職人であることを評価しない

いままで10社以上のコールセンターを経験してきましたが、ほとんどのセンターに職人と評される人がいました。「この作業は○○さんじゃないとできない」と言われる人たちです。

「○○さんしかできない」はホメ言葉ではない

コールセンターは、多くのオペレーターが、同じルールで、案内や作業を反復的に行います。いかに効率的に、同じ問い合わせに対して、同じ対応をとれるかが、生産性をあげる大きな要因となります。

生産性が高まると、同じ業務量に対して、少人数で運営できるので、低コストで運営できるようになりますし、空いたリソースを他の作業に割り当てることができるので、コスト面で優位性があるだけでなく、品質向上にもつながります。

ちなみに「同じ問い合わせは2度とない」という、なんとなく格好いい言葉で新人の頃に指導をされたことがありますが、今となっては、なんとも浅い言葉だなと思います。これは解像度の話でしかなく、解像度をあげまくって一言一句同じというレベルの話をしているのであれば、当然そんな問い合わせは二度と無いのですが、解像度を下げて抽象的に問い合わせ内容をみれば、ほぼ同じような問い合わせばかりです。

話を戻しますが、いわゆるオペレーションの再現性が高くなるように、オペレーションを構築していくことが、センターの質を高めていくことにつながります。

再現性が高い=品質が高い

ここまでのロジックにもとづいて評価をすると、「○○さんしかできない」はまったく再現性がない状態なので高い評価にはなりません。いわゆる、これはホメ言葉ではないです。もしそう言われたことがあるのであれば、私にはバカにした言葉に聞こえてしまいます。

これはあくまでも、コールセンターのオペレーションが、基本的にはやり方を知っていれば誰でも再現ができるものである、という前提にたっています。世の中すべての「○○さんしかできない」を低く評価するわけではありません。例えば、プロスポーツ選手や技術職など、やり方を知っていても、誰も再現できるわけではない仕事においては「○○さんしかできない」はホメ言葉でしょう。

繰り返しますが、コールセンターの仕事は、やり方を知っていれば、基本的には誰でもできます。その人しかできないというのは、やり方を「言語化できない」「文書化できない」「伝達できない」ということ。つまり、これらの能力が不足していると言えます。

職人はインハウスに多い

テレマ会社とインハウスのコールセンターを比較すると、職人が存在する確率はインハウスのほうが高いように感じます。それは、テレマ会社は職人を悪とするビジネスモデルだからです。テレマ会社は、優秀なSVがオペレーションを言語化、文書化して、伝達することで生産性を高めて低コスト化をはかります。そして、ある程度できあがったら、別のセンターに異動して同じことを繰り返します。こうすることで、テレマ会社は利益率を高める事ができるのです。

インハウスのコールセンターは、コールセンターの仕事がそもそも職人のように扱われており、長期的に異動もなく担当してしまっていることがあります。テレマ会社の価値観とは真逆です。会社によっては、職人と化してノウハウを抱え込んでいるだけの社員に、仕事ができると認識させてしまうような高い評価をつけてしまっていたりします。

変化への弊害となる不幸

そのような職人にとって、今のやり方を続けることが、環境の変化から自分を守る方法になってしまいます。コールセンターに限らず、会社は事業フェーズの変化にあわせて、在り方を変化させ適応させることが必要です。

コールセンターの在り方も、サービス機能が追加されたり、顧客層や顧客数が変わるタイミングで、変化しなければなりません。その時になって、ノウハウを開示するように指示したり、マニュアルを作成するように指示しても、おそらくできません。心理的に手放したくないという思いが潜んでいたり、能力的にマニュアルを作成することが苦手だったりします。

それまでは職人として高く評価されていた人が、転換期に足かせとなり、むしろ評価が低くなってしまう、最終的には不本意な形で仕事を外れてもらう等、職場における不幸なケースを何度か見てきました。

そのようなことにならないためにも、職人を評価するのではなく、オペレーションを言語化、文書化し、伝達できる人を評価する価値観でマネジメントをしてほしいと思います。



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