シヴァ王国の中心街は、古代ロマーナ人が、その昔残していったものを修繕、補強して使っている。

シヴァにはヘイバイトスと言う名のあらゆる工作物の天才がいる。
その工房は一見奇想天外だが、実用的な物を創りシヴァを豊かにしている

天才ヘイバイトスが元々頑丈な古のロマーナ人の建造物をオリエントの智慧、知識も手に入れて島国の現況に合うよう仕立て直している。

街は頑丈な石の城壁と3重の空堀に守られ、四つの塔を結ぶ数キロ四方の城壁はカタパルトで飛ばす攻城弾や大槌に耐え、古代ロマーナ人の土木技術の高さを今に伝える、町の中央にある王の城館にある風呂もその名残だ。
 どちらかと言うと、風呂にあわせて、その上に城館を建てたというほうが正しい。 風呂は一度に百人は入浴できる代物で豪華な大理石造り、サウナと浴槽の付いたロマーナ式のそれだ。

 ロマーナ帝国に倣い街中に公衆浴場も有る、シヴァ王子・ロッソが兵を動かすときは、兵に、ここで入浴をさせ、揃いのぱりっとした軍装で出撃する。
 この時代、城塞国家の兵力は兵農分離されておらず、思い思いの装備で戦場に赴くことが多かった。
 また、不潔なまま出撃し、負傷すると傷口が膿みやすく、死亡者が多かったため、ロッソは兵を清潔にし、また、いっしょに入浴することで連帯感を高めることに心を砕いていた。
 兵の中から練度の高い者三千をゾルダットと名付けた隊に編入し、常時雇いにして訓練を義務にして、給料を払った、職業軍人だ。
 乗馬、騎射、剣術、槍、長弓(1m80のもの)、カタパルト(投石器)、斥候等のエキスパートでなければならず、試験を定期的に行い常時入れ替えを行う。
 この為、ゾルダットから漏れた者の練度も高く、シヴァの兵は強兵だった。 ゾルダットには、シヴァの紋章である踊るイノシシの図柄が入ったロマーナ式の胴をつけさせ、そのふざけた図柄にも関わらず兵の練度のおかげで、赤いイノシシは戦場で敵に怖れられていた。

 シヴァのロマーナ式の兵装は動きやすく軽い、ただ、製作に手間が懸かり、費用もそれなりなので他国では重い鎖帷子や甲冑が主流だった。

 年に2回、ルナの里クロノス公爵家と騎馬戦をする。
百騎ずつの騎馬が互いの旗を狙って、木剣と、たんぽ槍で競うのだがロッソの指揮するゾルダットはルナの兄クロノス公爵グンターや庶子の長兄ハーゲンの指揮する公爵軍に遅れを取った事がない。

 婚礼から2年の月日が流れ、戴冠式を経てロッソは王子から王になり空位を埋めた。
 広い浴槽に今はルナと2人、鹿狩りの汗を流していた。
「あのとき、本当に恥ずかしかったの、どうなるかと思ったわ」
湯に浸りながらルナが初夜の思い出を語る。 湯の中にゆらゆらと美しい裸体。
「本当に証人が同室したらと思うと」
「大切なおまえを人前に晒せるわけがないさ、人前で女を抱くほど酔狂じゃないし、大事なおまえを他の奴に見せる気は無い、女を道具として見る男の真理が宗教の名を借りて、あんな酔狂を押し付けるのさ」
ロッソが笑う。
「俺とおまえが、つながろうがつながるのに失敗しようが、大きなお世話じゃない、俺たちは一緒に居ると決めたのだし、男女の繋がりをやつらに見せる筋合いはないさ。 何様のつもりだろね。神様が偉いってのは納得するが、奴らが代理だなんて誰が決めた、神皇税だ、人頭税だと人の上前はねやがって」
「あはは」
ルナが笑いながら、頬に唇を押し当ててくる。
「おまけに初夜権だとさ」
「領内の女は領主や神皇庁のものだと、税金をとってるって本当?」
「本当さ、おまえの初夜税納めたよ」
「え?」
「シヴァではさせないけれど、カウントベリー辺りじゃ花嫁が別嬪だと、税金じゃなくて実際にバージンを奪っちゃうなんて、非道もしているそうだ」
「本当なのね?」
ルナがおぞましそうに、眉をひそめる 何か思い当たることが有りそうだ。
「自分に気の無い女を抱いて楽しいのかなぁ、もてないやつの考える事はわからん」
ルナの細い指が、湯の中でゆらゆらするロッソを握った。
「そりゃ、シヴァ王、ロッソ・ジークフリート様はもてるものね」
「もてません、いてて」
細い手に捻られて悲鳴をあげる、ルナは意外に力が強い。
「なにすんだよ、おまえ以外にもててないぞ」
「そうでもないのよ、ロッソになら抱かれたいって言う女は沢山いる」
「へぇ、どこに?」
嬉しそうな顔をしたらまた、ひねられた。
「いてててて」
「うれしそうな顔すんな」
こんどは、湯の中でやわやわとしごかれる、愛着を持っているらしい。
「世継ぎ」
ルナは視線を落としたまま言った。
「誰かに言われるのか?」
「嫁いで2年たって、まだ子供が居ないじゃない私たち」
「んふふ。がんばってるのにな」
「周りからもそういう圧力は感じている、ベルにもたまに言われるし」
「そぉかぁ」
ルナの脚の付け根に手をのばし、ヘアにふれる。
「なんだろうな」
「感じすぎちゃうとできないのかなぁ、ロッソとするとよくて、いつも気を失うから・・・ちょっと だめ」
ルナがヘアに伸びた手を払いのける。
「ロッソもこれを他の女に使ってないし、相性は良いし、愛し合っているのに・・・王なら子供作るのに側室の一人や二人いてもいいのかなぁ」
「おまえと作ろうぜ、子供」
「うれしい、すごくうれしい」
ルナが首に抱きついてくる、乳房が裸の肌に当たる、ルナを抱き上げる。二人の体から湯がざばっと落ちる。

「早速子作り、子作り」
ロッソは笑いキスをしながら湯からあがる。
「ねぇロッソ、私に任せて」
「そりゃねぇ、男は種撒くだけだから、任せるけど」
「そうじゃないの」
「ん?」
「いいから、任せてね」
ルナを脱衣所まで運ぶ、ふたりは衣をつけて、手に手をとって寝室へ向かう。



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