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【名言と本の紹介と】『読書を仕事につなげる技術』

読書という行為は、自分の時間といくばくかのお金を投資することで人生における豊かさを回収するという投資行為です。

山口周『読書を仕事につなげる技術』(KADOKAWA,2015)24頁



 皆様は読書をするだろうか。noteでフォローさせていただいている方の多くは創作を好み多作の方が多いが、その分他の方の作品や小説も読んでいることと思う。仕事をバリバリとこなしビジネス書を良く読む方も多いだろう。

 かくいう私はあまり読まない。読むべきだと思っているが読めていない。読めていないからこそ月に一冊は本を紹介しようと、こんな記事を書いているのだ。

 このような「読まなければ」という強迫観念に駆られている類の人間は、1冊の本を手に入れたら、最初から最後まで目を通さなければならないし、書かれていることを理解しなければならないと思う。だがそうまでして読んだ本の内容を1か月も経てば説明できなくなっている。残っているのは「この本は読んだことがある」という自負だけだ。

 今回取り上げる本によるとどうやら、私は力の入れ所を間違っているらしい。私はひたすらページを一枚ずつ送り、最後のページまでめくり終わる達成感のために読書をしているようなところがあるが、まず重要なのはその後である。


結論から言えば、読書で得た知識や感性を仕事に活かそうとした場合、大事なのは「読んだ後」なのです。読書を通じて知識を得るというのは、シェフが食材を仕入れるようなものです。しかし、仕入れた食材をそのまま顧客には出しませんよね。
<中略>
「読書はそれなりにしているのに、いまひとつ仕事につなげられない」という人は、「仕入れの量」に問題があるのではなく、「仕入れた後」、すなわち情報の整理・貯蔵の仕方、仕事の文脈に合わせて情報を組み合わせる力に問題があるのです。

同 8頁

 

 食材をスーパーで選ぶ時、白菜を手に取っても、大きさ・重さ・葉の瑞々しさ・切り口の鮮度などを見極めるだろう。そして持ち帰った後に長持ちするよう芯を切り濡れたキッチンペーパーとラップで包む家庭もあるだろう。本書では、本の選び方から読み方、保存の仕方などを学ぶことができる。

 まず本の選び方だが、その前に前提として意識することがある。

本は「2割だけ」読めばいい

 パレートの法則という言葉がある。イタリアの経済学者の提唱した法則で、「さまざまな分野において、効果の80%は全体の20%によって生み出されている」という一種の経験則だ。本書の論で言えば、一冊の本の中の20%がミソである。このミソを見抜くためには、結果的には全部読むことになるのだが、ポイントは「軽く、薄く全体を斜め読みする」ことである。

 ではどうやって「軽く、薄く全体を斜め読みする」のか。何も速読を進めているわけではない。まずは目次を見る。そして「総括」や「結論」というまとめの章があれば、まずそこを読む。良著であれば、それだけでその本のエッセンスがくみ取れるはずだ。

 だが、まとめの章を読んでもいまいちまとめっぽくない場合はどうするか。その場合は再度目次に戻り、面白そうだと思う章を開く。そして各段落の一文目だけを読んでいくのだ。そのようにざっと読んでみて面白そうだと思えばその章を読む。面白くなければ再度目次に戻り、他の章を読んでみる。それを何回か繰り返して、やはり面白くなければ買わないという選択肢になる。

 この選択の仕方は非常に合理的だとは思う。小説で言えばネタバレから読むスタイルだし、食事で言えば、ケーキの上のイチゴだけを拾って食べまわっているような、流れてくる回転ずしの上のネタだけ食べているような、非常にお行儀が悪いつまみ方だと感じる。

