マガジンのカバー画像

語学書の著者のコラム

172
ベレ出版語学書の著者による、本を書くこと以外のお仕事の話、教えること、ことばにまつわること、言語について。
運営しているクリエイター

#語学

言葉が増えれば世界も広がる —私が多言語に携わることとなったのは

青木隆浩 第二回:スピーチコンテストへの挑戦 1.大会に向けての取り組みみなさん、こんにちは。今回はスピーチコンテストへの挑戦についてお話いたします。 中国語に夢中だった私は、中国語が学べる高校に進学しました。その高校では、1、2年生は週6時間、3年生は週9時間と、毎日中国語の授業があり、高校3年次に私は学習の集大成として、日中友好協会主催の全日本中国語スピーチコンテストに挑戦することにしました。 スピーチのテーマには、短期留学先の中国で出会ったおばあさんとの交流を選び

韓国語圏フィールドワークの世界

髙木丈也(慶應義塾大学 総合政策学部専任講師) 第2回 私の韓国語圏フィールドワーク①:アメリカ合衆国 こんにちは。前回は私が学生と行ったフィールドワークについてご紹介しました。今回からは、私が個人的に行っているフィールドワークをご紹介しましょう。 前回のコラムでもふれたとおり、私は社会言語学を専門としており、具体的には韓国語や韓国語圏の社会について研究しています。 例えば、フランス語圏というと、フランスに加え、アフリカの国々やスイス、ベルギー、ルクセンブルク…というよ

『著者に聞くStudy Routineを教えてください!』#1 富岡恵先生

Q1 : ウィークリースケジュールを教えてください。 週の前半は創作、後半は対話というふうに集中する仕事を分けています。フリーランスになって13年ほど仕事をする中で、いろんなスタイルを試してみた結果、今はこのリズムがとても心地良いです。体調を整えるのも大事なので、しっかりお休みをとっています。 Q2:最も勉強していた時期にどういう学習をしていましたか?また、それにどのくらい時間をかけていましたか? 最も勉強したのは、高校生の頃です。高1で大学の志望校を決めてから、毎日朝5時

体を鍛えることと語学学習の共通点について #1

恒石昌志 こんにちは、2023年1月の連載を担当させていただくこととなりました恒石昌志です。昨年11月にベレ出版より『[決定版]語源で増やす英単語』を出版させていただきました。 自己紹介私について簡単な自己紹介をさせていただきます。 高知県の小さな漁村に生まれ、英語とは全く縁もない環境で育ちました。英語どころか、第一言語もヘビーな土佐弁で日本語の標準語すら怪しい田舎の少年時代でした。ごく普通に、と言いたいところですが、中高一貫校だったので高校受験のプレッシャーもなく、大

台湾薬膳スープの世界 #2

小飛 第2回:「蒜頭雞湯」〜スタミナ満点!にんにく鶏スープ〜こんにちは!台湾人の小飛です。 突然ですが、最近こんな事に悩んでいませんか? ・体の冷えを感じる ・風邪が心配 ・疲れやすい 今回紹介する台湾薬膳スープはそんな方におすすめのスープですよ! 今回の薬膳スープ「蒜頭雞湯」 シリーズ第2回目の今回は「蒜頭雞湯(スァントウジータン)」のレシピを紹介します。 「蒜頭雞湯」なんて聞いたことがないよー!って人の方が多いと思うので、どんなスープか説明していきますね。 「蒜頭

台湾薬膳スープの世界 #1

小飛 第1回:「麻油雞」 ~ゴマ油香る、生姜たっぷり鶏スープ~こんにちは!台湾人の小飛です。 秋が深まり、ますます寒くなるこの時期には、あたたかい食べ物が恋しくなりませんか? 私の出身地・台湾では「冷えは万病の元」と信じられています。 そのため、冬が近づくと、体を温めるとされる食材を使った「薬膳スープ」をよく食べます。 そこで、今シリーズでは薬膳コーディネーターの私がオススメする、台湾でよく食べられている「薬膳スープ」を紹介していきます。 レシピも紹介するので、ぜひご自身

慣用句から学ぶ韓国語 #4

徐旻廷(ソ・ミンジョン) 「궁합이 맞다(クンハビ マッタ)」 =「相性がいい」 韓国では、結婚する前に相手の生年月日(四柱)で占いをする風習があります。これを「궁합(クンハップ)=宮合」といいます。「宮合」の辞書的意味とは、「結婚する男女の四柱を五行(五行説における万象を変化させる5つの元素。木・火・土・金・水)にしたがって相性の良し悪しを判断する占い」です。「궁합을 보다(クンハブル ポダ)= 男女の相性を占う」、「궁합이 좋다(クンハビ ジョタ)= 男女の相性が良い」

