flower

僕は時々、妻に花を買って帰る
いつも行く花屋もあるし、通りすがりに見つけた花屋のときもある

その日たまたま通りかかった花屋は、とてもこじんまりとしていて、フリーハンドみたいな白い壁と、なんだか普通の花屋と違う感じがして、とおもったときには、もうお店の中だった

普通の花屋と違う感じがしたのは、いろんな種類の花があるのに、ぜんぶ赤い花だったからだとおもう

いつもそうなのか、そういう日があったりするのかはわからなかったけど、なんとなく妻に似ているような気がした花を選んだ

お会計が終わり「ありがとうございます」と言うと、「お花をお買い上げくださった方に、無料でコーヒーお淹れしてるのですが、もしよろしければ」と左のドアを指された

フリーハンドみたいな白い壁、のような白いドアを開けると、花屋よりも広いスペースに、コーヒーやケーキを愉しむ人たちがいた

よく見ると、背中に聖書を置いておけるポケットが付いているチャーチチェアのように、カフェの椅子には、買った花を挿しておけるポケットが付いていた

コーヒーはとても美味しく、他のお客さんたちも、みんな心地よさそうだった

改めて「ありがとうございました」と言い店を出ると、カフェは花屋と同じ、フリーハンドみたいな白い壁で繋がっていた

大きな一枚窓の枠が額縁になっていて、その下に、美術館のキャプションのように、店名「flower」や営業時間が書かれていた

通りを渡って振り返ると、まるで、そこにいる全員が赤い花を携えてる一枚の絵のようだった

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