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#51 「18禁スピリチュアル」 誰かがわたしの中で泣く記憶

こんばんは。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の51話目です。
今回は性的な表現を含みます。
苦手な方は回れ右でお願いします。

#44 前世があったとしても断じて父娘じゃない の後、わたしはどうしても気になってたまらなくなっていた。
前世のことである。
でも、占いに行こうとは思えなかった。
信頼できるひともよくわからないし、何か言われたとしてわたしが信じるかというとたぶん信じない笑

だから、自分で見てみよう、そう思った。
その日から、「前世 見方」とか検索をはじめた。
いつものYouTubeでできそうな方法に当たりをつける。
いろいろな方法で何回か、やってみた。

すると、その中で一つ気になるやつがあった。
黒いドアから入る世界。

そのイメージは鮮明で、見るたびに話が進んでいった。
単なるわたしの妄想とは思えなかった。
そして、そのイメージが見えるたびに涙があふれて止まらなくなる。

今日はその夢の話をしてみる。

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その世界のわたしは、父親と弟と3人で暮らしている。
深い森の中で、近くに村はあるけど村人ではないみたいだった。
わたしは髪は薄茶色で長く、スラッとしていて美人だった。(なんと!)

わたしは父親がだいすきで、ずっと一緒に暮らしたいと思っていた。
なぜか、弟をあまり好きではなかった。弟から湿度のある視線を感じた。
母はいなかった。理由はよくわからない。

そして、わたしはいつも男のひととしていた。
湖のそばで、森の中で、どこかの小屋で、とにかくいろいろなひとと至る所で致していた。他にしていることがあるとすれば、ひとりで湖を眺めるくらいだったくらいだ。
そのわたしには貞操観念とか罪悪感とかはまったくないようだった。
少しでも体が疼けば、食事を摂るように、あるいはトイレにでも行くかのように誰かとしていた。
いわれるままに誘いにのり、それなりに楽しんでいるようにも見えたが、相手の顔はまったく見えない。毎回違う相手で、同じ歳くらいのひとも父親くらいの男性もいたけれど、相手への関心は一切なく、こだわりもないようだった。誰であろうと、つながっている先は大きな同じ何かだったのかもしれない。
最中は頰に赤みが差して、声は甘く、とんでもなく乱れているように見えた。でも終わった瞬間からもう無表情で、笑いもせず、声も発しない。速攻で服を着てスタスタとその場を立ち去るような子だった。
だけど、昏さはなかった。終わったらただスッキリして後には何にも残ってない、そんな感覚。
心に疚しさとか曇りが一切ないのが不思議な、今のわたしにはよく理解できない女だ。

彼女にとって特別なのは、父親だけだった。
父親にだけ笑いかけ、父親の周りを少女みたいにくるくる回り、まとわりつく。父親はそんな彼女を無視するでもなく溺愛するわけでもなかった。
弟がそんな彼女と父親をひねたような目でみては、うつむいていた。

そんな中、彼女は嫁に行くことが決まったようだった。
結婚前夜、とうとう彼女は父親のベッドに潜り込んだ。
でも、何もできない。
できたのは「おとうさん、わたしこのままここで暮らしたい。」そう言うことくらいだった。
父親も「そうだなぁ」と答える、それだけだった。
彼女には、父親から何の感情も読み取れなかった。
彼女はそのまま朝まで父親の背中にピタリとくっついていた。

父親は恐ろしく無口で、表情もなかった。
わたしが聞いたのはこの「そうだなぁ」を含む二回だけだった。

結局、何もないまま、翌日彼女は夫の待つ新しい家に向かった。

新しい家は都会にあった。
夫は裕福なようだった。
彼女より年が10歳くらい上で、落ち着いた紳士のように見えた。
けど、そこからの生活はとんでもなかった。

初夜には夫を含めて7〜8人の男性がいた。
ただ、彼女はなんとも思っていなかったようだった。
こういうことは初めてじゃない、いつもだったのかもしれない。

赤い血のついたシーツのイメージが見えたけど、これはたぶんこの日のイメージじゃなかった。
彼女の初めての相手はこの夫だったのだろう。
シーツの敷かれたベッドなんてまともなところでしていたのは夫以外にはいなかったのだから。

