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そして20年ぶり再受験の記述試験が始まった。

『はじめてください』
試験管のよく通る声がした。


落ち着いた試験管は
その数秒前に
試験会場が揺れていることを意に解さなかった。

地震だ。

受験生の携帯はひとつも鳴らなかった。

受験生のざわつきは
地震の規模が想定以上に小さく
試験管からの指示もなにひとつ追加されなかったので
開始の合図とともに
小鳥が針で刺されたようにピタリと止まった。


私は問題用紙と解答用紙を表にして
それぞれに受験番号と名前を記入した。

まず
設問に目を通した。

!!!

今年は要約問題が出題されていない!

過去問閲覧にきて
要約問題対策をすれば良いと踏んでいたのに
完全に外れますた。

辞書も忘れ予想問題も外れ、泣ける。

長文が三題。

それぞれに設問が一つか二つ。

自分の適当さに笑いそうになりながら
最初から解いてみる。

どの長文も読みやすかった。それが
半年の間、要約練習をしたおかげなのか、
たまたま自分と馴染みのありそうな文章のためなのか、
判断はしかねる。

ボールペンでサラサラ書いていく。
誤字はグチャグチャってして修正する。

修正テープを使って良いみたいだった。
もちろん私にはないけど。(わすれた)

勢いで書いてしまった文章が後半で
破綻しそうになるのを回避しながら
なんとか論理構造を保つように修正して整えていく。

見直しまで終わってしまった。

時計を見たら30分経っていた。

カリカリカリ。
周りはまだ終わっていない。

もう一度見直しておこう。

見直しても直しようがないんだけど。
ボールペンだから。

教室の人数を数え直したり
試験管の顔を眺めたりした。

この名門の大学で
多くの学生がこの教室で学んだのだろうか。

清々しい気持ちになる。
深呼吸をした。ゆっくりと何回か。
わたしはやるだけやったじゃないか。
いいぞ、バミュ。

試験時間終了直前
再度落ち着いて周りを見回した。
みんなすごい勢いで辞書をひいていた。

えー!
みんな何を調べてるの?
(゚Д゚≡゚Д゚)エッ⁈ ドコドコ?

そりゃ、私なんて辞書ないですよ?
でも調べるようなところありました?

動悸がして
気分が悪くなってきた。
吐きそう。

『やめてください』

『ペンを置いてください』

『そこの方!』

ギリギリまで書いていられるそこのあなたが羨ましい。

記述は終わった。

ある意味終わった。

どうすんねん。

手応えと周りの受験生の態度の乖離が
大きすぎて
よくわからなくなった。

ダメならダメ
という感じではないが
かといって楽観できるわけでも
当然ない。


午後、面接がある。

受験生の割り振りに従って再度集まることになる。
それまで
しばし休憩だ。

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