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掌編小説、随筆

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掌編小説と随筆をまとめています。
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#物書き

雁愁先生

雁愁先生

 世間が曰う所の、暗い死に方でもした霊に憑依されたかのように、日頃より死にたい死にたいと仰っていた先生は、今日も昼に眠り夜に動いておられた。ごく稀に、昼間に動かれることもあるが、その時もやはり死にたい死にたいと仰って、布団の上で天井をじっと見つめておられた。

 その先生は、名を雁愁と言った。
 物書きの人であったのだが、最近は書く回数がめっきり少なくなっていた。先生曰く「書きたいものが無くなった

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物書きの原稿用紙

 現代の物書きが原稿用紙を使って小説などを書くことは極めて少なくなったと思う。プロットまでは紙に書くが、下書きまたは初稿からはスマホやパソコンを使うという人がほとんどであろう。自身も詩を書く時にはスマホで直感的に書いている。スマホの便利な所といえば、すぐ書ける、書くのに難しい漢字をすぐ表記出来る、間違えたらすぐ消せる等々、便利ずくめである。現代よ、なんて素晴らしいんだ! と思いつつも、高級な原稿用

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