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中国政府の塾禁止命令から一年弱。大手だった新东方の新たな挑戦

中国政府が昨年行った「ダブル削減」政策はまだ記憶に新しいかと思います。K12の課外塾への強い取り締まりによって、オンラインの教育アプリからオフラインの学習塾にいたるまで、学外教育産業全体には大ダメージとなりました。この内容はたくさん読まれましたし、日本のメディアでも話題になりましたね↓

それから一年近くが経過した今どうなっているかご存知ですか。倒産した企業もたくさんありますし、大規模リストラを行い企業再建に力を入れているところもあります。そんななか、再建が注目されていて激バズリとなっている企業が一つあります。

今日は、英語教育から発祥した学外塾大手の「新東方」の事業再建について話します。この事例は日本の教育事業関係にもビジネスのヒントがあるかもしれません。

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教育事業が大幅に縮小した新東方が選んだ道は中継販売でした。ただ、競争の激しい中国での現実は甘くはありません。昨年12月28日に設立者である俞敏洪が一回目の販売に臨んだのですが、当日の販売額はわずか300万元(6000万円ほど)で、このレベルの有名人による物販ではこの金額では全く成功とは言えないのが中国です。それからの半年間、何度も中継販売にチャレンジしていましたが不調、視聴者が100人未満のときもよくありました。

しかし6月10日、新東方の中継ルームが突如ネットでバズりました。今までの中継ECでは見たことのないベテランの英語トレーニング教師による物販があまりにも面白いと話題に。これには、たくさんの視聴者が集まり”ついつい見ちゃって、ついつい買っちゃう人”が多かったのです。

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↑話題となったセールスは北京新東方の高校英語塾部門担当だった董さん。昨年までは新東方で8年間英語塾を担当し、延べ50万の学生が受講していたというベテランの先生。ダブル削減で仕事がなくなることで相当凹んでいたと取材に対して回答していました。

彼の中継販売では、新東方が力を入れて選んだ農産物と本が多いです。そして英語と中国語を混ぜている説明がとにかく受けが良くて、本の販売では歴史や地理、哲学などの説明もわかりやすくて好評でした。

これ、どのくらいバズったかというと10日の配信でまずバズって、翌11日の中継販売では1274.6万人が視聴、販売額が2100.43万元(約4.2億円)に伸びて当日のtiktok中継販売ランキングの6位となりました。ちなみに6月1日では新東方はランキング229位だったので強烈な上昇でしたね。

この勢いは視聴者数や販売数だけではなく、香港市場で上場している新東方の株にも波及。連日のあげ足で今月180%の上昇を実現しました。

実際にネット民の声も見てみるとこちらもとてもおもしろいです。

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↑中継ってこんな感じだとなかなか面白いですね。

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↑新東方の中継、中毒性やばいですね。

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↑董先生すごいですね。天文地理歴史なんでもわかるし、人生観や価値観も良くて、とても素晴らしい授業でした。(...授業とはいったい笑)

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↑みんなも見てみて!漫才みたく面白いです。英語の勉強にもなります。

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↑英語先生たちが逆境での頑張りですね。

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↑新東方のライブ中継は数少ない、ついつい見ちゃう中継の一つです。

メディアの取材では、今まで人気のセールスマンのオンライン中継とは異なり、新東方の販売では固定費はあまりかからないし、プレゼント用の大量サンプルがいらないと分析。これはメーカーにとってはありがたくビジネスとして強いと思います。

また、今までも無名とは言わないまでも、それほど影響力が高くなかったので値段交渉も強気にはならなかったです。ユーザーからのコメントでも「ここより安いところはあるけど、面白いからここで買いたくなる」との主張がたくさんありました。

実は最近中国のトップセールスマンの李佳琦がとある公に言えない理由(ツイッターとかで調べれば出てくると思います)ですでに1週間以上中継を行なっていなかったです。

ビッグキャンペーンの618(6月18日を中心に行われるECサービスのお祭り)を控えて大丈夫かと心配の声もありましたが、今回のバズりで新たなスーパーセールスマンが誕生??との期待も高まっています。

ただ、当人で人気爆発中の董先生は取材では「この波は長く続くことはないだろう、きちんとやるべきことをやる」と冷静な一面を示しました。新東方の再建もこれからだという意見もありしっかりしているなと。

一方で、この現象に対してネガティブな意見もあります。ネット民の中には「中継主だった先生の授業は自分の子供には受けてもらいたくない」とちょっと偏見のある親もいました。また、董先生をはじめ、こんな優秀な先生たちが生活のために中継主に転身するなんて、教師にとっても中国教育にとっても哀れだという意見もありました。

新東方の設立者である俞敏洪は有名な企業家であり、また優秀な教育家でもあります。彼に関して印象深かった言葉もあります、それは「絶望の中で希望は見つかる」。彼自身が定年してもいい年なのに今実践してることです。

ボクの知人で学生時代に新東方の講義を受けた人も、新東方の先生への評価が高かったです。英語の物販も面白くていろいろ勉強にはなりますが、これからどうなっていくかは気になります。

(参考資料)


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