慣用句から学ぶ韓国語 #3

徐旻廷(ソ・ミンジョン) 「국물도 없다(クンムルド オプタ)」 =「スープもない」  最近、寒くなってきて、温かい「국물(クンムル)」(スープ)が恋しくなる季節になりましたね。皆さんは、このような季節に思い出す「クンムル」がありますか。ここで「クンムル(국물)」は、「汁ものやチゲなどの料理から具を除いた部分」を意味します。韓国では、このような「クンムル料理」に「~국(~クック)」、「~찌개(〜チゲ)」、「~탕」(〜タン)などを付けます。例えば、「미역국(ミヨックック):

慣用句から学ぶ韓国語 #2

徐旻廷(ソ・ミンジョン) 「콩밥을 먹다(コンパブル モクタ)」 =「豆ご飯を食べる」 上の会話文は、韓国のドラマや映画で相手を怖がらせたり、脅かしたりする場面でよく登場するセリフです。美味しくて栄養たっぷりの「豆ご飯」がどうしてこんな恐ろしい場面に登場するのでしょうか。  朝鮮半島では、かつて刑務所にいる受刑者に提供した食事が「豆ご飯」だったといいます。当時の豆は「大豆」を指します。白米の値段が高かった時代、大豆は栽培しやすかったため、値段も安くてよく食べられる穀物でし

格言で学ぶラテン語#4

今日の花を摘み取れ。 Carpe diem. カルペ・ディエム   ホラーティウス、『詩集』(Carm.1.11) 山下太郎  日本でもよく知られたラテン語で、「カルペ・ディエム」とカタカナ表記されたり、「一期一会」と訳されることもあります。元々は恋愛をモチーフとしたホラーティウスの詩に出てくる言葉です。短い詩なのでその内容を訳で紹介しましょう。  この詩を貫くのは「今を楽しめ」というモチーフで、「カルペ・ディエム」もその文脈で理解することができます。ラテン語の直訳は「

格言で学ぶラテン語#3

私は人間である。 Homo sum.  ホモー・スム   テレンティウス 『自虐者』 山下太郎  ローマの喜劇作家テレンティウスの作品に出てくる台詞です。お節介な隣人がとことん他人の世話を焼き、なぜそこまで首を突っ込むのか?という問われて、「ホモー・スム」(私は人間である)と答えます。「人間に関わることで自分に無関係なものは何一つない」(Hūmānī nīl ā mē aliēnum putō.)という言葉がこれに続きます。私は人間だから他人の悩みごとや苦しみを放っておけ

格言で学ぶラテン語#2

時は逃げる。 Hora fugit.   ホーラ・フギト 山下太郎  ありふれた言葉を二つ並べただけのことわざですが、時の過ぎ行く速さを強く印象づける言葉です。主語のhōraは英語のhour(時間)の語源ですが、類義語に tempus があり(フランス語のtempsの語源)、表題と同じ意味を表す格言として Tempus fugit.も知られます。  ローマの詩人ウェルギリウスの『農耕詩』に次の表現があります(3.284-285)。  詩の本題からそれた話題を熱心に語る

映画と語学 4

曽根田憲三(アメリカ映画研究者・シナリオ翻訳家) 映画から学べるものはことばだけではない 私たちが意思の疎通をはかるとき、ことばだけに頼っているわけではありませんね。 たしかに、嬉しいときや悲しいとき、戸惑っているときや怒っているときなど、その感情を伝えるためにことばを使ってはいますが、ことばより口調や音調、そして微妙に変化する顔の表情や視線、それに身振り、手振りなどのほうがより大きな役割を担っているはずです。 無表情、しかも変化も抑揚もない一本調子の声で「お気の毒に」と

映画と語学 3

曽根田憲三(アメリカ映画研究者・シナリオ翻訳家) 映画は魔法の学習教材か映画はエンターテイメントのみならず、語学学習にも極めて有効だと書きました。ではどんな作品を選び、どう使えばよいのでしょうか。 学生さんたちからのそうした質問に私はいつも「自分の好きな映画を選ぶこと」と答えています。 アカデミー賞受賞作品だからとか、有名な作品だから、あるいは誰かに勧められたからではなく、あなた自身が興味を持てる映画を選ぶべきなのです。好きな俳優が出演しているからでもいいし、ロマンスが