スローモーション

栞奈かんな「あした出社かぁ〜」

那生なつき「ママ会社行くの? じゃあさ、電車から手振ってね。ぼくも見つけるから!」

栞奈「え〜♡ わかった〜! でも、保育園から線路までちょっと離れてるけど、ママいるのわかるかな〜?」

那生「わかるよ〜!」

栞奈「ほんと〜!じゃあ手振るからね!」

那生「うん!」

久しぶりの出社。
電車に乗ると、空いてる席はあったけど、
息子との約束を思い出し、手すりにつかまって、ドアの前に立つ。

でも、保育園が見えるのってほんの一瞬だし、あんな大勢の子の中から息子を見つけられることなんてあるんだろうか。

いつもただなんとなく、ほんの一瞬見える保育園をぼんやり見てたのだけど、今日はもしかしたら息子がこっちを見て、私のことを探してるかもしれない。
そう思って、よ〜く見てみた。

そしたら、私のことは探してなかったけど、笑いながら走ってる息子がいた、一瞬みえた。

「見えるんだ…!」
あんな一瞬の間に、息子のことを見つけられた驚きと、約束を忘れて元気に遊んでる息子が愛おしかった。

今度から、出社の日は、こうして那生のことを探してみよう、そう思う栞奈なのであった。

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