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『もひかん☆えくすぷろーど』 #5 終

  目次

「ねーママぁ、パパかわいそう……」
「あら、さくらは優しいわね~。ね、聞いた? あなた。さくらに免じてお仕置きは後回しにしてあげるわね♪」
「ふがふが」

 鼻血吹いて白目剥いてぴくぴくしてるツソの首根っこを掴んだまま、さくらのかーちゃんは立ち上がる!

「それじゃあ小歌ちゃん。わたしは主人が略奪した物を返しがてら、ごめんなさいして回らないといけないから」
「あ、は、はい……」
「この通り、男の人っていつまでたっても子供なんだから、小歌ちゃんもしっかり捕まえておかないとダメよ?」

 ツソをズルズル引きずりながら、さくらのかーちゃんは去っていった!

「じゃーねー! こうたちゃん! おにーちゃん! またあそぼーねっ」

 さくらちゃんは両手でぶんぶん手を振ると、かーちゃんを追いかけて行った!
 烈火とコータは、呆然とそれを見送っていた!

 ●

「ほあー……」

 公園のベンチ!
 パンツ一丁の烈火はなんか魂抜けてるような様子だった!
 隣に座ってるコータはちょっと難しい顔でそれを見ていた!

 ――あにき、明らかにへこんでる……

 いつもクソうるせえ烈火がここまでヘコんでんのはわりとめずらしい! 具体的には世紀末グラビアアイドル高知里見の新刊写真集を発売日に買い逃した時以来だ!
 ……前言撤回、わりと頻繁に落ち込んでるわこのヘタレ。

「うるおいがよー……ねえのよ……オレの人生……」

 なんか欝々と呟いてる!

「オレずぅ~~っとこのままなんかなぁ……マジなんなのこのビョーキ……」

 烈火の周囲にだけ、どよ~んと暗雲が立ち込める!
 わりとうっおとしい!

「ツソみてーなアホですら結婚してんのにオレときたらなぁ……」

 ブツブツブツブツ泣き言が続く!
 コータは!
 胸の前でぎゅっとこぶしを握り、意を決して口を開いた!

「……その、あにき?」

 さくらちゃんのおかーさんが世紀末伝承者だったのはコータとしても予想外で、今回の件は極めて稀な出来事であった! 世紀末伝承者の男女比は999:1くらいであり、高知里見以外の女性世紀末伝承者を見るのはコータも初めてのことであった!
 だもんだから、烈火の立場において「まともな見た目の女性」というものががどれほど希少な存在なのか、理解が足りていなかったことを今痛感したのだ! 普段からコータの前でもおかまいなしにおっぱいおっぱいホザいてんのは、モヒカンまみれの世界で下がりきったSAN値がもたらす無意識の悲鳴のようなものだったのだ!
 であるからして、コータはある種の危機感を覚えた!
 前々から考えていたことだが、さすがに踏ん切りがついた! きょろきょろと周囲を見渡し、人目がないことを確認すると、尻のポケットからアイマスクを取り出す!

「ちょっとじっとしててね」
「ああ……? んだよ」

 アイマスクを烈火に装着する!
 ちなみにウルウルした可愛らしい目が描かれている! すげえバカっぽい!

「えっと、その、えっとね、目ふさいじゃえば関係ないから、さ」

 おずおずと烈火の手を取り、自分の胸乳にむにゅりと押し付けた!

「ほ、ほら、あにきの大好きなおっぱいだよー。落ち着くまで、触らせてあげるからさ、その、元気出してよ……」

 烈火の指が反射的に動き、ドクロのタンクトップに包まれたコータの肉プリンをまさぐり始める!

 ――やばいこれ想像以上に恥ずかしいかも!

 耳まで真っ赤になっているのを自覚しながら、コータは必死に言葉を紡ぐ!
 もゆん、むも、むも、くに。

「んっ……えっと、オレ、もっともっと、強くなるから、さ……んんっ……もっとたくさん、泰斗魔狼拳のワザ……ぁんっ! お、教えてよ……」

 ――それで、いつかは……

 羞恥で茹だった頭の中で、ひそかに決意する!

 ――いつかぜったい世紀末伝承者になって、あにきにホントのオレを見てもらうんだ!
 ――そしてあにきを映画に誘うんだ!

 え、そっち!? もうちょい目標高く持とうよ!!
 それはそれとして、烈火の手の動きがどんどん遠慮なくなってきた! くにゅんくにゅんと肉まんが形を変え、中の乳腺が揉み潰されて甘い電流が走るのを感じた! 自分で触っても特にどーとも思わないのに!

「ひゃぁんっ! ちょ、ちょっとあにき? 話聞いてる?」

 見ると、烈火の口からふごーっ、ふごーっ、と蒸気じみた呼気が漏れている!

