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インハウスロイヤーになること

私が弁護士としての就職活動を始めたころ、会社に就職すること(インハウスロイヤーになること)は、法律事務所への内定を得られなかった司法修習生の選択肢と考えられていたと思う。気分を害する方がいたら申し訳ないのだが、私の認識としてはそうであったというだけで、事実であると強く主張するわけではないのでご容赦いただきたい。

私が、インハウスロイヤーを全く考えなかった理由は、主として、①訴訟代理人になることができない、②給料が院卒程度、③その会社であれば大卒の時点で就職できた可能性がある、ということだった。

①について、インハウスロイヤーを入れる会社は、多くの場合に外部の法律事務所と顧問契約を結んでいるため、紛争になった場合は、インハウスロイヤーではなく外部の法律事務所に委任してしまう。顧問弁護士の方が訴訟実務に長けているという判断があるのかもしれない。しかし、私は、せっかく司法試験に合格して、司法試験を終えて、弁護士資格を得たのに、訴訟代理人として働くことができないのはなんともつまらないように感じた。

②について、多くの司法修習生は法科大学院を卒業しているので、給料が院卒程度というのは妥当なのかもしれない。しかし、私は、ただ大学院を卒業したのではなく、その後に大きなリスクをとって(司法試験に合格することができずニートになるかもしれないという恐怖と戦いつつ)弁護士になったのであるから、院卒程度と評価されるのは不当であると感じた。

③について、これは出身大学にもよるかもしれない。私は、いわゆるいい大学に入学し、体育会にも所属しており、大学卒で社会人になる先輩たちはみんな、超一流企業から楽々と内定を得ていた(ように見えた)。私自身は大学卒での就職活動はしていないので、妄想でしかないが、就職活動をすれば、それなりの会社から内定を得られるのではないかと思っていた。そうした根拠のない自信から、大学卒という新卒カードを捨てて、法科大学院に行き、大きなリスクをとって弁護士になったのに、大学卒でも行けたかもしれない会社に行くのは嫌だと思った。

また、弁護士として働く前には思いつかなかったが、もうひとつ感じていることがある。弁護士業務というのは、日本国の法律に基づく仕事であるから、日本国内においては普遍的なもので、北海道であろうが沖縄であろうが、同じ事件に係る仕事の進め方が異なることは原則としてない(例外はある)。しかし、会社の業務は、おそらく決裁の方法ひとつとっても、会社によって全く違うのではないかと思う。私が経験したいのは、その会社でしか通用しない仕事ではない。その会社でなければ通用しない私、その会社を出れば役に立たない私、になりたいわけではない。

このように、私は、インハウスロイヤーになることについては否定的な考えを持っている。もちろん、インハウスロイヤーは、ワークライフバランスが整っており、特に子育て中の女性弁護士に人気があるとか、法務以外の会社の業務に関わることができるとかいった良さもあると思う。それでも、上記理由を考慮すれば、私はインハウスロイヤーには惹かれない。特に、ファーストキャリアとしてのインハウスロイヤーは全くおススメしない。

最近、インハウスロイヤーの良さをやたらと強調する記事を目にしたので、反論してみた。

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