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現代川柳

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川柳
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#短詩

川柳10句『ダークモード』

玉砂利の味を知らなきゃ勝てないよ

舐めるためにおはじきを買う大人たち

欠員が出たため飯が食えている

血の色がわからないので噛んだ指

軍神をコインロッカーに分祀する

コインランドリーで恋が始まり困ります

風色の鍵を失くして老いてゆく

ちちははが琥珀になる時代の昏れ

脳漿のみずうみに浮く鬼子母神

無色テロ ダークモードで喪に服せ

川柳10句『臍に住む』

ジミヘンが送電線を弾く夜空
魚民でボリシェヴィキらを送別す
あーやっちまったナ茲ニ宣戦ス
どうしたの批評ワナビを轢き摺って
みずうみを喰えば夜霧は苦い腸
「ズー・ニー・ヴーのヴーじゃないかな」
やってみる「テクノブレイク」価値はある
祝電に『イズ・ディス・イット』の風が鳴る意思のない下手人である不凍液
国頭と島尻があり臍に住む

川柳10句『バラエティ』

ハンモックナンバー100の軍神ぞ

ぼったくりバルで海軍反省会

目覚めるとメーヴェ、ネコバスの渋滞

せがまれてミニバンほどの蝶を焼く

海たりうる魚人官僚の涙も

『のり面』の文字も怖くて目を伏せる

純正の黙示録で楽しもう

ヤリ部屋でときたま独楽にも愛され

まみれてもまみれてもなお一敗地

オフレコで知る半神の数え方

川柳10句『征火論』

リベラル派宦官の説く征火論

野比違う、立ってどうする佇っとれい

涼しさだ男やもめのハーブティー

消しカスは四元素よりも上でしょう

遺言が座標で表せない志士

檳榔の赤い唾までマルキスト

潮を読む死地に赴くゆるキャラと

脳裏でもなお売れ残る三日月湖

宿便と宿命はもう同じだろ

蹶起せずタジン鍋などつついてる

川柳10句 『海を綴づ蝶』

川柳10句 『海を綴づ蝶』

海を綴づ蝶の軌跡で縊れ死に

朝焼けが掃く国道をちぎる死児

まろびでる腸を抑えて三歩征く

喋らせろ首の断面冷めるまで

名月を指差してから指がない

頑なに「月は虚偽だ」と説く男

曾祖母は水銀灯の生き残り

世紀極駐車場など貸すエルフ

裁判長 説諭じゃなくてキスをして

そののちに瀑布が残るミニコント

川柳10句『沖縄風味噌汁』

叱ってよ椎名林檎のメガホンで

気をつけよう出会い頭のクーデター

一瞥を軽蔑でかえされる日々

沖縄風味噌汁を吸い出家する

ガルーダのささみを揚げて謝恩会

この馬も洗ってくれよ冱ゆるまで

にょぴょと征きしょぼーんとして還る軍

陥穽の『宀』まで持ちこたえ

徳のないウィンクをキメる僧ばかり

半グレは婚姻色の眼をしてた

川柳10句『ハルジオン・ダイジェスト』

フリッカージャブじゃなくても良い祈禱

手が挙がり空は国旗の生地となる

慰霊碑に誰のせいでもある歴史

ファミチキののぼりで埋まる礫砂漠

日時計に溜まる時間の滓が美味

アメリカの菓子もたまにはやるじゃない

夜っぴとい業も廻すハムスター

天と地とPayPayだけが知る汚職

バッティングコーチを地祇にする季節

ハルジオン愛せよ義務はないのだし