ドラマ 『季節のない街』
ドラマ『季節のない街』全10話見終わった。
大人の切ないおとぎ話である。
みんな、愛おしい存在だった。
ひとつひとつのエピソードだけを拾っていくと、それはよくある話ではあるが、宮藤官九郎の手によって人間の根底にあるさまざまな思いが、これでもかと見る者に訴えてくる。
このドラマの原作になっているのは山本周五郎の同名小説『季節のない街』で、以前は黒澤明監督がこの原作を元に映画『どですかでん』(1970年)を撮っている。
もちろん今回のドラマは時代を現代に置き換えて作られているのだが、裕福とは言えないその日暮らしの人々のさまざまな人間模様を描いているという点は同じだ。
単なる訳ありではなく訳ありすぎるほどある人間たちがこの仮設住宅には住んでいる。底辺での生活とも言えるであろう日々の暮らしの中に、愉快がある。悲しみがある。切なさがある。恋がある。虚しさ、やるせなさ、能天気さ、下品さ、裏切り、友情、優しさ…そんなものがみんなある。
一匹のネコや仮設住宅に住むことさえできないホームレスにだってちゃんと人格がある。馬鹿がいる。利口がいる。恥ずかしさがある、犯罪がある。
どこもかしこも貧乏だらけ…でも楽しいがある。
人間の生活、というか本性ってこんな感じなんじゃないかなと思う。
表向きは上品にかっこよくSNSなどに投稿されている人もふと気を抜けば、
汚れた手を持っているような気がする。
ここに住む人たちは、SNSで見栄を張ることもせずその気持ちのまんまで生きている。だからドラマを見終わった後も彼らを愛おしく思うのだろう。
人生の教訓とか導きとかそういうお行儀の良いことは表現されていない。
見て少しでも人間って切ないけど素敵な生き物だなと思えればそれで良いと思う。
余談だが、
宮藤官九郎監督であるからして、劇団『大人計画』の役者さんが数人出てらっしゃる。水を得た魚のようにピチピチッとキレの良い演技をされている。
大人計画ファンとしてもそこも見逃せない。
あぁ、楽しかった。
原作/山本周五郎「季節のない街」
企画・監督・脚本/宮藤官九郎
出演/池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知、片桐はいり、坂井真紀、皆川猿時、前田敦子、三浦透子、濱田岳、増子直純、荒川良々、MEGUMI、高橋メアリージュン ほか
ディズニープラス「スター」で8月9日(水)より全10話一挙独占配信
読んでいただきありがとうございます。 書くこと、読むこと、考えること... これからも精進します。