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現代川柳

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川柳
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2024年3月の記事一覧

川柳10句『Do Not Disturb』

待ってろよ黄ばんだバスで清算だ

黒鍵を引き抜く順に死んでゆけ

スコールや棕櫚の午睡を邪魔するな

根源の朝に眩んで落ちる始祖鳥

涸れ谷に黙秘を埋めて破裂音

砲声と親友になれそうもない

はちがつにすべて了えばかたるしす

焦るなよやがてゆくゆく大雷雨

所在なくエピキュリアンの骨を噛む

おじさんは不能パンダの成れの果て

川柳10句『Getting high』

クラベスの片方が飛んできて鬱

歯が抜けた君の不全のうつくしさ

十字路の雨粒も黄や赤になり

瞬間は瞬間でしかなく、断種

カセットを巻き戻しても春が来る

礼服を裂いて僕らで愉しもう

右岸から左岸まで衛星の跡

宙鳴りの塔を拝せず誅される

起き抜けの頭蓋で燃やす閨閥図

一族の位牌の灰でhighになる

川柳10句『ビンゴブック』

私心なき聖者の指で終わらせる

すべすべの晩夏はやがて亜金属

村民が区民になった出世譚

すまないね頭の中がずぶ濡れで

エクセルでビンゴブックを管理する

時すでに遅し蟹の字が書けない

かび臭い布団めくれば至上の愛

病棟と犬のうんこと青空と

夜、橋、鉄 重力ばかりみなぎって

棄ててやる名前をつける権力を

川柳10句『ロストボール』

ええんやで青信号にツバメの巣

僥倖をムダ遣いしてする二度寝

藻まみれのロストボールに似てますね

残響を切り売り暮らす腑抜けども

ゴムホース 夏の残滓さ何もかも

落ちぶれたコンカフェ嬢が興す国

野ざらしの脚立の影も伸びている

暮れ方のピエロになって出直しな

気にすんな元を辿れば射精だろ

櫓から落ちないようなキメセクで

川柳10句『薔薇の囲繞地』

爽やかな朝だ二、三の敵もいて

庇えるか不破哲三で抜く奴を

読みさしの死蝶の翅に火の挿し絵

不可算の目玉を宇宙まで投げる

キビ刈りの鎌でリスカをしても家父

海までの距離があの子の余生なの

慄然として舐め回すマンホール

天の配剤飲めば早世

敗訴した薔薇が囲繞地から逐われ

置き配の冷たいギフトに触れて泣く

川柳10句『終生』

身に覚えがない脱皮をしたらしく

終生の劇しい雨に名付けなど

脳髄にとぅるりと這入る水枕

寝盗られて辛ラーメンがのびている

自販機と一基の墓が支え合い

味気ない夭折をせよ毛虫ども

血迷うな腋の臭さに立ち還れ

実直なあなたの尻をしばきたい

しらじらと嘘の夜明けが冴えてゆく

契ろうかヤルタ・マルタのあばら家で

川柳10句『バラエティ』

ハンモックナンバー100の軍神ぞ

ぼったくりバルで海軍反省会

目覚めるとメーヴェ、ネコバスの渋滞

せがまれてミニバンほどの蝶を焼く

海たりうる魚人官僚の涙も

『のり面』の文字も怖くて目を伏せる

純正の黙示録で楽しもう

ヤリ部屋でときたま独楽にも愛され

まみれてもまみれてもなお一敗地

オフレコで知る半神の数え方

川柳10句『征火論』

リベラル派宦官の説く征火論

野比違う、立ってどうする佇っとれい

涼しさだ男やもめのハーブティー

消しカスは四元素よりも上でしょう

遺言が座標で表せない志士

檳榔の赤い唾までマルキスト

潮を読む死地に赴くゆるキャラと

脳裏でもなお売れ残る三日月湖

宿便と宿命はもう同じだろ

蹶起せずタジン鍋などつついてる

川柳10句『Lithium』

川柳10句『Lithium』

百バレル燃やして往けど恋は恋

実りなき恋のパレード 埠頭まで

自画像の眼にリチウムの火を点けて

生と死の受取拒否を海に告げ

口内炎いわれなき罪の報いが

打つ手なくガパオライスを塗る軍医

国境をさすって笑う父の喉

濡れそぼつ龕の洞へとつづく路

かたつむり螺旋首都から滑り落ち

瞬間の王が死んでも詩はつづく

川柳10句 『海を綴づ蝶』

川柳10句 『海を綴づ蝶』

海を綴づ蝶の軌跡で縊れ死に

朝焼けが掃く国道をちぎる死児

まろびでる腸を抑えて三歩征く

喋らせろ首の断面冷めるまで

名月を指差してから指がない

頑なに「月は虚偽だ」と説く男

曾祖母は水銀灯の生き残り

世紀極駐車場など貸すエルフ

裁判長 説諭じゃなくてキスをして

そののちに瀑布が残るミニコント