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「問題ありませんでした」という報告

コールセンターでマネジメントをしています。コールセンターには日々、何百件から何千件という問い合わせが寄せられ、なかには”クレーム”と呼ばれるような対応もあります。

クレームの定義は、センターごとで設定されている場合もありますが、世間一般ではいわゆる「怒っている」場合がクレームと呼ばれると思います。

(今回はクレームについて書くわけではないのですが)クレームも対象がさまざまです。商品が壊れていたとか、思ったようなものではなかったという「商品」に対するクレームや、請求金額が誤っていたり案内ミスがあった場合などの「会社としての対応」に対するクレーム、あとは一番ツライパターンですが、「オペレーター個人」に対する応対クレーム。

応対クレームは、オペレーターの○○さんの対応がひどかったわよ!と本社に電話が入ったりするパターンです。

ごくまれに、本当にオペレーターの対応が悪い、これは誰がお客様でも怒るよというヒドイ場合もありますが、基本的にはオペレーターも怒らせたくて仕事をしている人はいませんから、お客様が気難しい人であるケースが多いと感じています。

今回は、応対クレームが発生し、対応経緯を報告するにあたって「なにも問題ありませんでした」という報告を見かけたので、そのことについて書きます。

応対クレーム事例

お客様から本社に対応したオペレーターの態度が悪いとご立腹の連絡が入りました。対応自体は本社で電話を取った社員が話を聞いて終えています。その後、本社からコールセンターにフィードバックがあり状況調査をしました。

お客様の氏名から顧客データベースを参照し、顧客番号や対応日時を絞って、対応履歴からオペレーターの特定をします。たしかにオペレーター(Aさん)が対応した履歴があり、クレーム対応をしていた記録も残っていました。

問い合わせの内容は、お客様が「商品(甲)」を購入したつもりが届いたのは「商品(乙)」であった、なぜ違う商品が届いたのか確認したいということでした。

注文経路はWEBで、お客様自身が注文の操作をしています。データを見る限り注文いただいた商品をお送りしていることをオペレーターから説明。

すると、お客様は、商品が似ていたので気づかなかった。これは詐欺ではないかと主張を始めます。オペレーターは詐欺ではないことを説明すると、お客様はオペレーターの言い方が気に入らないと謝罪を要求しはじめました。オペレーターも言われるままに申し訳ございませんとお詫びします。

ここでお客様も「まあ、いいわ。ちゃんと支払いもします」と終わりかけて電話を切ろうとしたあたりで、オペレーターがわざわざ「商品が似ていて分かりにくかったことは上のものに伝えまして、改善いたしますので~」と発言したことで、再度お客様に火がついてしまいます。

「そう、おたくが分かりにくい商品を並べていたんですよね。もしかしたらシステムの設計にミスも起きているのではないですか」という話に展開されていきます。

オペレーターがシステムに不備はございませんと言い切ったところで「証拠はあるのか、ミスが起きていないことを今すぐに証明してみせろ」と要求、すぐに証明はできないことを伝えると「できないんだったら言うな、謝罪しろ」と、、、私も今このやり取りを書いててホントにひどいなと思います。

このようなやり取りを経て、本社に応対クレームが入ったのでした。

「なにも問題ありませんでした」という報告

このような対応経緯を履歴と対応音声を確認したうえで本社に経緯を報告します。

その際の報告で「なにも問題ありませんでした」という言葉と、それ以上の原因分析や再発防止策のような記載はありませんでした。お客様がいわゆる”クレーマー”という定義にあてはまるような方だったので、それをもって、これは事故みたいなもの、以上で終了という片付け方をされていました。

さて、これで終わっていいものでしょうか。

該当の対応チケットをクローズするかどうかで言えば、クローズ以外の選択肢はないでしょう。

ですが、「この対応からの学び」はなにもないまま終わってしまっては成長機会の逸失になります。

今回のお客様は気難しい方だったので、別のオペレーターでも同じように応対クレームは起きていたとは思います。ただ、学びを得るべきは、このお客様その人との対応ではありません。

2点あって、①同じようなお客様との対応方法、②別商品を購入してしまうケーススタディ、これを学習機会にしたほうがいいです。

①同じようなお客様との対応方法について、お客様との対応ナレッジを蓄積するには、直接経験をすることだけでなく、他者の対応音声を聞き起こしして、自分だったらどうするかを議論することが重要です。もっとこうしたほうがいい、次に同じようなケースはこうしようというやり取りを、会社の理念に沿ったものを積み上げていきます。

今回の事例でいうと、理念どうこうのレベルではないですが、お客様が一度電話を切ろうとしているのに、オペレーターがわざわざ言わなくてもよかった発言で種を蒔いているので、結果論ですが、クロージングできるときはクロージングしてしまいなさいという経験を共有できたと思います。

②別商品を購入してしまうケーススタディについて、これはコールセンター部門だけでなく、WEB設計しているチームなど一緒に、WEB上の動線見直しが必要ではないか等、確認が必要です。お客様がWEBで意図しない注文をしてしまった、それが気難しいお客様だったからといって、事例を放置してもいい理由にはなりません。それはそれ、これはこれで切り離して検証することです。

以上です。「なにも問題ありませんでした」は、あやしいワードです。限られたリソースで成果を出す、そのためには「なんでもやる」思考はNGで、やらないことも選択していかなければなりません。

ですが、問題抽出すらしなくなっては成長機会を取りこぼします。「なにも問題ない」ってレアケースなはずなので、聞こえてきたら、疑ってみたほうがいいかもしれません。

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