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新旧「プロ野球審判本」読み比べ。そしてロボット置き換え問題を考えた。〜摘読日記_18

最新の審判員本と、昔の審判員本

この2冊を並行読み中です。
どちらも、元・プロ野球審判員の方の著書です。

佐々木 昌信「プロ野球 元審判は知っている」2022年発行
島 秀之助「プロ野球審判の眼」1986年発行


左は新しい本で、2020年シーズンで審判員を引退した佐々木昌信さんの著書。佐々木さんは、審判生活29年、出場試合は2414試合。

右は古い本となります。島秀之助さんは、戦前のプロ野球黎明期からプロ野球審判員として活躍され、数々の歴史的な試合のジャッジを担当。
かの有名すぎる、1959年(昭和34年)の天覧試合・読売ジャイアンツvs大阪タイガース戦の球審も務められています。通算出場試合数は2605試合。

球審が島さん。


本の内容

佐々木さんの本は、トリビア的に面白い話が豊富。
プロのプレーを間近でジャッジしてきた視点から、元西武の羽生田外野手の強肩こそ歴代外野手No.1であるとか、次元の違う地肩を誇ったのは現在オリックス監督である中嶋聡元捕手、審判の四十肩を気遣いボールを受け取りに来てくれる大谷翔平選手の聖人君子ぶりなど、へーぇ、というエピソードが盛り沢山です。

島さん本は、天覧試合の後に菊の紋章の入った恩賜の煙草をもらったことなど、トリビア的にも面白い話が多いのですが、さすがに日本プロ野球審判員の礎を築いた方なので、プロ野球の発展を審判員がどのように支えていたか、また、判定の技量をどのように向上させていったのかなど、貴重なエピソードが豊富です。
後進の審判員への、「プロ審判員たるものかくあるべし。」というメッセージも多く含まれています。
一例を挙げると、試合前日に深酒をすると目がかすむ恐れがあるし、また、麻雀などは眼も疲れるほか、座りっぱなしで体中の筋肉が硬くなる悪影響があるので、感心できない、と書いています。

どちらの本も面白いです。

審判とロボット問題

ところで、昨今、プロ野球に限らずよく話題になっている、いろんな仕事がロボット・AIに置き換えられるのでは?という問題。

こんなニュースもありましたね。
「メジャーの3Aでロボット審判導入へ。」

ストライクゾーンは球審だけの"聖域"だったが、映像化が進んだ現代では1球1球の判定がテレビ映像から一目で分かるようになっており、「誤審」として審判が糾弾されることが増えてきていた。その中で2019年7月から、MLB機構は事業提携を行なっている独立リーグのアトランティック・リーグでロボット審判の運用を開始。

だそうです。


上記2冊のうち、佐々木さんの本では、日本でもすでに導入されている「リクエスト制度」について触れています。
ロボット審判ほど先進的なものではないですが、ビデオを使って判定を行う制度ですね。
この制度について、佐々木さんは「審判にとってリクエストを要求されるのは恥だ。」と書いています。

それはそうだと思います。

長い間、自分の判断に委ねられていたプレーの成否について、リクエストを求められるのは、「お前の判断はいいから、ビデオによる正確な判定をしてくれ。」ということなのですから。
(とはいえ、日本の審判員としては、リクエスト制度を受け入れざるを得ない状況という共通認識は持っている、とも書かれていました。)


将来的にはどうなるだろう?

時代の流れ的には、「ロボットやAIなど技術を使えば正確に判定できるのであれば活用し、人間の判断は排除していく。」という方向にいくとは思います。

しかし、どこか味気ない気はしますし、審判の人が誇りにかけて判定していたものが、最後の最後はどうせロボットが決めるのだから、という気持ちが生まれてしまったら、緊張感は途切れてしまい、向上心も失ってしまうような気もします。

個人的には、審判は誇りをかけて判定する、選手・監督は、審判をリスペクトし判定に従う。
ただし、人間がやっていることなので、納得できない場面もあることは当然ある。
そこに、人間同士のぶつかりが生まれる、ドラマが生まれる、それが尊い気がするのですが、こういう考え方は古くなっていくのかもしれません。

島さんの著書、タイトルが「プロ野球審判の眼」です。
このタイトルに込められているのは、人生を賭けて数万、数十万ものジャッジを下してきた人間の誇りだと思うんですよね。


ロボット審判がいつの日か生まれたら、どんな気持ちだろう。。
それは果たして、進化なのか、退化なのかもしれない?なんて考えちゃいました。

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