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知覚-運動カップリング

しばらくエコロジカルアプローチと制約主導プローチが続きます。今回は長いです。

従来の運動制御モデルにおいて、認知行動心理学では『認知→判断→実行』とされてきました。感覚情報に基づいて、運動が決定され、体が実行する。このモデルの特徴は単方向であるということです。この流れ自体が間違っているといわけではなく、『それぞれが一連の流れの中で項目ごとに分離、独立している』ということが従来モデルなのです。

認知は認知として独立、判断は判断として、実行は実行として切り取られて練習やトレーニングメニューが作られて来ました。実行が一番わかりやすいでしょう。ラクロスではDFがいないシュート練習やダッジ練習パスキャ練習、ラインドリル系のものです。不要だと言っているわけではありません。繰り返しない繰り返し練習(修正力強化)としては十分に意味があるとおもいます。認知や判断で言えばビデオやボードを使った学習のみで終わってしまうことがあります。これらをバラバラに行い、後に組み合わせるやり方は果たして有効なのでしょうか?

また、トレーニングにおいても同様のことが言えます。あくまで例えばですが、視野トレーニングや動体視力トレーニングをやったら試合中のチームメイトの動きの知覚が向上するのか?動態視力トレーニングをひたすらやったら160kmの速球の選球眼がつくのか?サイドステップやストップ&ゴーを繰り返したらDFで抜かれない動きが身につくのか?身体操作トレーニングを行ったら技術がSkillが向上するのか?といったことです。

もちろん、伸びる選手もいるでしょうが制約主導アプローチでは否定的な立場を取っています。知覚と運動は双方向であり、近くがあるから次の判断が生まれ、それに基づいて実行される。つまり、試合では常にDFがいるわけで、その知覚情報のあわせて、判断が決定され、運動が実行される。その中での運動制御こそがスキルにつながる。

ここでコーチの立場の人が注意すべき点が1つあります。
これは実際の研究でもあるようなのですが、

PKを蹴るシーンのビデオを見せて、GKに、どのコースにキックが飛んでくるのかをを予測する時と、、実際にキッカーとして対峙してPKを蹴る時ではGKの予測では『見ているところが大きく違う』のだそうです。
つまり、例え元プレイヤーであってもコーチの視点で見ている認知判断実行と、フィールドの選手の認知判断実行は違うということです。

コーチはその事実を理解したうえで選手を観察し、コーチングしなければならないのです。あーしろ、こーしろとか、こっちのほうが良いとかいうべきではないのです。コーチ側が質問確認しなければいけないのは認知の部分で必要な情報を拾えていたかどうかだけです。


動作は知覚に依存しています。知覚と動作を分解したトレーニングでは、学習したスキルが試合で生かされる可能性が低い。試合で行われる運動を試合に近い状況や環境でトレーニングすることが望ましい。
試合で見たり、感じたり、行ったりするこが練習環境に依存するかを『代表性』といいます。この代表性の高い練習環境で獲得したスキルは試合で使われることが高いとされています。

これは個人的なスキルでもチームプレイでも同様です。『あるプレイを知覚したらあるプレイが引き出される』。エコロジカルアプローチの機能的なスキルの習得です。

例えば、

1-1で相手も右にズレていることを知覚したら左に動くとか。
相手のDFがこういう配置のときは、、、、こうなって、、こうするとこうなるから。。。とか、。AさんがあそこいるとB さんがあそこにいると、、、 こう動くから、私はこっちに動くとこうなる。みたいなことが生まれる。

試合をたくさんすれば伸びるのはこういうことです。常に試合なので最もだ代表性が高いからです。しかし、1人当たりのボールに働きかける回数が限られること。特定の環境下におけるスキルアウトプット回数が少ない。だからこそ、制約をかけ環境を設定すること、その特定環境下でのスキルの表出回数を増やし自己組織化を促す。これをタスクの単純化といいます

言語化か環境か。。。。

ここまで話してくると環境が大事であり、認知が大事なことはよくわかるでしょう。では、言語化はどうなのか。。言語化は近年非常に重要視されていることです。言語化して説明することはある意味では『口頭指示、口頭説明』となります。これはエコロジカルアプローチとは少しずつズレています。言語化自体を否定しているわけではありません。自分自身が何をどう認知したのか、なにから判断したのか、結果身体がどう動いたのかを『再知覚する』とう点において非常に有効です。しかし、以下の点には注意が必要です。

1.運動の内容を規定する。
本当に気がついてほしいことは、制約を設けて気づいてもらう。

2.すべてを言語化できる必要はない。
話そうとすることで『自身の気づき』になればそれで良い。例えば、説明しようとしているとわからないところが明確になることもある。「説明できないけど感覚的にある」とうことに気がつく。何をするべきなのかわかった。という感覚がわかれば、それで良いのです。
一番大事なのか。どこに実行するのに必要な重要な情報があるのか?を知っていることです。ラクロスの場合は4つあると私は考えています。
 1. 味方の位置
 2.敵の位置
 3.ボールの位置
 4.1-3と自分との位置関係
 5.誰がボールを持っているのか

すべてのプレイはこれによって決まる。

このあたりがチーム内の会話でたくさん出てくる、私は良い感じの練習環境でできたなと思うところです。

環境がプレイを作るならサインプレイは必要なのか。。。。


これもよくプレイですね。バスケでは特に多いのではないでしょうか。ラクロスでも多くのチームがサインプレイを使っています。事前に計画された動きを正確に実行する。この場合、環境からの影響を切り離したプレイとなります。サインプレイで動くためある程度、DFや味方の動きは予測できる。しかし、試合中はそんな簡単にことが運びません。実行さえさせてもらえないケースも出て来るでしょう。パターンでしか動けない場合イレギュラーに対応しきれなくる。つまり、修正する力が養われないことが起こる場合がある。自己組織化ができないチームになるかもしれない。つまりスキルのない選手の集まりとなる可能性がある。

もちろん、サインプレイにも良いことはある。思考をシンプルに素早くすることができる。共通認識なので意思疎通に誤りが生じにくい。相手DFの動きが予測しやすいなど、いろいろあるでしぃう。

しかし、大事なことは事前に計画された動きを忠実にできる選手がスキルが高い選手ではない。事前に計画された動きだったとしてもプレイしながら、適応的に実行できる選手がスキルの高い選手だと私は思うのです。

今日はここまで。。まだまだ先は長いので今後ともお付き合い下さい。

読んでいただきありがとうございます。現在でもコーチとして勤めていますが、新しい環境を常に探しております。興味を持っていただけたら気軽にお声がけください。


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