 だが、読書は投資なのだ。


全部読まなくてもいい、むしろ読書の基本は拾い読みであって、全部読むという読み方のほうが例外だ、と指摘すると、「もったいない」と反論されることがあります。せっかく買ったんだから、なんとしても読了しないとムダに思えてしまう、ということです。
これはこれでわからないわけではないのですが、筆者としては「仕事につながらない本に貴重な時間を投入しているのはもったいない」と反論したくなります。そもそも、読書というのは消費ではなく「投資行為」と考えるべきです。読みかけの本を途中で捨ててしまうのをもったいないと感じるのは、読書という行為を消費と考えているからです。
確かに、お金を払って購入したアイスクリームを食べかけで捨ててしまうのはもったいないと思えます。しかし、読書というのは本来的に消費行為ではなく投資行為です。この投資の原資になっているのは本に払った代金と自分の時間であり、リターンは知識や感動などの非経済的な報酬、あるいは仕事上の評価や昇進・昇給といった経済的な報酬ということになります。

同 23頁

 

 小説はアイスクリームと同じく消費するものだ。味わうことが目的となっている。だがここでいう読書はビジネス書・教養書である。目的は味わうことではない。いかにコスパ・タイパ良く内容を理解し活用できるかが重要なのだ。目的への最短ルートが、流れてくるネタだけをつまみ食いすることなら、積極的に行うべきなのだ。迷惑系Youtuberと異なり、読書のつまみ食いは誰にも迷惑をかけない。まずはこの意識改革が重要である。

 さてそんなもったいない食べ方に慣れてきたら、さらにお行儀の悪い作法が出てくる。


6つ目の原則は、本は10冊以上を同時進行で読む、ということです。「10冊」ではなく、「10冊以上」です。同時進行で読む本の数として、10冊というのは最低限のレベルと考えてください。

同 34頁


 ちなみに、私は普段から短編・長編小説とビジネス書を1,2冊程度であれば並行して読むことがある。このことでさえ人に話せば、否定に近い反感を買う。多くても4冊くらいだ。我ながら浮気性だと思っていた。だが著者の推奨は10冊以上である。著者本人は恐らく100冊以上を同時に読んでいるとのことだ。浮気レベルが半端ではない。

 ではなぜこんなにも浮気を推奨するのか。その最大のポイントは「アイドルタイム=滞留時間」の縮小だ。せっかく本を読む時間があっても「なんかどの本も気分じゃないな……」というタイミングだった場合、その時間を読書に使えないのだ。おそらくそのままダラダラとXやTiktokなんかを見続けて時間を浪費してしまう。


 ところがここで、読みかけの本が仮に20冊あったとすると、どれかが気分にフィットする確率はずっと高くなるでしょう。仮に本を読む「気分のモード」が10パターンあるとすると、3冊の本がどれも外れるという確率は72.9%にもなります。意外と高いですね。一方で、本が10冊あって、そのどれもがフィットしない確率は35%程度に、20冊であればたったの12%程度にまで下がります。つまり、同時進行で読んでいる本が20冊ある、という状況であれば、「どの本もフィットしないなあ……」という状況は10回に1回程度でしかない、ということです。

同 35頁


 ふと空いた時間を読書に充てられるように、常にたくさんの読みかけの本を用意しておくことが大切なのだ。なんだか何人もの女性をはべらせている軟派な男性になった気分だが、確かにたった1人と付き合っていれば空いた時間にデートしようと思ってもなかなか合わないかもしれない。10人と付き合っていれば時間の都合と気分でデートに誘える機会は増える。読書家と軟派男は、アイドルタイムを縮小しているという意味では同じなのかもしれない。


 しかし、そう簡単に人間は変われない。つまみ食いをしろ、同時に付き合えと言われてもアワアワするシャイな方々へ、著者は本当に読むべき71冊をマンダラチャートの形式で紹介している。経営戦略やマーケティング、組織、リーダーシップなどジャンルを分け、読む順番も指示してくださっている。

 ここでそれらを紹介する気はないが、基本的には「古典」と言われる本だ。昨今も毎月のように新刊が出てくるビジネス書界隈だが、たいていの本は古典で触れられた内容を言い換えたり焼き直したり実例を足して紹介しているようだ。となると、元となる本を読んでおけばそれでOKである。


