どっちでもいいこと

忙しさにかまけて、恩師から随分長く預かってしまっていた絵画の撮影をやっと終えて納品できました。

ヘタクソながら一応、絵画畑の落ちこぼれなので、
卒業後に恩師からこうして認めてもらえるのは本当に嬉しい事です。

先生からするとガラス入り額装からキャンバスを外さずに撮影できるというだけで驚いてくれて評価を高めてくれているのですが
これ結構信頼度が大きく変わるポイントだなとよく実感します。
と言っても、プロ名乗る人なら特に大した話ではないので今回は割愛。
知りたい人は直接聞いてくださいw

で、その額装された絵画というのは、「黄袋」と呼ばれる内袋に入れてから
段ボールの「差し箱」に収納し、「文化鋲」つまり割りピンにタコ糸を巻きつけて蓋を留めます。

さて、この収納箱に額縁を入れる時に「絵画の面をどちらに向けるか」という疑問が湧きます。
気になって少し調べたり、普段注意して見てたんですが
美術画廊さんなんかが代々そうしている、というのはあるみたいですが、
どうも「これ!」と言った正解や決まりはないようなんですね。
実際、この恩師の額縁も向きはバラバラに入っていました。

つまりは別にどっちでもいいのです。

ちなみに私は割りピンがついてる面を絵画面に揃えて入れました。
理由は、感覚的に壁などに立て掛けた時に表に向くのがそちらだからです。

はい、それもどっちでもいい理由です。

こういう事を言っていると、非常に面倒くさい奴だと思われるのをヒシヒシと感じるのですが
ただ個人的には、この「どっちでもいい」事を、
だから「どうでもいい」事と受け止めてしまうのは、
写真を仕事にする人間としてどうなのかなと常々疑問に思うのです。

どっちでもいいけど、そこに自分で何らかの理由を持って選ぶ事が結構大切なんじゃないかなと思うのです。

先日も日本画の先生と作品撮影をしながら、わずか0.1ミクロン程の厚みに過ぎない金箔の金色について深く話しました。
これもともすれば「金色になりさえすればどっちでもいい」と言われる事なんだと思います。
でもそこで「金箔」という物質にするのか「金色の空間」にするのか
そういう所で立ち止まれないようだったら、その写真はただの薄っぺらい1枚になってしまうような気がするのです。

逆に「プロの目から見てどちらのお皿がいいですかね」とケーキの撮影中にいきなり聞かれた事がありますが、その時点では正直こっちもサイズさえ合ってればどっちでもいいと思いました。
ただそこで、これはファミリー向けなのかとか、価格帯は高級だったりするのかなど、お客様自身にも改めて向き合って頂いて、その上で助言をして一緒に選ぶというのは、ブランディングとしてもとても意味があると思うのです。

勿論何でもかんでもというわけではないですが
誰でも簡単にそれなりの写真が撮れるようになった昨今だからこそ
「どっちでもいいこと」に対して理由を持って選ぶ姿勢は
誰でもいい写真にならないための第一歩なんじゃないかなと
忘れず刻んでおきたいなぁと思うとともに
後進たちに伝わってほしいなぁと思うのです。

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