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ホウレンソウが苦手な兄

うちの兄は報告、連絡、相談が苦手で、誰にも相談をしないでいろいろな決断をするタイプです。
6月のある晴れた昼下がりに、母が慌てて電話をかけてきました。
「お兄ちゃんの件で報告があります!良い話と悪い話、どっちから聞きたい?」
珍しくもったいぶるなと思いつつ「じゃあ、良い話から」というと
「実はね、お兄ちゃんから今度結婚しますと報告がありました!」…。
「いやいや、兄貴、もうすでに結婚してるよね!10年以上も!」
兄は比較的若い頃に結婚をしながらも子供がいない家庭でした。
「そう、悪い話というのは、勝手に離婚をしていたことなのよ!」
母の話によると、5月の母の日までは前の奥さんから母の日のプレゼントが届いていたので、結婚していたのだろうとの予測、とはいえ、その翌月に他の女性と結婚式をしたい旨の相談が兄からあったのだ。しかも、10月には結婚式を実施したいとのこと。ちなみに授かり婚では無いようです。
家族の中では、きっと交際が重なっていた不倫期間があり、よほど急かされて籍を入れるのだろうなと予測するも、兄はそれをフルに否定、
「たまたま別れて、たまたま出会って、たまたま結婚することになっただけだ」と力説するので、なんとなく、モヤっとしながらも家族もその方向で納得することにしました。

 相手が職場の名古屋の女性(初婚)だったこともあり、バツイチとは思えないようなかなり豪華な披露宴を9月に実施したのですが、プロ司会の方から
「えー、ここで特別にインタビューをさせて頂きたいと思います!新婦さま、今日は楽しい1日ですか?それとも疲れる1日ですか?」
「うーん?楽しいけど疲れる1日です!」
「ありがとうございます!では、新郎さんの好きなところはどこですか?」
「えーと、すごく優しいところです!」
「なるほど、熱々ですね、では嫌いなところなんてありますか?」
「はい!優柔不断なところです!」
即答。これだけ迷いが一切感じられない強めの「優柔不断なところです!」を初めて聞きました。断定です。これが断定ですの見本です、というくらいの言い切りでした。
いやいやいやいや、5月に離婚をたまたまして、たまたま6月に出会い、超短期間で結婚を決め、親に連絡をし、10月の挙式を段取りする兄が優柔不断だったら、地球上から優柔不断はいなくなりますよ。決断の速さはイーロンマスク以上だったはずです。
今回の突発的な兄の行動は、だいぶ長い期間、平行して彼女と交際していたのではないかという疑問が確信に変わりました。
我が家族全体で大きく頷き、親族席が一体感で覆われた瞬間でした。
 やるな兄貴。でも、次はもうすんなよ。

後日談ですが、母から「お兄ちゃんの子供、産まれている頃なんだけど連絡が全くないのよ。あんた聞いてくない?」と連絡がありました。
兄貴!お袋が心配してるよ、子供産まれたの?と確認の電話をすると、少し憤ったような雰囲気で「産まれてるよ!ちゃんと連絡もしたし!」とのこと
え?そりゃすまん、いつ連絡したの?入れ違い?と確認をすると「8ヶ月前にちゃんと報告しました。」とのこと。
兄貴、それは出産の報告ではなく、妊娠の報告だ。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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