それから毎晩毎晩、同じようにたくさんの男性が彼女と交わった。
夫とすることもあったけど、夫はそれを見ているのも好きだったようだ。
そして意外なことだが、彼女は聖母様のように扱われていた。
そこは優しい空間で、個人が尊重される特殊な場所だった。
男性たちは、すべてを彼女に放出してよかった。
彼女はひたすらに素直に反応し、すべて受け止めた。
男性から受ける刺激やら愛撫やら衝動やらを受けとめ、味わい尽くし、それを目で吐息で温度で潤いでどこまでも素直に表現し続ける。
それは、男性たちを心から安堵させるようで、皆一様に許されたような顔をしていた。
代わりになのかみんな、彼女をどこまでも甘やかしとろけさせた。
不思議な一体感をもって、彼女は共有されていて、その空間はバランスが保たれていた。
彼女にも男性たちが必要で、男性たちにも彼女が必要なようだった。
みんな家はあるけれど、かえる場所がない。
誰も、誰かを傷つけない。
だから、この場所と彼女はとても大切に扱われ、守られていた。
彼女には義務がなかった。
ただ自分の感覚に溺れてとろけていること、それが仕事といえば仕事だったけど、それは彼女が彼女であることと同義だった。
そしてその感覚に天賦の才があった。
そして、その才能が人間として生きる彼女の不幸を形作っていた。

たまに、それを理解していない男性が彼女を可哀想に思うらしい、そこから連れ出そうとすることがあった。
「君はこんなところにいちゃだめだ」とか「本当のきみは」とか「こんな生活でいいのか」とか言われるたびに彼女は困っているようだった。
つかまれた腕を緩くほどき、夫の陰に黙って隠れる。
彼女はここでしか生きていけないのだし、温くしあわせだった。

夫は彼女の一番のよき理解者だった。
愛しているというより、崇拝していたのだ。
彼女の体が快感から離れられないことを知っていたし、男性たちをそのために必要としていることも知っていた。
そして、人間としての心がどこにあるかももちろん知っていた。
その上で、生きづらい彼女に現世での場所を与えるという役割を自分に課した。
夫の気持ちは、現在のわたしには全く見えてこなかった。

昼に外に彼女ひとりで出かけることが何回かあった。
夜のメンバーの男性の妻であろう女性に声をかけられる。
「いつも、主人がお世話になっております。」
嫌味を言われても、彼女の心は一切揺れていないようだった。
「こちらこそお世話になっております。」
女性たちは真っ赤な顔で彼女を睨みつけ、立ち去っていく。
妻たちには彼女がなぜ必要なのかわからないのだった。

ただ、彼女は妻たちに何を言われようとなんとも思っていないようだった。
それだけではなく、彼女はこのときも何にも関心がなかった。
欲も明日も希望も期待も、何もなかった。
だけど、彼女は男性たちからいつも与えられていたから何もかもあった。
みんな、与えたがっていた。
でも、そのどれも、彼女には意味を持たなかった。

何回か分岐点はあった。

一度だけ、彼女は村に戻った。
家のドアを父親が開けてくれたが、奥にある父親のベッドに知らない女の背中が見えて、家に入らないままお土産だけを渡して道を引き返した。

弟とその妻の暮らす家はその近くにあった。
弟ではなく、その妻に会うために家に寄る。
昔から、その妻は彼女の憧れだった。
いつもふんわり笑っていて、誰からも愛されるおひさまみたいな子。
優しくて、ちょっと抜けていて、素直でおしゃべりで、普通の子。
弟の眼はまだどこか曇っていたけれど、この子がいるからきっとだいじょうぶなんだろう。
出してくれたホットミルクをのみながら、少し息をついた。

