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”議論のための議論”が増えた理由

この頃つとに”議論のための議論”が増えたと感じています。昆虫食だとかトランスジェンダーについて、あるいは仕事をしない国会議員について。
それぞれ緻密に考えていくべき問題なのは承知していますが、どうも議論を”戦わす”ことに重きが置かれており、話が進まず喧嘩ばかりしている様相です。

結論からいうと、広告収益モデルが変わらない限りこの状況は続くと考えられます。いわゆる炎上商法というやつです。


動画サイトの収益モデル

YouTubeをはじめ、InstagramやTikTokの収益化についてざっくり紹介していきます。
まずYouTubeについては一定数以上のフォロワーを獲得したアカウントについて、動画再生数に応じて収益が発生します。投げ銭やスパチャも同様です。


Instagramも似たようなもので、一定数以上のフォロワーに到達したアカウントについてギフティング機能が追加されます。いわゆる投げ銭ですね。
さらに多くのフォロワーを獲得したならアフィリエイト広告がついたりして収益につながります。
TikTokも基本は同じような仕組みです。


「フォロワー数が増えれば収入になる」だし、「すげーフォロワー数になったら暮らしていける」ということです。



アカウント洗浄とフォロワー購入

アカウント洗浄をご存じでしょうか。たとえばフォロワー数千人に到達するまでは炎上するようなコンテンツを配信して、目標に到達したら投稿を全削除してアカウント名も変更して好きなことを始める。好きなことの内容で伸びるかどうかはともかく、一応これでYouTubeアカウントは収益化できます。他の動画サービスでも似たようなことはできますね。
あるいはフォロワーを購入できる業者もあります。Instagramなどはフォロワー数が重要なので、フォロワーを買って活動を始める人もいるみたいですね。

こういった手法を使うことで、わりと誰でも小遣い稼ぎができるようになっています。少し前のブロガーを副業にしよう的な感じですね。それよりもっと簡単といえば簡単ですし、一度始めれば(仕事と思えば)そんなに大変なことでもないでしょう。


燃えてるトピックスは”儲かる”

ネット上で「オススメ」されるコンテンツは、視聴している人がどんな動画やコンテンツを好むのかによって変化します。平和なところでいくと、たとえば釣りの動画を視聴したり釣具を買ったりしていると「オススメ」は釣り動画になっていきます。ターゲットマーケティングというやつですね。

この機能は商品を売るためだけのものではありません。
身に危険を感じるような話題、事件、スキャンダルをチェックする人には、それに近いコンテンツを提供するような仕組みになっています。
(悪い意味で)炎上するコンテンツは共通して『危険』な要素を含んでいます。回転寿司が不衛生であること、女子トイレに男性が侵入すること、共用トイレが盗撮されること、アレルギー、交通事故、災害、詐欺や搾取などなど、身に降りかかって欲しくないことについて、人間は注意を払うようにできています。

このような不愉快・不快なコンテンツをチェックすると、そのようなネガティブなコンテンツを「オススメ」されます。それらはやはり注意を払いたいものなので、次から次へとチェックし続けることになります。

不愉快で不快なコンテンツは、そのようにインプレッションを増やしていくのです。
投稿側からしたら、最も儲かるコンテンツとして収益に貢献してくれます。投稿者にとってあまり興味のないことであっても、タグ付けして投稿すれば再生数やインプレッションが伸びるので、炎上コンテンツはドル箱として延々と投稿されていくのです。



”#議論”は燃えやすい

世の中、白黒はっきりしない問題は沢山あります。貧困と人権の問題なんかはその最たるもので、あっちの意見とこっちの意見が正反対になったりします。そもそも議論とはそういうものですから、答えが出ないままずっとコンテンツを提供し続けることができる。議論は、長い期間炎上できる格好のネタなのです。

内容が不快であればあるほど、人々は注意を払わねばなりません。
「答えがない」から、よりインプレッションを稼げる尖った意見を打ち出した方が儲かるだろうと、変な方向に議論が進んでいきます。なんなら本筋と関係ない話でもハッシュタグがついていれば人が踏んでいくようになりますから、投稿者は食らいついていきます。内容のクォリティはあまり関係ないわけです。

このような不愉快・不快を利用した収益モデルががある限り”議論のための議論”は繰り返されるのだと思います。
炎上商法が、本当に商売になっているという悲しい現実。議論が進まない。



変化の兆しはある

ただ、これらのダメな流れは徐々に変化していくと予想しています。

YouTubeやInstagramなどは投稿者収益が低下しつつあり、遠からずダメYouTuberは儲からなくなりそうです。
(僕のいうダメYouTuberというのは「○○の兄です」とかいう見出しで全然関係ない話をするような奴らです。フォロワー数が少なくても素敵なYouTuberはたくさんいます)

また#議論についても、ChatGPTなどの文書作成AIが登場したことにより「議論の自動生成」が発生すると予測されます。これによりネット上の議論が希釈されて意味をなさなくなり、あるいは「あとはAIが決めればいいよね」という状況になることで”議論のための議論”は雲散霧消するでしょう。

あるいはNFTが広く浸透して、炎上商法よりも儲かるとなればそちらにシフトしていくのではないでしょうか。もっとも僕は悲観的で、NFTでも不愉快・不快なコンテンツが儲かるようになると想像してしまうのですが。



”議論のための議論”が幅をきかせて、本当に議論しなきゃいけない問題が軽視されることが問題なのです。不愉快・不快なコンテンツの視聴閲覧を控えることは難しいかもしれませんが、できるだけ本質を見誤らないよう個々で勉強していくしかないかもしれませんね。



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