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【essay】 花という名の猫のこと

運命的な出会いというのは、本人が思っているほどドラマチックなことではなく、聞かされる方はどこか胡散臭さを感じることも多いのだが、運命的な出会いというのはこの世に本当に存在するものなのだろうか?
それは人と人だけではなく、人と動物、人と物などでもいいのだが、この人に会うために私は生まれてきたとか、ドラマや映画や小説などで星の数ほど描かれてきている。果たしてそれは本当に運命だったのか、単なる偶然の重なりなのか、それは立証する方法がないから何とも言えない。
私と花の場合もそのどちらだったかはわからない。
でも運命であっても偶然であっても、出会ったしまったからには、一生一緒に生きるるのだと覚悟を決めている。

なぜ突然こんなことを書いているかというと、今日は花の誕生日だからだ。
花はうちで飼っている猫であるが、保護猫出身なので、ちゃんとした誕生日があるわけななくて、最初に獣医さんに診てもらった時に獣医さんがだいたいこのくらいでしょう。ということで決められた日である。
猫にとっては誕生日だの、何とか記念日だのは、「そんなもん知ったこっちゃないわ」という感じなのだろうが、今まであまり我が家の猫について書いてこなかったので、誕生日を機に書いてみようかと思った次第だ。

大阪には天神橋筋書店街という大きな商店街がある。その商店街のアーケードの屋根の上で保護された。その時はまだ花という名前もない生後 3 ヶ月ほどの小さなか弱い子猫だった。
保護したのは私の知人で、知人は花が保護された屋根が見えるところのマンションに住んでいた。
猫の鳴き声がするなあと思って、窓を開けてあたりを見回したら子猫が 1 匹親を探して鳴いていたらしい。親猫が近くにいるかもと思って、2〜3 日様子を見ていたけど、親猫や他の兄弟たちが姿を見せることはなくて、猫愛の強い彼女は、これは保護しなきゃと思っておやつを出しておびき寄せて、昆虫採集の時に使うような網でひょいとすくって保護し、すぐに動物病院に連れて行った。いろいろ検査をしてもらったら、幸い怪我とか病気もなくて健康な子猫だったようだ。

「この子は、シンメトリーないい顔しているからきっと美人猫になるよ」という動物病院のスタッフたちに大モテだったらしいが、知人は自分で飼ってあげようと思ったらしい。でも彼女のところには先住猫がいて、マンションの規定でペットは 1 匹までと決められているらしくて飼えなくて悩んでいた。
いろんな人に声をかけて里親を探していたらしいが、数日後巡り巡って私のところに『可愛い子猫がいるんだけど、飼わない?』というメールが来た。

その時の私は猫を飼いたいなという漠然とした気持ちはあったが、絶対欲しいっていう強い気持ちがあったわけではない。それでも「一応写真だけでも見て」と、写メが送られてきた。私はその写真を見てびっくりした。
正確にはびっくりというより、少しぞくっとして鳥肌が立つような感じがあった。というのは、この話が私のところに来る3 日ほど前に、私は猫が 3 匹出てくる夢を見た。細かい内容はちょっと忘れてしまったが、3 匹の猫と遊んでる夢だった。そのうちの 1 匹は黒猫で、1 匹はアメリカンショートヘア、そしてもう 1 匹が白黒の 八割猫だった。
その知人から送られてきた写真に写っていた猫は、夢の中に出てきた白黒の 八割れ猫とそっくりだった。
目の色、耳の立っている感じ、白と黒の模様の配分、尻尾が途中で切れている鍵尻尾も一緒。同じ猫と言っても過言ではないほどそっくりだった。
私はゾクゾクしながら夫にそのことを言った。
「何かの縁だね、、うちで引き取られるべくして存在した猫なのかも」
と、夫は言った。
その夫の言葉を聞いて、もう何も考えずとっさに『私引き取ります』と、メールで返事した。
数日後、その知人の家に猫を引き取りに行った。
知人にもその夢の話をしたら、「それ何かの縁だね」と、夫と同じようなことを言っていた。

偶然かもしれないし、何か惹きつけられる縁があったのかもしれない。
それははっきりはわからない。というか、誰に聞いてもわからないことだ。


保護された時の花



我が家にやってきたこの子猫は『花』という名前をつけられた。
母猫に捨てられたのか、はぐれたのか?なぜ一匹だけで鳴いていたのかはいまだに不明ではあるが、子猫ながらにその時に感じていた不安とか寂しさを癒してやりたくて、精一杯の愛情を注いで甘やかして育てた。
そのせいもあり、女王様気取りのわがまま猫に育った。
今は、自分一人で大きくなったような顔をして生きている。
その都度「あなたはね。いろんな人の助けがあってここまで育ったのよ」と、言い聞かせる。
でも花はいつも「はぁ?」という顔してこちらを見ている。
保護した知人には、ことあるごとに写真を送っている。
「あのひょろひょろしてた子がね、まぁ貫禄出てきたわね』と、知人は笑っている。
当初からお世話になっている動物病院の先生は、
「猫なんてね、もう可愛い可愛いって言いながら育てればいいんですよ」っておっしゃっている。
そんな花も 8 歳、そろそろシニア猫の仲間入りとなる。いろいろと体力的にも問題が出てくる。
でも何があっても、おばあちゃん猫になっても女王様気分で私を見下しているだろう。まぁそれはそれで、私としても「かかって来い」という感じで迎えてやろうと思っている。
そして、こんな花もいつかはこの世から旅立っていく。
生き物は人間も含めてそういう運命にある。
母猫に甘えることはできなかったけど、兄弟たちとも遊べなかったけど、この家に貰われてきて良かった…と、少しでも思ってくれればと思うが、まぁ動物の気持ちなんて人間がわかるはずもないのだ。

猫だけではなく、犬でも鳥でもウサギでも、その他のいろんな動物の数だけ飼い主との関係性や、思いや、エピソードがあるのだろう。
運命か、偶然か、成り行きか...出会いのパターンもいろいろあると思うが、
最後にお互いが、「幸せだったなぁ」と思える付き合いができたらいいな。

花、誕生日おめでとう。
今、幸せですか?

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