見出し画像

#34 それは僕のことが好きだからじゃない?

こんにちわ。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の34話目です。

たのしかったオフィスに今異変が起きている。
実は、精神環境が悪いのだ。

先日後輩のはなしをしたのだけれど、実はわたしも同じく病んでしまっているのだった。理由は少し違うけれど、根っこは一緒だ。
ベースが病んでいるところに、さらに事件があってわたしはダウンした。

このシリーズでは、わたしの好きな人(上司)をKさんと呼んでいる。
その他にこの話には登場人物はふたり。Kさんの上司であるDさんと、隣の部署のMさんというKさんと同じレンジの準管理職である。今ふたつの部署は同じチームで仕事をしている。

端的にいうと、わたしはMさんに嫌われている。
Mさんは30代後半の女性で、既婚だが子どもがいない女性。
わたしの会社で働いている既婚で子育て中女性は、ほぼこのカテゴリーに入っている管理職の下で働きたくないと思っている。
前提として出世している女性は、男性のように働く女性だけで、子育て中の管理職はわたしが知っている限り一人だけという実態もある。
正直、同じチームで働くことになった時、嫌な予感しかしなかったけれど、それはあっていたことになる。

なぜこんなに人が病んでいくのかというと、原因は明白だ。
MTGがしんどい。
チームとして業務を進めるやり方として、わたしたちのチームが採用している方法はかなりMTGが大きく影響する。
そのMTGは、メンバーに安全な場を提供し、それぞれの意見を自由に発言し議論することで成り立つ。
が、このファシリテーターであるMさんとその上司のDさんには「安全な場」を提供することがどうしてもできないらしい。

立ち上げから、彼らの言動は失敗したいのか?とすら思わせる言動に満ちていた。
発言するメンバーにマウンティングを仕掛けて、叩きのめす。
メンバーの発言を言い換えて、自分の意見にすりかえる。
意に沿わない発言はあえてとりあげず、無視する。
そもそも発言をさせないように環境を制限する。
そしてDさんもMさんも気分屋で、イライラが顔や声に顕著に出る。
自然、発言するメンバーは減っていき、内容も限られた範囲になっていく。
議論をすることができない環境で議論を求められる。
こういった環境に慣れていない社歴の浅い社員から病んでいくのは必然だった。

特にKさんのチームにもともと所属していた社員において、反応は顕著だった。アウェーで、今まで恵まれた環境で仕事していたのだから当然だった。
わたしはわたしで、はじめてMさんと接して、対応に苦慮していた。
MさんはDさんやKさんがいない場でわたしへのあたりがきつい。他の人への対応と違うことは明らかで、それはKさんもわかっていた。
ファシリテーターである彼女には権力がある。
業務として対応しようにも、彼女の牽制につながるようなわたしの発言は意見としてとりあげてもらえる機会はない。けれど、それは時間がないから意見としてとりあげないのだという名目で成り立ってしまう。
業務が楽になればMさんの対応も和らぐかもしれないとKさんと作戦を立て、提案して実行してみたりもしたけれど、わたしへの対応はきつくなるばかりだった。
ルール化されていないことをわたしがやらないことで公然と「甘え」だと非難される等、つけ込まれることが多くなり、その態度はエスカレートして他の人からもわかるくらいになってきていた。
結局のところ、原因が業務にないことは明らかだったけれど、この世のだれが本当の原因を本人に突きつけることができるだろう。原因が本人の心の中にしかない以上、何を言ってもハラスメントにしかならない。

そんな中、立て続けに悪いことが起きて、わたしは限界に達して、Kさんに駆け込んだ。
Kさんは30分のMTGを組んでくれたけれど、わたしが時間が足りない!と言ったらそれを1時間にのばしてくれた。

言い返せないんだ、と話した。
攻撃されたとしても、わたしは彼女に「子どもができないのはわたしのせいじゃない、だからわたしにあたらないで。」ということはできない。
そもそも巧妙に、「仕事ができないから」きつくあたるのであって、「あなただけに」きついわけじゃないというたてつけになっている。
言い返したところで、そう言い逃れられるだけだ。
それでも、本当は彼女を傷つけることくらいはわたしにだってできる。
でも、やらないし、結局本当のところはできない。
だって、彼女の気持ちもわかるから。わたしだって子どもができないのかもと悩んだことだってあるし、流産したことだってある。

産婦人科というのは残酷な場所だ。
わたしが流産してしまって手術をした時、麻酔から目を覚ました時に最初に耳にしたのは赤ちゃんの泣き声だった。どうしてわたしはわたしの子どもを守ってあげられなかったんだろうと思った。
慣れてしまったけれど、分娩台にのぼるのは屈辱的だと感じていたし、自分の中に入っていく冷たい器具の感触はいつまでも慣れなくて怖かった。
女はみんなそれを経験するのだ、少なからず。
不妊治療はさらに過酷なものだと聞く。
仮定の話ではあるけれど、もし彼女がそんな環境下だったら?それだけでわたしには彼女を攻撃することはできないのだった。