マンダラにあるような「名著」を読んでいて内容がわからないと、「自分がバカなのかもしれない」とか「自分の知識がないのかな」と考えてしまい、しっくりこない感じを抱えたまま歯をくいしばって読むような人がいます。しかし、これは大きな時間のロスです。
読んでいてどうもしっくりこない、面白くないと思ったら、まず10ページ飛ばしてみましょう。そこから読み始めてもやはりどうもしっくりこないと思ったら、迷わずさらに10ページ飛ばします。
それでもやはり面白くないと感じたら、今度は目次を眺めてみて、いまの自分にとってもっとも興味深そうなもの、関係のありそうな項目を選んでそこだけを読んでみます。それでもツマラナイと感じたら、その本とは「今回は縁がなかった」ということですから、いったん本棚に戻したほうがいいでしょう。
本を読んでいてどうも内容がしっくりこない、あるいはわからないと思うようであれば、それは決してあなたの責任ではありません。では著者の責任なのかというとそうとも言えません。本を読むというのは一種の対話ですから、読んでわからないということは「言葉が通じない」ということです。
言葉が通じない相手とは話してもムダなので、あなた自身が変化して、言葉が通じるようになったときに、再び読めばいいのです。

同 51-52頁


 難しい本にであったとき、無理やり文字を目で追うことがある。分からないことは悔しいし、名著であれば何とかして読み解きたいと思う。だが、結局すべてに目を通したところで理解できるわけではない。ボスと戦う前に近くの勝てる敵と戦いレベルアップが必要だ。毎月のように出てくる新刊ビジネス書をつまみ食いしつつレベルアップをしてボスと意思疎通が図れるように鍛える。

 なお紹介されている本の中古が無いかとアマゾンとメルカリで眺めてみたのだが、全く安くなっていない。先月の新刊のビジネス書よりも値下がり率が低いのだ。値を下げなくても売れるのだろう。中古市場の様子を見ても、紹介されている本は良著であると言えよう。ボス本を手に入れパラパラとめくり、勝てそうになかったら読みかけで置いておき、手頃な本から挑戦していこうと思う。

 さて付き合うべき本も紹介いただき、早速読もうかという本を開く前にまたも指南をいただく。


リベラルアーツに関連する書籍を読んでいく際にぜひとも意識していただきたいのが、原則4で説明した「読んだ内容は、遅かれ早かれ、すべて忘れる」という前提で読むことです。

同 100頁


 このことは多くの人が体感しているはずだ。愛読書としていつも読み返しているならいざ知らず、一度読んだビジネス書の内容をランダムに指さされ説明せよと言われてもモゴモゴしてしまう。

 「どうせ忘れるなら読むのムダじゃん」と開き直って読まないのも、今の私と比べれば五十歩百歩のそう悪くない選択肢かもしれない。だがもちろん、読んだ内容を活かすことが出来る人もいるのだ。


こういった知識をビジネスの世界における「生きた知恵」に転換するには、「抽象化」が必要になります。
抽象化とは、細かい要素を捨ててしまってミソを抜き出すこと、「要するに〇〇だ」とまとめてしまうこと。モノゴトがどのように動いているか、その仕組み=基本的なメカニズムを抜き出すことです。経済学の世界ではこれを「モデル化する」と言います。

同 103頁

この「抽象化」が癖になってくると、いくつかの副次的な効果が生まれます。代表的なのは「議論に強くなる」ということです。なぜなら、抽象化というのは論理そのものだからです。
「抽象化」を行わずに本を読んでいると、どういうことになるでしょう? 単なる「物知り」になるだけです。

同 106頁


 この抽象化するという行為は、本をふわーと読んでいてもできない。読んだ後に咀嚼して、自分の頭で考える必要がある。「いや考えるのも苦手なんだよね」という人に私がオススメするのは、誰か他の人に伝えることだ。

 「この本にこんなことが書いてあったよ」と書いてあったことをそのまま伝えると、それを聞いた人が「へぇー、こういうことかな」と会話を続けてくれる。「そうだね、てことはこうか」と返せば「だったらこういう時はこうなるのかな」と話を続けてくれるのだ。