街に戻り、ふさぎこんだ彼女に夫は優しかった。
夫は、彼女が父親を愛していることを知っていた。
夫は彼女のすべてを理解していて、彼女のすべてを受け入れていた。
彼女は、自由だった。
心だって縛られてはいなかったし、この家を出ていくことだっていつだってできたのだ。
でも、彼女はそうしなかったし、父親に自分をぶつけることもなかった。
それに、街の生活はわるくなかった。求めている平穏がそこにあった。

そして、父親が街に来たこともあった。
雨が降っていて、まだ昼間だった。
いつものメンバーと睦みあうその部屋に、父親が入ってきた。
ベッドの上で絡みあう彼女と男を、父親が見つめていた。
髪も服も濡れていて、目は真っ黒で手が震えている。
「帰ろう」彼女に向かって、手を差し出す。
それに彼女は、「もう遅いよ」と凍えながら答えた。
父親は黙って帰っていき、彼女はまたいつも通り蕩けてなにもわからなくなった。
その後、お風呂で子どもみたいに夫に体と髪の毛を洗ってもらった。
全身にキスをされながら、またその感覚に溺れる。
「こんな風じゃなかったら、一緒にいられたのかな。」
と夫に問うけれど、夫はそれには答えない。
「でもきみは女神だ。」
そういって、足の指の間から耳の裏側にまで舌を滑り込ませる。
そして、彼女はもう今の快楽に身を委ねている。

彼女は知っていた。
自分が快楽に弱く、明日を約束できない人間であること。
そんな自分が平穏に暮らせる場所がここだけであること。
自分の持つそれが父親を傷つけること。
父親もおそらく自分を愛しているであろうこと。
けれど、彼が父親という役目を絶対に放棄しないこと。

そういう日々の話が、まだ続いている。

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これは、なんだ。
この記憶はなんだろう。

登場人物、全員おかしくないか。
というのが本音だ。
だけどこの話を「陳腐だな」と思いながらも、一方で笑い飛ばしきれないのには根拠があって、一つは涙が止まらないことだ。

わたしは、この彼女を自分だとなぜか思っている。
イメージが脳内を巡り続ける間、「お父さんと一緒に暮らしたかっただけなのに」という感情に支配されている。

今のわたしは、このひとたち馬鹿みたいだなと思うのだ。
この父親だってやせ我慢してないで、さっさとやっちゃえば逆にふたりとも冷めたんじゃない、とか。
小さな村の奥でひっそりと親子ふたりで暮らせばよかっただけなんじゃない、とか。
わたしは、そう思ってしまう。

なのに泣いているのだ。
わたしの中にはふたりいる。

これだけじゃなく、感情に既視感があり、現実に重ね合わせると納得してしまうことがあるのだ。

この父親は彼に似ている。
現実で、わたしは何度か違和感を感じたことがある。
彼が、あるふとした瞬間に強い感情を向けてくること。
他の男性の話をしたときに、嫉妬や独占欲みたいなものを感じるのだ。
そのたびに、「でも彼がわたしのことを好きなわけもないし」と気のせいだと打ち消してきた。
彼にそれをつっこんでも否定されるだけだったのもある。

でも何度か繰り返すうちに、不思議に思うようになった。
好きだったら好きだといえばいいし、好きじゃないなら嫉妬しなければいいし、好きだということを隠すなら隠し通せばいい。
つまり、言と行を一致させればいいのだ。
その点において、基本的に彼は言行を一致させるタイプだと思うし、なぜボロが出るのか。出さなければわたしにもつっこまれないのに。それも何回も。流石に迂闊じゃないか。

