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海外ツアー通信 その3 それはmakitaの差

今回上演をしたのは、フランスのエヴルーという街とポーランドのラドムという街。どちらも郊外にある、公共の劇場でした。ヨーロッパの中心に君臨してきた(と言ってよいと思われる)フランスと、東欧のポーランド。言語の違いも文化の違いも当然あるのですが、旅する劇団として現場で味わった違い…、それは端的に言って、インパクトドライバーの違い、でした。

今回、舞台装置は日本から送ったのですが、総重量550kgほどの装置は、いずれも100kgほどの木材でいかつく梱包されて二個口に。この梱包を荷解きするときも、また元に戻して次の輸送に備えるときも、必要となるのがインパクトドライバーです。要はビスで留めてあるので、これを電動工具で外したり留めたりするのですね。

ちなみにインパクトドライバーというのは…

インパクトドライバーの特徴は、ほかの電動ドライバーと異なりハンマーが内蔵されている点です。ビットが回転する際に同方向へ衝撃(インパクト)が加わるので、より強い力でネジを締め上げられます。種類にもよりますが長めのネジや、硬く厚みのある素材に対しても作業ができます。

https://magazine.cainz.com/article/16534 より

とのことです。ちなみに、インパクトドライバーを英語で言っても伝わらなかったのにメーカー名の「makita」で通じたこともありました。ヨーロッパのみならず、エジプト・カイロでも使われていた記憶があります。

フランスでは劇場にそのインパクトドライバーがなく(電動のドライバーはあるのですがインパクトでない)、分厚い木材からビスを抜く際に男性二人分の荷重をかけてどうにかこうにか作業をせざるを得ませんでした。ポーランドでは舞台監督の齋藤さんがやや興奮気味に報告して曰く「マキタの*****(型番かと思われます)が出て来た!」とのことで、工具の馬力そのもので難なく作業が進行したのでした。(makitaはインパクトドライバーのハイブランドなのです)それどころか、搬出入口から舞台袖まで数百キロの荷物を吊り上げて直接運ぶ機能が劇場に備わっており、荷物そのものの移動も大変スムーズ! 一同、この様子を歓声をあげながらスマホで激写していたのでした。

ラドムで公演したTeatr Powszechnyは35名の劇団員(俳優のみの数)を擁し、年間6本の新作を発表しているレパートリー型の劇場。仕込みとバラシを日常的に行っている、クリエイションをする劇場です。舞台のすぐ裏にはバックヤードがあり(制作のJolantaさんは「場所が足りなくて…」とぼやいていましたが)、廊下には団員の楽屋がずらりと並び、食堂があるという、ロシアで地点メンバーが親しんだ劇場のかたちそのものでした。

ロシアの劇場のことを思い出して、しんみりしつつ、やはりレパートリーを持つということは劇場の地力を高めるのではないか、と思いました。もちろん「なんでも俺に言ってくれ!」と笑顔で対応してくれたフランスの劇場のスタッフたちにもとてもお世話になりました。段取りなし。打ち合わせなし。だからこそ、目の前の課題に集中できるんだなあ、というフランス流の働き方にも目から鱗でした。日本だと、打ち合わせで決めたこと以上のことをするのがとても難しい。「ええ〜、だってこうするって決めたじゃないですか!?」と不満が噴出する。それがフランスではないんだなあ、と。ただし時計を見て焦ってくれるということもありません。お昼休憩は2時間!

世界の劇場ではたらく人としばしの間、協力しあい、その仕事ぶりを観察できるのも、海外公演の楽しみの一つです。きっと私たちもじろじろ観察されていたことでしょう。

2022.10.10 tajima

おまけ↓

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