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映画 『川っぺりムコリッタ』

ずっと観たかった映画「川っぺりムコリッタ」をやっと観た。
きっと極上の幸せが待っているだろうと思いながら観た。
荻上直子監督・脚本となれば、私の中であるイメージが浮かび上がる。それは決して悪いイメージではなくて「辛くても悲しくても決してあなたを裏切らないよ〜」という包み込むような優しさが漂うイメージだ。
それが確信になった。確かになった。

あらすじとしては…
山田(松山ケンイチ)は北陸にある水産加工会社のイカの塩辛を作る職を見つけて働きにやってくる。その工場の社長に紹介された築50年の古いアパート「ハイツ ムコリッタ」で暮らし始める。ある事情を抱えている山田は人とあまり関わりを持たないようにひっそりと暮らすことを望んでいるが、隣の部屋に住む島田(ムロツヨシ)が「風呂を貸してくれ」と突然やってきてから山田の生活は否応なしに一変してしまう。
それからこのアパートに住む人たちの人生が浮き彫りにされていく。個性的でユニークではあるけど、みんなギリギリの崖っぷちを生きている人たち。その人たちとの交流で山田は徐々に変わっていく。

ここに登場するギリギリの崖っぷちの人々を暖かく包み込むような映画で、それぞれがそれぞれの事情を抱えて、それぞれの方法で何とか生きている姿はほんとうに愛おしい。
贅沢な食べ物ではないが、炊き立てごはんと味噌汁と漬物、そして山田が工場からもらってくるイカの塩辛。それだけの食事でもこんなに人は幸せになれるのだと思わせてくれる。
荻上直子監督の作品にはいつも美味しいものがたくさん出てくるのだけど、今回は、料理の基本の基本のようなごはんでその豊かさを出してらっしゃる。そんなごはんを食べるごとに、一切笑顔など見せなかった山田が、徐々に笑うようになる。それはご飯のせいだけではないのだが、一緒にごはんを食べる相手がいるというだけで人は笑顔になるのだなぁと思った。

いろんな優しさのある映画だ。
悲しもみ苦しみもあるけど、あたたかい。
みんないい人。いい人っぽくないけどいい人たちだった。
観て良かった。
極上の幸せだった。

ちなみに…
ムコリッタとは、
『牟呼栗多』と書き、仏教における時間の単位のひとつ。
1日(24時間)の1/30(48分)のこと。
よく言う「刹那」はその最小単位。


監督・脚本・原作:荻上直子
出演:松山ケンイチ  ムロツヨシ  満島ひかり  江口のりこ  吉岡秀隆  
        緒方直人  江本佑  笹野高史  薬師丸ひろこ  田中美佐子  他


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