーズでは、日本の自治体における、ナッジ実践の広がりについてご紹介します。

2回目の今回は、有志でナッジユニットの立ち上げを進めている、宇山生朗さん(北海道)をご紹介します。

宇山生朗さん(北海道環境局気候変動対策課)

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ー宇山さんは、北海道で有志のナッジユニット立ち上げに向けて準備をされているそうですね。

はい、今、関心のあるメンバーと一緒に設立の準備をしています。自分はもともと北海道環境財団からの出向者で気候変動対策が専門なのですが、気候変動対策は複雑で理解が難しい面もあり「実際に行動につなげるにはどうしたらよいのか」という問題意識を持っていました。自分なりに普及啓発事業などに取り組んでいる中、新たなアイデア模索のため、2019年の気候変動・省エネルギー行動会議(BECC)に参加しました。そこで、YBiTのポスター発表を見て、北海道でもぜひナッジユニットを展開したい、道内市町村にも広めていきたいと考えました。いまでは気候変動のみならず、あらゆる領域を対象にナッジの適用を進めたいと思っています。

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ー出向先の組織の中で短期間で仲間を見つけるのは、大変ではなかったですか?

出向先では様々な有志の勉強会に参加して自発的に活動されている方とお話ししたり、庁内で熱意のある発信をされている方にアプローチして、同じ問題意識とその解決に向けた熱意を持つ仲間を見つけることができました。また、日頃から自分の関心を周囲に話しておいたので、専門性が高くやる気のある人を紹介してもらえたりしたこともありました。また、具体的なノウハウについては、YBiTの行動経済学会やBEST連絡会議での資料を参考にしたり、わからないことはメンバーに聞いたりしてサポートしてもらいました。


ーその熱意の源はなんでしょうか?
気候変動対策はあらゆる人にとって非常に重要な問題ですが、複雑で専門性も高いため、理解しがたい面があります。また、中長期的な課題であるため、後回しになることも多いでしょう。そのようなバリアがある中で、従来の教育・情報的アプローチだけでは、行動変容の促進策として限界があると感じていました。こういった問題意識のもとで、大学の研究者や民間の研究所の専門家とも連携してきましたが、やはりそれだけで行政の現場にまで普及させるのは難しい。現場は業務に追われて多忙なため、新しいことを始めるのにはエネルギーが必要です。今、YBiTをはじめとした行政職員による有志のナッジユニットのネットワークも広がりつつあるので、このエネルギーを逃さず活用して、北海道を起点に政策のトランスフォームをしていくことができればと思いました。

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(宇山さんが関わってきた省エネ促進事業の一例)


ー今後はどんな展開を考えていますか?

北海道でのナッジやブーストなどの行動インサイト普及を目指して、庁内だけでなく道内市町村との連携や人材育成も含めて実現していくため、北海道行動インサイトチーム(HoBiT)を夏をめどに立ち上げます。また、個人的には気候変動対策や環境保全に関心があるので、持続可能性(サステナビリティ)を目指すためのナッジにも力を入れていきたいと思っています。

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ー宇山さん、どうもありがとうございました。


今回は、北海道の宇山さんをご紹介しました。気候変動対策に対する熱意、信念に基づいて、様々な立場の人の触媒となり、ナッジをはじめとする行動インサイトの普及を力強く推進しようとする姿に感銘を受けました。北海道及び道内市町村をはじめとしてさらなる広がりや、ご専門の環境・エネルギー分野でのネットワークを生かした活動の展開が非常に楽しみです。

今後のさらなる活躍を期待しています!


この記事は4/8のYBiT研究会及びインタビューをもとに構成しています。
聞き手・構成:植竹香織


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