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コールセンターのモニタリングについて

コールセンターでマネジメントをしています。コールセンターでは、オペレーターとお客様の通話をシステムを使って、モニタリングすることができます。リアルタイムでモニタリングをすることもあれば、録音された音声データを後から聞き起こしすることもあります。

コールセンターの本業はお客様と電話で応対することです。モニタリングをするということは、オペレーターがお客様と適切な対応ができているか、センターの品質を確認する行為と言えます。

今回はモニタリングについて、基本的なことを書きます。

モニタリングをする目的

モニタリングには、オペレーターのすぐ横でおこなうサイド・バイ・サイドモニタリングや、離れた席からおこなうモニタリング、後から録音データを聞き起こしするモニタリングなど、やり方自体がいくつか存在します。

また、モニタリングをする目的はいくつか考えられますが、大きく2つに分類すると分かりやすいと思います。それはオペレーターの「査定評価」と「それ以外」です。それ以外に該当する主な目的は、オペレーターの「スキルチェック」「トレーニング」などです。

なぜオペレーターの査定評価とそれ以外に分類するかというと、前者の査定評価の場合には、客観的で公平に数値化をする必要があるからです。対して後者は数値化するにしてもそれほど厳密に行う必要はありません。

モニタリング評価を実施するうえでの課題は、モニタリング実施者の評価スキルに偏りがあることです。これはどこのセンターでも悩みどころだと思います。

同じオペレーターの、同じ対応をモニタリングしても、モニタリングを行った担当者によって評価は異なります。これは、人が行う以上は多少のズレが生じることはやむを得ないです。ですが、オペレーターにしてみれば、自身の給料に反映する評価に、実施者によるアタリハズレがあるようでは納得感がありません。

そのため、モニタリング実施者はカリブレーション(耳合わせ)を行って、評価者間でのズレを最小化する場を設けます。サンプルで同じ音声を評価して、どの項目に、どういう理由で、何点をつけたのか、良かった点はどこで、改善点はどこだったのか、を擦り合わせします。

カリブレーションは、実施するスーパーバイザーにとって負荷が大きいです。モニタリングは1つの応対を聞くのに、そもそも数分かかります。2~3分で終えてしまうような対応は評価対象になりえないので、最低10分以上の対応だけを評価するなど、ルールを決めて実施していると思います。評価のためにモニタリングシートにコメントを書いたりする時間も含めると、1件あたり15~30分かかります。そうなると1時間で2~3件しか行うことができません。

ひとりのスーパーバイザーにつき、6~8名くらいのオペレーターを管理しているチームだとしたら、各オペレーターを応対を2件づつモニタリング評価するとして、単純計算で4~5時間はかかります。そこから、カリブレーションや、他スーパーバイザーと評価の擦り合わせを行うので、さらに時間はかかります。

このように、モニタリングというと負荷がかかるというイメージがあります。

モニタリングで何を評価するか

モニタリングというと、オペレーターの電話対応を聞いて「言葉遣いが正しくないからマイナス1点!」「早口だからマイナス2点!」のように、エラーチェックのイメージがあると思いますが、個人的には”そこはほどほどに”と思っています。

注視すべきは”センターが目指す対応方針とズレていないか”であって、ちょっとした言葉遣いなど二の次です。そのためには、センターとしての対応方針である「私たちらしい対応」がなければいけません。

モニタリングは、モニタリングシートという評価項目が記載されたシートにもとづいて行いますが、モニタリングシートを作成する時点で、センターとしての対応方針がなければ、そもそも何を評価するのかを選べません。

例えば、(流行り言葉ですが)「お客様に寄り添う」ということを掲げたセンターの場合に、お客様に寄り添う応対ができているかどうかが評価すべき対象であり、「言葉遣い」「話すスピード」「傾聴姿勢」「間の取り方」「保留動作」などを評価しても意味はありません。この場合、お客様に寄り添うとはどういうことかを言語化して、モニタリングシートに項目設定しなければなりません。

なお、お客様からかかってくる電話のほとんどが一般的な問い合わせであり、お客様に寄り添うシーンが登場する対応自体がそれほど無いものです。そのため、モニタリングシートに項目をつくっても「該当ナシ」の通話ばかりなので、評価対象の応対を探すことに労力がかかりがちです。オペレーターに対象の応対を自己申告させると、良かった対応だけ申告するという懸念もあるので、対象音声のピックアップのやり方はセンターによって異なると思います。

モニタリングTips集

Tips①:「言葉遣い」の評価について、私はあまり重視しません。経験則ですが、日本語としての正しさを気にされるお客様は限定的で、ほとんどのお客様はおかしな言葉を使っていなければ、一生懸命さが伝われば、良い印象を持ってくれると感じています。そのため、日本語としての正しさではなく、お客様とのコミュニケーションにおいて、当社で定義している用語(解約と休止の使い分け)や固有名詞を正しく使っているかを評価項目としています。

Tips②:「モニタリングシート」の項目ですが、最近は5項目と決めて実施しています。以前は20項目くらいあるものを使っていたのですが、1通話のなかで20項目も気をつけながら聞いていては労力がかかります。それよりも項目数を5個と決めて、評価したい5個はどういう事なのかをスーパーバイザーと議論して決めています。また、モニタリングシートは定期的に修正をかけます、注視して取り組んだ項目はだいたいできるようになるので、いつまでも同じ項目を残すのではなく、次に注視する項目に移ります。

また、評価は「〇・△・✖」です。以前に〇か✖の二択方式が流行っていたようですが、〇か✖のどちらかに寄せるのは、やってみたら現実的ではなく難しかったので、△を設けました。

Tips③:同じ音声を2回以上聞きなおします。1回だけだと、評価しながら聞いているので、聞いているつもりでも、聞き逃しているということがあります。また、第一印象で引っかかった点も、全体を通して聞いた後に、もう一度聞きなおしてみると、特に違和感なくなっていることもあります。第一印象だけで評価してしまわないように、最低2回以上は聞きなおします。

以上です。モニタリングは、まだまだ論点があり書ききれていません。業界によっても、例えば金融業界では用語を正しく使わないと法令違反と捉えられるリスクがあるのでNGワードを使っていないという項目が超重要ですが、通販や通信は用語にあまりこだわりがないセンターが多かったり、重点となるポイントは異なります。いろいろな事例もあると思いますので、まだまだ深めていかないといけないと思っています。

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