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『死の天使の光輪』

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初の短編小説。青年はささやかな物書きであった。彼は物語を書くために、ある廃墟へ赴く。
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2024年5月の記事一覧

『死の天使の光輪』第五章

『死の天使の光輪』第五章

 古びた廃墟に長い影が二つ並んでいる。昼間、燦々と輝いていた太陽が今では優しい橙色に変わっている。世界と二人を包み込むその光は、どこか新しくも懐かしいような、一種の宗教画に見る後光のようだった。

 しばらく黙って夕陽を眺めていた二人。しかし、静寂を破って、青年が少女に声をかけた。
「そろそろ日が落ちるし、町まで戻ろうか」
「確かに、もう戻らないと」
 少女は青年から離れるようにして、夕陽のある方

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『死の天使の光輪』終章

『死の天使の光輪』終章

「よぉ兄ちゃん。あの少女に会ったんだろ?」
 青年が町の宿に戻ると、宿屋の店主が話しかけてきた。何故この店主は、青年が少女と会ったことを知っているのか。不思議に思いながらも返事を返した。
「ケイラのことですよね。会いましたよ」
「だろうな、コートの裾が切れてるぜ」
「え?」
 コートの裾を見ると、まるで切り刻んだかのような切れ目が残っていた。店主が話を続ける。
「あの黒服の少女はな、死神なんだよ。

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短編小説『死の天使の光輪』

短編小説『死の天使の光輪』

 草原を駆ける西風が草露を拭う。
 その青年は、草原に出来た小径を歩いていた。厚い雲が悠々と漂う晴れた昼間のこと。風に吹かれながら歩くその姿は、長い時間歩いていたにもかかわらず、風に足を掬われるかのような、疲れを知らない、軽い足取りをしていた。これから向かう場所へ、期待に胸を弾ませながら、青年はこれから起きる《出来事》に対する想像をたくましくしていた。
 青年はささやかな物書きであった。
 数々の

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