 もちろん頭の中だけで出来る人はそれで良いのだが、自分の中のリトル〇〇を持っていない人は、誰かと話をすることをオススメする。話し相手もいない場合は、文字にするのもオススメだ。客観的になれる。最近ならchatGPTが話し相手になってくれるかもしれない。

 ともかく1冊本を読んだら考える時間を作るだけでも、多少はためになる読書になるだろう。

 さて、私に頑張れるのはここまでで、ここからはなかなか手が動かない。本に線を引く、という行為だ。
 

本というのは買ってきた時点では未完成な作品であり、読者と著者の対話を通じてさまざまな書き込みがなされることで作品として完成するものと考えています。

同 111頁


 これが苦手だ。資格試験のテキストであれば、そこは割り切ってゴリゴリ引いていく。だが普通のビジネス書は綺麗に読んで、読み終わったらメルカリで売ってしまおうという魂胆があり、折り目もつかないように気を付けて読もうとしてしまう。こういう考え方が読書=投資という頭になっていない証拠だろう。

 本への書き込みは著者の中ではかなり重要視されている。オススメの文房具からアンダーラインの引き方まで手厚いフォローが行き届いているのだ。

 「本は投資」「本は書き込むことで完成する」という考えがすんなり入る人は是非とも挑戦してほしい。私はまだその域に達しえない。以下を引用して自分への喝を入れておこう。


しかし、ここではっきりと断言しますが、本は「買って」「書き込み」をしないかぎり、知的生産に活用することはできません。要するに読書術というのは、本そのものをどう読むかということ以上に、読み終わった本をどのように活用するかという点が大事だということです。そして、手元に置いておくということを抜きにしては、本の活用は不可能だということです。

同 137頁


 ……まあともかく先へ進もう。

 線を引いて終わりではない。引いたところを見返し優先順位をつける。そして5か所程度、多くても9か所を選び読書ノート(オススメはエバーノートらしい)に転記する。そしてビジネスや実生活における「示唆」を書き出し、具体的なアクションなどもメモする。

 正直、面倒臭い。だが、この示唆というのは先ほどの頭の中での抽象化に近いことだろう。友達に本の内容を伝えて話し合うようなことをメモとして残す。そして内容に応じてタグ付けして積み重ねておけば、「昔こういうトピックの本を読んだな」と思った時に検索できるという仕組みだ。デジタル書籍ならコピペも出来るし、合理的で時間としてもそう多くはかからないだろう。

 タグ付けと検索ができるため本書ではエバーノートを薦めていた。私もとりあえずエバーノートをダウンロードしてみて、1日で止めた。有料サブスクを利用するほど本が読めないからだ。とりあえずアイフォンのメモ機能で試してみようと思い、できていない。こういう時にきちんとメモを確実に増やしていける人が、ダイエットに成功する人なのだろうと、夜中にシュークリームを食べながらしみじみと実感している。


 著者は本棚についてもアイデアを出してくれている。100冊以上の読みかけの本を用意する著者だ。本の管理は非常に重要である。そこで薦められているのがブックタワーである。



 本棚はいわゆる休火山。折に触れて参照したい、読み返したい本を置く場所にたいして、ブックタワーは活火山だという。これから読みたいと思っている本を置く場所だということだ。

 これについては同意できる。色んなところに読みかけの本が散っていた(といっても私の読みかけはせいぜい3,4冊)を本棚とは別の定位置に置いておくこと。

 これは速攻でネット購入した。おかげさまでベッドの横にブックタワーが鎮座し、幾冊かの本と、ハンドクリームやマッサージ器、ひよこのぬいぐるみやお手製の籠などが置かれた素敵なオブジェとなっている。

 ともかくも置いてある本を手に取りあとは読むだけなのだが、その手前にあるスマホからなかなか手が離せず今日も寝る時間を迎えるのだ。



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