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100年前の上海が舞台、「上海」を読む。(初日・45章の内10章まで)

横光利一の「上海」を、読み始めました。

1928年〜1931年(昭和3年〜6年)にかけて書かれ、単行本として上梓されたのが1932年だそう。


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あらすじ。

1925年、中国・上海で起きた反日民族運動を背景に、そこに住み、浮遊し彷徨する1人の日本人の苦悩を描く。死を想う日々、ダンスホールの踊子や湯女との接触。中国共産党の女性闘士芳秋蘭との劇的な邂逅と別れ。視覚・心理両面から作中人物を追う斬新な文体により不穏な戦争前夜の国際都市上海の深い息づかいを伝える。昭和初期新感覚派文学を代表する、先駆的都会小説。

講談社の紹介文より


約百年前の上海が舞台。

以前、読んだはずなのに、読み返したらすっかり内容を忘れています。

昨日、今日で、45章のうち、10章まで読み進めました。

一息で読むのは5章ぐらい、濃密でそのぐらいが限界かも。・・試みで、感想を4回ぐらいに分けて書こうかなと思います。

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まず、何といっても描写が独特ですね。

冒頭。

 満潮になると河は膨れて逆流した。火を消して蝟集いしゅうしているモーターボートの首の波。かじの並列。ほうり出された揚げ荷の山。鎖で縛られた桟橋の黒い足。

7p
(「蝟集」は、ハリネズミの毛のように、一時に1か所に、多くのものが寄り集まること。)


上海の街角。

 金色の寝台の金具、家鴨かものぶつぶつした肌、切られた真赤な水慈姑くわい、青々と連った砂糖黍さとうきびの光沢、女のくつや両替屋の鉄窓。玉菜たまな、マンゴ、蝋燭ろうそく、乞食、ーーそれらのひっ詰まった街角で、

34p



他にも、例えば湯女ゆなのお杉が、客である参木さんきの下宿の外、裏道のどぶ沿いの欄干にもたれて待つシーンの描写。

 彼女の傍には、豚の骨や、吐き出された砂糖黍の噛み粕の中から、瓦斯灯が傾いて立っていた。(中略)彼女の見ている泥溝どぶの上では、その間にも、泡の吹き出す黒いごみが、徐々に寄り合いながら、一つの島を築いていた。その島の真中には、ひなの黄色い死骸が、猫の膨れた死骸と一緒に首を寄せ、腹を見せた便器や、靴や菜っ葉が、じっとりと積ったまま動かなかった。

40p


ひとつひとつ、物体が描写されていく、それを目で追っていくのが、しんどくもあり、楽しくもある。

最初の一夜で5章が使われ、紹介文にあるような、「戦争前夜の不穏な国際都市・上海」の空気感に包まれます。

日本人、支那人、ロシア人、インド人、アメリカ人、ドイツ人、イギリス人などさまざまな人種が行き来し、彼らの動きも何だか本能まみれで不穏。

秩序や整然とかけ離れた街の雰囲気が不穏。

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あと、湯女が働くトルコ風呂は、いわゆる風俗なのか、ただのお風呂兼マッサージ屋さんなのか?

そこで働くお杉が純情で、参木の友人の甲谷こうやに貞操を奪われ動揺しているので、やはりマッサージ屋さんなのかな。

その辺は、調べれば分かりそうですが、とりあえず読み進めることにして・・。

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最近読んだ邱永漢の「香港」より、好きかもという予感があります。

あと、以前本当に読んだのか疑わしいぐらい、初めて読んでいる感じです。


〈おまけ〉上海のトンカツ

日本のより薄めのお肉です。


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