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McFlyとキングスクロス駅のこと


私がひょんなきっかけから渡英するより遥か昔、ワンダイレクションがこの世に存在するより前に高校生だった私は、UKロックづいている友人からMcFlyというバンドをお薦めされてCDをipodに曲を入れるなどしていた。

その友人とは違い、英語の勉強するモチベーションなんて皆無で、音楽への興味も特になかった私であったが、歌詞など一切わからないまま聴いた輸入盤のCDに収録されていたこの曲がやたらと気に入ってしまい、今でもたまに思い出したように聴くことがある。


それから時は流れて10年後くらい、ロンドンで働き始めてしばらく経った頃の私は、初めて仲良くなった生粋のイギリス人、というか生粋のロンドナーの同僚に「子供の時、McFlyとか好きだった?」と尋ねてみたことがある。


私と同年代であり、ロンドン生まれ育ちの都会っ子である彼女は、
思春期の折には私の友人よろしく、McFlyにどハマりしていたらしい。そんな彼女がある日、ハリーポッターの9と4分の3番線でもお馴染みのキングス・クロス駅前を歩いていた際に、今にもタクシーに乗り込もうとするMcFlyのメンバーうちの一人の姿を見かけたそうだ。


彼の姿を目に留めたや否や、ティーンエイジャーのスプリント力で一直線に駆け寄った彼女は、タクシーの窓を今にも叩かんばかりの勢いでサインを求め、メンバーの方も、嫌な顔をするでもなく、快く応じてくれたそうだ。


自分からサインを求めたはいいものの、あいにく彼女はノートや手帳などは持ち合わせていなかったため、その時手にしていたニンテンドーのDSを元気よく差し出した。


窓越しにサインを終えると、メンバーを乗せたタクシーは颯爽とその場を去り、我に返った彼女が、自分の手元に戻ってきたNintendo DSに目をやると、そこにはサインの代わりに

「Video game damage your eyes(=ゲームは目に良くないよ)」

という一文が記されていたとのことである。

ブリティッシュジョーク的なファンサービスってことだったのだろうか。
McFlyの曲を聴く度に、ことの顛末を語りつつ、インターネットミームに使えそうなくらい怪訝な顔をしていた同僚の表情を思い出す。

必ずやコーヒー代にさせていただきます。よしなによしなに。