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ダヴパッチになろうと思った話

私は2010年から美容の勉強を本格的に始めました。
大好きな映画の仕事をしながらも、同じくらい好きな美容も諦めきれず。
海外の映像を配給する会社で働きながら、土日を使ってエステティシャンのテクニックや、アロマテラピー、フラワーレメディなどあちこち通ってみたりしていました。

きっかけは、26歳で卵巣嚢腫での入院&手術。
婦人科と産科で病棟が別だったため、同じ病室にはさまざまな婦人科系を患った女性がいました。
病室での話題は、「○○さんのご主人、頭洗いに来てくれたんですって。やさしいわね〜」「○○さんのお母さんが持ってきてくれるお見舞いってオシャレね〜」と病気やプライベートには触れないものの、少しだけ元気になるような、そして少しだけお互いを励ますような話。

30年近く前は、なんとなくではありますが婦人科系を患うと「はい、女性として終わりです」というレッテルを貼られるような気がする時代でした。
(これは私の偏見かもしれません)
ですが、アロマルームがあり、そんな不安を香りで癒してくれる取り組みをしている当時にしては珍しい病院でした。

お互いを思いやり、大袈裟ではない励ます言葉や、優しい香り…。
26歳で卵巣嚢腫なんて珍しい病気になってしまった私は、「ああ、ちょっとしたことで少しだけ自信を取り戻せるものなのだな」と思ったのでした。エステティシャンになろうとしたのは、そんな「少しの自信」を取り戻す手伝いができると思ったからです。

時は流れて、美容学校に本格的に入学し、メソッドや皮膚生理学、作法、心理学、官能学など学ぶうちにふと見つけたCM。
それがダヴパッチでした。

みなさんご存知のボディソープのDove(ダヴ)。
こちらアメリカのCMなのですが、「このビューティーパッチを貼って過ごしてください。キレイになりますよ。」と言って、毎日の感想を録画してもらい、最後にどんな変化があったか聞いています。
途中、「特に変化がない」「こんなので本当にキレイになれるの?」など不満を漏らす女性たち。
でも最後には、「ニキビが治った」「肌がキレイになったと思う」など充実感を語ります。
「パッチの美容成分を知りたいですか?」と聞かれ「もちろん」と答えますが、成分表を見ると「Nothing」と書かれています。
つまり、何も入っていないただのパッチ。
全員が「キレイになりますよ」という言葉の魔法にかかって、自分でどんどん自信をつけてキレイになっていくのです。

最初にこのCMを見た時に、私は泣いてしまいました。
その時は、なかなか思うようにメソッドを覚えられず(私が習得しようとしていた手技は最初から最後までで2時間半あるものだったので)、失敗ばかりして、落ち込んでいました。
でも「このCMのダヴパッチのようになりたかったんだ!」と初心を思い出しました。
施術を受けた人が、少しだけ自信を取り戻して明日も頑張ろうと思ってくれるようなエステティシャンになろうと思っていたんだと。
このCMを見た後には、私も頑張れました。

美容の世界に飛び込んで13年経ちました。
エステティシャンから、メイクの勉強もして、美容ライターになって、形は変われど大好きな世界に携われています。
2020年から乳がんの治療をして、外見が変わるということはこんなにストレスを受けるんだということもわかり、これからはアピアランスケアの世界へ。
また誰かのダヴパッチになれますように。



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