ベッドタウン

緑周と離婚後、那生と2人で暮らす栞奈。 2人と離れて暮らしつつも、変わらず那生の父親で…

ベッドタウン

緑周と離婚後、那生と2人で暮らす栞奈。 2人と離れて暮らしつつも、変わらず那生の父親で居続ける緑周。 緑周の妹と結婚した僕は義弟なのだけど、同い年なのもあって友達のような仲。 双子のような紺生と那生。 ベッドタウンに暮らす人々の、いろいろな物語。

最近の記事

ソウルフード

今回の帰省で、那生を連れて行きたいところの1つに、スガキヤがあった。 スガキヤは東海地方のソウルフードで、緑周と佳依は、子供の頃から、数えきれないくらい食べてきた。 那生がいろんなお店で、お子様ラーメンセットみたいなのを、1人で食べ切れるようになってきたので、今回は…と思っていたのだ。 スガキヤは、ほとんどがフードコートに入っているので、まずは席を取りに行く。 「なっちゃん、どこがいい?」と聞くと、 「ん〜と〜、ここ〜」と、窓が大きく円弧になった、外の見える席を選んだ。

    • うんち記念日

      紺生は、寝る前の読み聞かせで内容を覚えて、空で絵本を読んだり、ひらがなや数字を覚えるのも早かった。 絵や工作も、僕らが「同じ年齢のとき、こんなクオリティの作れなかったよね〜?!」と圧倒されるものばかり見せてくれる。 そんな紺生なのだが、もうすぐ6歳になる今でも、おしっこはトイレでできるのに、うんちはトイレでしたがらず、催した際は自分で紙パンに履き替え、まるで猫のようにソファーやカーテンの後ろに隠れてするのだ。 僕も妻も「トイトレはしたけど、こういうのは急かしたりしたら、

      • こども用Suica

        緑周は、栞奈の了承のうえ、夏休みやGWに、よく那生を連れて岐阜の実家に帰省することがあった。 コロナ禍のころは、E席を取れば、D席も空いていたから、本当は膝のうえじゃないといけないんだけど、未就学児だからいいか、と大人の席だけ取って、実際は悠々と新幹線の時間を過ごしていた。 今年のGWも、栞奈の育児疲れを癒やすというKPIも兼ねて、緑周と那生は岐阜の家に遊びに行くことになった。 緑周「コロナ明けたじゃん?」 栞奈「うん」 緑周「新幹線、めっちゃ混んでんのよ」 栞奈

        • あなたもすごいね

          緑周「なっちゃん、すごいね!」 那生「あのさ、『すごいね』って言われて『そんなことないよ』とか言ったらだめだよね?」 緑周「あ〜! うんうん! じゃあ…なんて言うの?」 那生「『あなたもすごいね』って言うんだよ」

        ソウルフード

          はじめてのモテ期

          那生は、赤ちゃんの頃から、行く先々で「かわいいね〜」と言われることが多かった。 5才になった今でも「女の子?」と言われることもあり、緑周は、もしも我が子じゃなかったとしても、どこかでこの子を見かけたら「かわいい」と思わずにいられただろうか?と思う。 保育園では、同い年のさゆきちゃんという女の子と仲良しで、男の子同士で遊ぶ時もあるけど、公開日誌には、さゆきちゃんと睦まじく過ごしている様子が写っている日もある。 那生とさゆきちゃんは、おとなになったら結婚するって言い合ってる

          はじめてのモテ期

          うしさんみたいに

          紺生「ねぇパパ〜」 悠助「ん〜?」 紺生「きのうのおひるさ〜、やきにくやさん行ったじゃ〜ん?」 悠助「うん、行ったね〜!」 紺生「そしたらぼく〜、おうちにかえってから、げっぷでちゃったんだけどね?」 悠助「うん〜」 紺生「げっぷ…おいしかったから、もういっかいたべたの」 悠助「え〜?」 紺生「うしさんみたいに〜」

          うしさんみたいに

          造花

          12時過ぎ。 病院の待合室、南の窓。 まぶしいぐらいの日当たりのなかで、小ぶりな観葉植物がたっぷりと光を浴びていた。 なんだか愛おしくなり、もう少し近づいてみた。 するとその植物は、造花だった。 造花が、気持ちよさそうなぐらい光を浴びている。 しかもここに置いてあるということは、天気の良い日はいつもこうして光を浴びているのだろう。 造花とわかってからも、それは芝生を駆けまわる子どものように見えた。 もしかして、造花が育つことってあるんだろうか。

          息子の頭

          夜、息子が眠りに就いて、しばらくしてからのこと。 僕は、寝てる息子の寝息を聞き、 そっと手や頬に触れたりして、身体をくっつけ息子の体温を感じ、 自分が就寝する前の最後に、息子の頭のにおいを嗅ぐ。 いつも思うんだけど、そのにおいは、 自分の知ってるシャンプーで、自分が洗ったとは思えないような、いいにおいなのだ。