そんなようなことを男性のKさんに話していた。
言い返すことができないのはわたしだけではなくて、Kさんのチームの全員がそうなのだ。相手が誰であっても。
なぜか、全員がそういう人たちだった。

前にKさんが病んだ時(#30で書いた)にも思った。
Kさんはいつも「僕、委託先さんの運がいいんですよ」なんて言うけれど、違う。彼が引き寄せているのだ。
本人が穏やかだから穏やかな人が集まり、それぞれが自分の責任を果たす。
うまくいかなければ、フラットに話し合って解決する。
安全な場があれば、コミュニケーションは円滑に進むのだ。
誰も怖くないから、誰も攻撃する必要がない。安心しているから、それぞれが自分のいいところを発揮できて、チームとしての力が増す。
Kさんがいない時もそれは働いていて、あの時だって委託先の人を含めた全員が何も言わず、Kさんの仕事をみんなで自然に振り分けて引き受けた。

わたしが泣いてしまった、というよりなんなら号泣しているので、Kさんが慌てているのがわかった。
あー、やってしまった。
女なんて泣いたらけろっとしているのだからほっておけばいいのに。と思ったけど泣いている本人なので言えない。
でも、ここ以外で泣けるところは今わたしにはない。

「そうだよなー、言えないんだよな。みんな優しいから。」
とKさんはひとりごとみたいに呟くのを聞いたら、安心して余計涙が出る。
こどもみたいだ。

ひとしきり泣き終わった後、
「でもこの前のMTGで実はちょっとホッとしたんですけどね。Kさんの提案を聞いていたら、うまくいくような気がしてきた。」
とフォローしてみたけれど、
「そうなの?僕は不安でいっぱいです。」と言われてしまった。

それはそうだ。
自分の部下のうち半分が病んでてさらにもう一人も病みかけている。
なんとなく、もう言うのやめなくちゃと思ったけど、これが後を引くことになる。

この後、わたしは無理だなぁと思いながらも、元の体制に戻りたいと話していた。
Kさんのチームの良さとか、上に書いた「安全な場」とかコミュニケーションとかとりとめのない話をしていた。
その下りで急にKさんがぶっこんできた。

それは、僕のことが好きだから(そう思うん)じゃない?

頭からすべての言葉がぶっ飛んだ。
(急に何言い出すんだろうこの人は。)

無言になったわたしを気遣って?かさらに言葉を足す。
「ほら、あるじゃない。好きな人の言うことならなんでも正しいみたいな。」
(フォローになってないけど。っていうかここで日和るなら言わなきゃいいのに、なんだろうこの人。まじで意味わからん。猛者か?)

ふと、違和感がある。
何かが降りてきた。
急に言葉があふれて止まらなくなった。

違いますよ。
わたし、たぶんですけどKさんが知らないKさんを知ってます。
うーん、誰でも思ったことを100%口に出すわけじゃないじゃないですか。
色々考えて、言わなかった言葉とかあえてやらなかったこととかありますよね。それは人によって違ってて、1000の内1出てる人もいれば、10の内そのまま全部出てる人もいる。
Kさんの仕事、例えばこの前のMTGの提案聞いているときに、ふと感じるんですよ。たぶんみんなの言うことを聞いて一人で考えたりしてこれができたんだろうな、って。中身に誰かが言ったこととかわたしが言ったこととかがふと混じっている。そういう時に裏側の1000があるのがわかるんです。
時々感動するくらい、それが特別なんです。
そういう仕事が好きなんです。

よくわからないけど、わたしはこの時必死だった。
今度無言になったのはKさんの方だった。

ちょっとしてから、
「たしかにあれは一人で考えたけど……感動する???」とKさんは言った。

勝った!…かもしれない。
ていうか、なんの勝負なんだこれは。話せば話すほどわたしの中の好きが大きくなるだけで、何してもむしろ負けてるような気もする。

そして最後にKさんが
「なんかさー、〇〇さんの言葉って学びっていうかなんだろう……なんか僕にとって……?」
なんかごにょごにょ言っていたけど、その時わたしはまだ「僕を好きだからじゃない?」発言にどぎまぎしていて後半部分を覚えてない。

大変、もったいないことをした気がする。
はー疲れた。
免疫ないのでね。
この日、結局1時間半近くKさんはわたしに時間をくれた。申し訳ない。


…で、なんだったの?ということなんだけれど。
彼は女を信用しないのかなと思ってみたりする。
落ち着いて考えてみたけれど、「それは、僕のことが好きだからじゃない?」っていう発言の意味は、「好きとかいってるけど、それが冷めたら全部なくなるんじゃない?」っていうことだったのかなと。
女を信用しない、というのは業務のとき、最後のところでいつも感じるところでもあったし。

…とか考えてみた。
わたしはこういう自分の小賢しいところがあんまり好きではないのだが、つい考えてしまうんだよな。
ここまで読まれた方、この想像は合っていると思いますか。
ご意見あればコメントください。
お願いします。(藁をもすがる気持ち)





サポート嬉しいです!新しい記事執筆のためシュタイナーの本購入に使わせていただきます。