 ――あ、これマズい流れだ。

 肉食獣のごとく、理性を失った烈火が襲い掛かってきた!
 コータの乳房に鼻先をめり込ませ、唇と舌がめちゃくちゃに蠢きまくる!

「ふにゃぁぁんっ♪」

 幼少から好きだった人にそこまで強く求められている現状事実にコータの幸せ乙女回路がきゅんきゅんと熱暴走! 一瞬我を失い、瞳の中に小さなハートマークまで浮かび上がる始末! いけない! このままでは年齢制限がついてしまう!

「……はっ!」

 しかし烈火と違ってそんなにアホではないので、すぐに意識を回復!

「う、うがー! そこまで許してなーい!」

 烈火を突き飛ばす!

「もー! すぐ調子に乗るんだから! あにきのばかっ! すけべっ!」

 そして流れるようなアッパーカット! 修行の成果だ! 烈火の巨体が上空までブッ飛んでゆく!

「ぶへぇぇぇぇぇ!!」
「わ、意外に飛んだ」

 それは、コータの秘めたる世紀末資質が初めて片鱗を覗かせた瞬間であった!

 ●

「ぶへぇえぇぇぇ!!」

 アゴにいいのを食らったせいかアイマスクに包まれているはずの視界が光に満ちている!
 ぶっ飛ばされた烈火はほどなく地面に落下!

「うぎゃ!」

 盛大に尻を打つ!
 次の瞬間跳ね起きる!

「っっってえええなこの野郎! いまどき暴力ヒロインは叩かれるんだっつーの! おしとやかに金的目潰しで我慢しなさいってママいつも言ってるでしょうがーッッ!」

 おしとやかとはいったい……うごごご!!
 というか今のは正当防衛っつーか殴られて当然っつーか通報されなかっただけ有情っつーか!
 わかってんのアンタそのへん!
 と、ここで烈火異常に気付く!
 足元の地面の感触がなんか変だ!
 もこもこしてる!

「ん?」

 アイマスクを剥ぎ取る!
 すると!
 そこには!
 視界一面、緑が広がっていた!

「え?」

 あの、屋久島の樹林みてーな感じの、苔むした深い森の中だった!
 違うのは、ひとつひとつの樹が桁違いにクソでかかったり、半透明の結晶でできたような花っぽいものが所々に咲いてたり、よくわからん緑色に発光する粒子っぽいものが風に乗って流れてたりすることだ!

「は?」

 やべーよ何これどういうことだよ!
 烈火はしばらく呆然と突っ立っていた!

 システムメッセージ:主人公名鑑が更新されました。
◆銀◆主人公名鑑#2【黒神くろがみ烈火れっか】◆戦◆
 二十歳 男 戦闘能力評価:S
 熱血。マシンガントーク。不良。ものすごく雑魚っぽい口調だが強い。
 世紀末ギャグ格闘マンガ『もひかん☆えくすぷろーど』の主人公。一定以下の強さの人間が全員モヒカン雑魚に見える謎の奇病に侵された青年。なんか世紀末っぽい拳法「秦斗魔狼拳」の伝承者。無類の女好きだったが、幼馴染ヒロインすらムキムキのモヒカンと化して頬を赤らめてモジモジしだす段に至り発狂。奇病の治療法を求めて東暴西走するついでに様々な世紀末武力組織を潰して回る。成人はしているのだが、精神年齢がやたら低く、しかも自分を天才と称してはばからない小二病患者。言動がいちいち小物臭いが、タチの悪いことに実力は凄まじい。肉食系婚活男子で、実力者の女性を見かけると即結婚を申し込む。あと無駄に女子力が高い。
 所持補正
・『ギャグ系主人公』 世界変革系 影響度:S
 ボケもツッコミもこなせるハイエンドなコメディリリーフとしての主人公補正。烈火の人生はアホな出来事のみで構成される。彼の周りには基本的にアホしか寄ってこない。最初アホではなかった者も、烈火と付き合ううちにだんだんアホになってゆく。戦闘における勝率をほんのり下げ、生存率を強制的に百パーセントにする。宇宙を破壊しつくす一撃でも彼を殺すことはできない。また、彼がいる世界では深刻な悲劇が一切起こらなくなる。ギャグキャラの影響力は絶大であり、同ランク以下の悲劇的な補正をすべて無効化する。
・『■■』 因果干渉系 影響度:■
 ■■い■■■■■の■■■■が■■■される補正。■■が■■する■■もあればしない■■もある。しかし■■の■■ゆえに■■つうらやましくない。また、■■キャラクターによる■■を■■■■できなくなる。なにをどうしようが■の■には■てないさだめ。
・『■■■さん■■』 世界変革系 影響度:■
 ■■を■ませる補正。■の■■では■か■りしれない■■の■■■が■こり、■■が■んでるようで■んでない■■になる。■■■■■■のキャラクターのみが■ち■りうる補正。

【続く】

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