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他者は自分を映す鏡

ハロー5月!瑞々しい緑が鮮やかで眩しい、こんな季節も大好きです。

5月といえば、ゴールデンウィーク。
様々な制限のある中での大型連休でしたがいかがお過ごしでしたか?
愛知県豊橋市の穂の国とよはし芸術劇場PLATという劇場で働く私こと石田晶子は、とあるイベントのために走り回っておりました。

とよはしアートフェスティバル2021「大道芸inとよはし」

今年で開催10年目となるこのイベント。
例年だと、豊橋駅前を中心とする複数の会場で大道芸のパフォーマンスを行う、とびきり賑やかな大道芸フェスティバルなのですが、昨年に引き続き感染症対策のために会場を劇場に限定し、規模を縮小しての開催となりました。

今年は13組の大道芸人が登場し、アクロバットあり、パントマイムあり、音楽や雅楽、舞踏、などなど、様々なパフォーマンスが披露されました。
YouTube Liveでの配信はのべ7500名以上の方にご覧いただいた模様です。

観客の皆さんの楽しそうな笑顔に心が安らぐ一方で、圧巻のパフォーマンスを披露する大道芸人の方々の、切実さすら感じる生き生きとした姿が印象的でした。
表現活動の場が失われつつある今、こうやって観客に対峙することでパフォーマーは自分の本来の姿を取り戻しているのかもしれないな、と思ったりしたのでした。

でもそれはきっと、表現者に限った話ではなく。おそらく誰もが、他者との交流を通してアイデンティティを確立したり、自分の姿を取り戻す作業をしているのだよな、と最近、よく考えたりしています。

パフォーマーが、観客によってパフォーマーとしての姿を取り戻すように。
観客やカンパニーを迎え入れることで、劇場がその機能を取り戻すように。

他者がいるからこそ自分という存在が成立するということは、人間関係、社会生活全般においても言えることであって、当たり前なことのように思えてしまうけど、人との交流って本当に稀有でありがたいことだなと思う今日この頃なのです。

劇場は、色んな人が集う場所。

PLATには「交流スクエア」と呼ばれる、机と椅子の並んだフリースペースがあるのですが、ここには舞台関係者や観客以外にも様々な人々が訪れます。
貸施設として劇場を利用する市民や、勉強する高校生、お茶をしながらお喋りしに来るご近所さんなど、誰もが自由にいることのできる、のどかな場所です。


そんな劇場という場所で働いていると、ふと人の人生を垣間見るような瞬間がありまして、これが結構面白かったりするのです。

死ぬまでに一度はバレエが見たいと言うおばあちゃま。
初めてのクラシックコンサートに緊張しコーディネートに戸惑う青年。
観劇デートのプランを立てるカップル。
大好きな舞台をお子さんと一緒に楽しみたいご両親。
怪我でプロの道を諦めたけど今でもピアノが好きなおばさま。

十人十色なお客様の話を聞きながら、私は色んなことを妄想します。
この人に引き合わせたいプログラムは何か。
どの座席でご案内しようか。
必要なケアはあるか。近くのお店の情報。かけてあげると良い言葉は何か。

人それぞれの一番ベストな観劇プランを一緒に想像しながら提案していくやり取りは、親友になったような気すらして、とてもワクワクします。

そうやって自分の思いを打ち明けて、納得した顔で帰っていくお客様の後ろ姿を見ながら、きっとこれも自分の望みを紐解いて自分のありたい姿を描き出す作業の一つなんだろうなと思いを馳せたりして。私はそのお手伝いというか、鏡のような役割をしているのだなと思ったりして。

人に衝撃を与えられるようなアーティストになれなくても、その瞬間を引き合わせ生み出すことができるのは、劇場制作のやりがいの一つだなと思っています。
自分自身、舞台芸術によって人生が変わるような観劇体験をしたことを今でも大切に覚えているので、他の人にもぜひそんな瞬間を味わってみて欲しい。

もしこの舞台との出会いが、目の前の人の人生を変える可能性があるかもしれないなら、「来てくれてありがとう」という気持ちを添えて、全力で良い日にしてあげたい。そんな思いをほんのりと胸に抱えて日々生きています。

オンラインでも色々と楽しめる昨今ではありますが、ぜひ、劇場へ足を運んでみてください。そこにはきっと、思わぬ出会いがあるはずです。
いつでもお待ちしています。

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2021年5月、大道芸の後片付けで館内装飾のガーランドを取り外すヘロヘロの私。



石田晶子の記事はこちらから。
https://note.com/beyond_it_all/m/mcb850169d9e7


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