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8月21日 #アジアベイビーシアターミーティング レポ5日目【やりたい表現への追求をもつ】

5日目。子育てセンターでの公演を行いました。
19日からクリエーションがはじまり、20日でゲネプロ、21日の今日に公演というかなり急ピッチなスケジュールでしたが、とてもすばらしい公演になりました。
コロナで公演を行うかは議論となりましたが、クリエーションを通して参加者同士の距離がきゅっと縮まったり、乳幼児を対象に演劇を行うということが感覚的理解につながったりと、とても大きな収穫がありました。

クリエーションでは、城崎散策からブレストし、そこで上がった案をもとに動きを構成していくという流れで進められました。
大まかな構想は19日につくられ、20日で上演の流れが決まり、21日で子育てセンターの空間の力を借りながら調整しました。本番でいざ子どもたちを目の前にすると、参加者のみなさんの演技にぐっとエンジンがかかったように感じました。客席には数人の赤ちゃんがいて、なかにはハイハイして動き回っている子もいました。どこにどう意識を向けなければならないかという感覚のモードが一気に変化したように思いました。

作品名は「カタカタ、チャプチャプ、ドンドコドン—コウちゃんの一日」というものです。城崎の音、オノマトペ、コウノトリをテーマに創作した結果生まれた作品です。

城崎に来てから知ったことですが、コウノトリで有名な地域でもあるそうです。コウノトリは子どもを授かるメタファーとしても語られることから、乳幼児演劇のテーマとして取り入れることになりました。コウノトリがくちばしを合わせることで音を出すという話から、伸ばした腕の先の両手で手を叩くという身ぶりをコウノトリを表現する演技としました。この身ぶりはテクニカルスタッフが小さいころから何気なくやっていたクセからヒントを得ました。

城崎の印象として、駅からアートセンターまでの道のり沿いに小川が流れていること、それから何より温泉街であることから、水を扱うことになりました。水は子どもたちが興味をもつ素材でもあり、牛乳瓶に入れた水をガラス皿に、それをまた大きな桶にというふうに、水を注ぐという動きだけでも、かなり探究することができました。
水が流れ落ちるということ、そのときに発生する音、これらが現象としてとても興味深いのです。

城崎のイメージを列挙したあと、それを整理するための何かが必要だという話になったとき、城崎の一日として朝・昼・夜という時間軸に沿って整理することはできないかという案がありました。
この時間のドラマトゥルギーは、子育てセンターの空間と非常にマッチすることになりました。子育てセンターはビルの7階にあり、窓からは豊岡の空が見えます。上演中はずっと窓のカーテンが閉められていますが、最後の最後でカーテンが開けられるのです。これまで朝・昼・夜の出来事が演じられて、最後に朝に戻ってくるわけですが、そのときに実際の豊岡の明るい空を目の当たりにすることになります。
カーテンを開けられ、外の光が差し込んでくることが、どれだけ劇的なのかを、子どもたちの反応によって思い出すことができました。

公演は、0-1才半を対象としたものが午前11時から、1才半-3才を対象としたものが14時からありました。上演はお客さんが異なることから毎回異なるものになりますが、乳幼児演劇ではそれが顕著になるのかもしれません。
とりわけ観客の年齢層が変われば、上演の雰囲気は大きく変化します。午前の部では、赤ちゃんの反応を見つつ、詩的な空間の展開に浸ることができました。午後の部では、子どもたちがより動き回ることから、子どもたちとのインタラクティブな演技になり、盛り上がりました。どちらもそれぞれに優れた質がありました。

公演後のふりかえりでは、まず上演の進行に関する議論をしていましたが、しだいに乳幼児演劇の実践をどういう狙いで進めたいかという話になりました。
これまでの自己紹介・実践報告パートでは、教育の問題、社会の問題、地域の問題の解決という文脈の上に乳幼児演劇を語ることが多かったわけですが、果たして自分がやりたいのはそこなのかという問いを考えることになりました。実際に乳幼児演劇の活動を続けていくためには、そうした話が合った方が通じやすいのかもしれませんが、そこに合わせすぎてしまうと、疲弊してしまいます。これは昨日の若旦那の話とも通じるかもしれません。
一方では分かりやすいロジックをもちつつ、もう一方では自分のやりたい表現への追求をもつ。この両輪が大事なのです。

乳幼児演劇を考える上で、社会的背景について考えることは重要です。しかし、そこに傾きすぎていないか、自分たちがやりたいことは何なのかという問いの転換が起こったのが印象的でした。
個人的には、乳幼児演劇の社会的教育的意義についての議論をしつつも、演劇という芸術においての乳幼児演劇の意義についての議論も増えていけばいいなと思います。

美味しそうだった2日目の夕食
8/19 #夕食
#煮込みハンバーグ
#キャベツとコーンの味噌バター
#ニラのカレーツナマヨ
#大根と椎茸のみそ汁

アジアベイビーシアターミーティングとは?

アジアの国々で、乳幼児を対象とした舞台芸術(=ベイビーシアター)に関わる人たちの継続的なネットワークづくりを目的として、国を超え、知識・経験を共有し、国内外で作品を製作し発表できる環境づくりを目的として開催。
世界の各地には、ベイビーシアターのネットワーク組織があり、ファンドレイジングをはじめとした相互支援の仕組みがあります。アジアで個々に活動を続ける個人や団体が繋がる場を目指して、今回アジア初の開催をBEBERICAの企画制作で行いました。

期間:2020年8月17(月)〜8月24日(月)
会場:城崎国際アートセンター Kinosaki International Arts Center
http://kiac.jp/jp/


文:仁科 太一

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