その答えがこの記憶なんじゃないか。
ボロが出るのは自分でもそれがよくわかってないからなんじゃないか。
彼が言行不一致になる理由、それは「昔父親だったときの記憶からくる」感情に支配されているから。
自分でもよくわからない感情を本人も持て余しているからなんじゃないか。

少なくともわたしは、そうだ。
ただの妄想かもしれないイメージが毎晩脳内で繰り返されて、涙が流れる。
「おとうさんと暮らしたい」「ずっと一緒にいたい」「それだけでいいから」フレーズがリフレインして、悲しくて悲しくて悲しい。
嵐みたいな気持ちに翻弄されながら、これは、わたしの気持ちじゃないなということくらいは今はわかる。

現実での彼に何度も思った。
「本当のことはどうせ何ひとつ言ってくれない」
でも、今のわたしがこんなこと思うはずがない。
だってわたしは彼のことをそこまで知らない。
言っていることが本当なのかどうかもわからない。
会っていたら、もうちょっとわかったかもしれないけど、会えないから。
だから、きっとこう思っているのは彼女なのだ。

「本当のことはどうせ何ひとつ言ってくれない。それに愛してくれない。」
この言葉をのみこんだのは、たぶん「帰ろう」と言われたときだった。

現実で彼が「親子」というフレーズを口にして、本当に驚いたしすごくいやな気分になった。
彼は前世とか信じていないと思うし、スピリチュアルだって興味があるとは思えない。
それなのに、すんなりと「親子」と言う。

そして、いやな気分になるわたし。
過剰に反応して、「おとうさんじゃないし」とか後からムキになって言い募るようなことを言った。
だけど、そんな必要ないのだ。
今親子じゃないことは明白なのだし、あんなにムキになる必要なんてない。
じゃあこのムキになっているひとは誰なの。

わたしが現実であれだけ男性を苦手にしたのは、この記憶のせいじゃなかったか。
自分がこわくて、封印するためじゃなかったか。
現実の自分は地味で取るに足らない存在なのに、ずっと「普通に生きたい」と祈るように願っているのは、そのせいじゃないのか。

わたしは美人じゃなくて、いいなと思うくらいはあるけど、でも、本当に妬んだことがない。
なぜだろう、
「美人ほど大変なんだよな」
「変な男ばっかり寄ってきて、変なことにもいっぱい巻き込まれる」
「美人は、強くて賢くないと幸せになれない」
そう思っているのだ、昔から。
美人になったこともないのに笑

彼は仮にわたしのことを好きだったとしても、そんなに嫉妬するような性格にも見えない。
それなのに、他の男性の影だけでわたしがわかるほどちょっとおかしい素振りを見せる。
あの記憶がもしあれば、それも納得できる。

そして、時々ほんとうにお父さんみたいになる。
わたしの体調や生活に謎に口を出してきたりすることがある。
そういうときはほんとうざい。

前世を信じるか?と言われたら、まだ正直よくわからない。

わたしは自分の気持ちの純度を高めたくて、自分の中を整理している。
そうすると、感情が自分のものだけじゃないことに気づく。
そうしようとすればするほど不純物とかガラクタが見えてくる。

その中で見つかった記憶。
これが本当でもし100年前の片思いだったにしろ、ただの妄想だったにしろ、わたしの体も心もちょっとだけあなたたちに貸してあげるよ。
と今思っている。

いつかわたしの中に入ってきたエネルギー。
あれはこの父親かもしれない。
一回だけ、めちゃめちゃ強引にわたしの中をかけぬけて、いなくなった。
あまりにも悲しそうだったから、抵抗もしなかった。
彼に似た、彼ではない誰か。

わたしはいいけど、彼には自由でいてほしいなぁと思ってみたり。
ただの、夢なのに喋りすぎた。

これは昨日の夜に書いた。
ああ、また今夜も雨だな、と思いながら。
そして、昨日も彼女の涙がわたしの枕を濡らしていた。

当分おつきあいするしかないかもしれない。




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