          パラレルキャリア

          こないだ買ってきた&Premium。 「おもしろかったよ〜」と妻にすすめると、 「ほんとだ、ありがとう、見てみる〜」とパラパラめくっていた。 数日後、なんとなしに再度手に取ると、妻の読みかけのページにオードリーのショップカードが挟まっていた。 「佳依ちゃんてさ、ショップカード栞にするよね〜」 「うん、かわいいショップカードがあるともらっちゃうんだけどね、見たあとにポイするにはまだ綺麗すぎるじゃん?」 「うん」 「だから、なんていうか…パラレルキャリア?」 「あ!

          パラレルキャリア

          ポテンシャル

          実家が自宅から自転車で15分ぐらいなので、 母にスマホの使い方を聞かれて行ったり、逆に息子をちょっと見ててもらって妻と出かけることもある。 今日は「QRコードのアプリが使えなくなった」とのことで、行ってみたら、ただ戻るボタンを押したら使えるようになるだけだったんだけど、 ストーブがあったかかったので、少しだけ寝転がってた。 そしたら視界に入ったのが、川崎屋のプラスチックのグレーの買い物かご。 赤いKのロゴに「川崎屋」とプリントされてる。 その上から黒い太マジックで「

          スローモーション

          栞奈「あした出社かぁ〜」 那生「ママ会社行くの? じゃあさ、電車から手振ってね。ぼくも見つけるから!」 栞奈「え〜♡ わかった〜! でも、保育園から線路までちょっと離れてるけど、ママいるのわかるかな〜?」 那生「わかるよ〜!」 栞奈「ほんと〜!じゃあ手振るからね!」 那生「うん!」 久しぶりの出社。 電車に乗ると、空いてる席はあったけど、 息子との約束を思い出し、手すりにつかまって、ドアの前に立つ。 でも、保育園が見えるのってほんの一瞬だし、あんな大勢の子の中か

          スローモーション

          家のにおい

          「家のにおいってあるよね?」 「えっ、家のにおい?」 「うん、その子 その子で、違うおうちで暮らしてて、その、それぞれのにおいがあるでしょ? ちっくんちのにおいもあるよ、なんか甘めのいいにおい」 小学生のころ、初めてそんな会話を友だちとして、 不思議な気持ちになって、 それ以降も、大人になっても何度も、家のにおいの話をしたり、これはたぶんこの人んちのにおいなんだなぁ…と想像することが何度もあった。 緑周は、2021年に栞奈と離婚をして、それ以降、栞奈と息子の那生が2

          桜の寿命

          妻、佳依。 旧姓:渡井 その兄、渡井 緑周 僕と同い年で、好きな物も似てたので、 自然と友だちのような感じになった。 先日、彼が1人で住むマンションに遊びに行くと、彼は言った。 「だって1日500歩しか歩いてないんだよ?」 「いや、外出なくても1,000は行くっしょ」 僕が返す。 緑周「ゆうくん、iPhoneのこれ見てないっしょ? ほら、この758歩は、セブンイレブン行った日。 コロナ前から8kgも太っちゃったのよ…」 僕「たしかに…雰囲気かわったか〜」 緑周「

          ドMではない

          妻が言った 「理由が聞いてみたかっただけなんだけどね… どうして私のLINEよりも、どこの誰かわかんない女の人のコメント先に返したの?」 僕はこの感じを味わいたくて、 ときどき、わざとこのぐらいの悪いことをする

          all fast

          新しいファーストフード店の参入か? 入ってみると、注文カウンターにはスタッフはおらず、代わりにあるのはiPad。 iPadを見てみると、ホーム画面に並ぶアイコンは、 マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキー、フレッシュネス、ロッテリア、クアアイナ、ミスタードーナツ、Soup Stock Tokyo… 試しにマクドナルドのアイコンを押し、単品でポテトをカートに入れる。 なるほど…要領をつかみ、次にフレッシュネスのアイコンを押し、ベーコンオムレツバーガーをカートへ。 同様に、

          flower

          僕は時々、妻に花を買って帰る いつも行く花屋もあるし、通りすがりに見つけた花屋のときもある その日たまたま通りかかった花屋は、とてもこじんまりとしていて、フリーハンドみたいな白い壁と、なんだか普通の花屋と違う感じがして、とおもったときには、もうお店の中だった 普通の花屋と違う感じがしたのは、いろんな種類の花があるのに、ぜんぶ赤い花だったからだとおもう いつもそうなのか、そういう日があったりするのかはわからなかったけど、なんとなく妻に似ているような気がした花を選んだ お