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『もひかん☆えくすぷろーど』 #4

  目次

 二人の姿がかき消え、一瞬後に蹴りと拳が交差した状態で出現ッッ!! 全周囲に風圧が拡がるッッ!!

「オラオラオラオラオラァッ!!」
「シャラララララララァッ!!」

 かき消え、別の場所に出現し、またかき消えるッッ!! そのたびに爆風と衝撃波が発生し、世紀末の荒野に恐るべき破壊痕を刻むッッ!!
 死合う両雄の裂帛が、淀んだ空を血生臭く切り裂いたッッ!!

 ――五分後ッッ!!

「だからちげーんだよ高知里見の乳は言うなれば宇宙なんだよわかれよボケがこの世のすべてがあそこにあんだよ人生なんだよ!」
「知らんなァ……そんなマイナー女優!」
「あ”あ”ん!? じゃテメーの推しチチなんだっつーんだよコラァ!」

 いや何の争いをやってんだよおまえら!!
 烈火とツソは手刀で鍔迫り合いしながら不毛な言い争いをしていた!
 ちなみに高知里見とは世紀末伝承者でありながらグラビアアイドルもやってるというお前それどうなんだよと言いたくなる人生を送る女であった! 言うまでもなく烈火にとってはほとんど唯一と言ってもいい心の支えであるッッ!!

「篠原ゆりに決まっとろーがァ! あの荘厳なモスクのごとき完璧な吊り鐘型パイオツはもはや人類の至宝と言ってよい!」
「篠原ゆりっつったらアレだろさっきテメーが略奪してたエロDVDのアレだろ興味ねーよそんなモヒカン!」
「貴様……言うにことを欠いてあの女神をモヒカン呼ばわりとはいい度胸だ。余程楽に死にたくないようだなァ……!!」

 激突する二人の闘気が周囲の地面を圧し、クレーターのごとくへこんでゆくッッ!!

 ――さらに五分後ッッ!!

 二人は地面にあぐらをかいてピコピコなんかやってた!

「テメーコラ馬鹿コラテメーまた俺をふっ飛ばしやがったなワザとかこの野郎! 拡散弾自重しろやボケ! あとヘイト稼げっつってんだろうが俺が回復のめねーだろうが!」
「やかましいわ無知蒙昧が! どっかの誰かが太刀とかいう斬属性しかない欠陥武器を担いでいるせいで効率が悪いのだ屑め! まだ尻尾が斬れんのか貴様ら太刀厨の存在価値などそれだけだろうが!」

 だからなにやってんだよおまえら! その3DSどっから出した!

「あ”あ”!? 知るかボケこちとらPSP時代から太刀一筋だボケェ!! それよりテメーなんで男ハンター使ってんスか? ホモなんですか? ねえねえホモなんですかぁ?」

 やめるんだ! いろんな人を敵に回しそうな煽りはやめるんだ!
 案の定ツソは3DSを握り潰しかねない剣幕でタッチパネルを操作し、拡散弾を遠慮仮借なく撃ち込んだ!
 爆発して吹っ飛ぶ烈火のプレイヤーキャラクター!
 唐突に始まるPvP! もろともにモンスターに吹っ飛ばされるPvP! 仲良く乙るPvP! 自明の理!

 ――とにかく五分後ッッ!!

「罪斗円侵禍ッッ!!」
「天才ラリアットッッ!!」

 両者の間で闘気と衝撃波が爆裂ッッ!!
 マジメに戦いだしたようで地の文も安心ッッ!!
 二人の足元でベキベキに割れた3DSの亡骸が散乱ッッ!! 無慈悲ッッ!!
 激突する奥義と奥義は互いに一歩も譲ることなく交差し、それぞれの前方に余波を解放ッ! 大地が盛大に抉れ、彼方の廃ビルが真っ二つに両断されたッッ!!
 弾かれたようにバックステッポし、間合いを取る両者ッ!!

「ちぃっ」

 舌打ちする!
 実力伯仲ッ! ラチが開かねえッ!
 切り札を使う時が来たようだッッ!!

「コォォォォ……!」

 烈火は口を尖らせてなんか波紋ぽい呼吸をしながら腰を落とし、両腕を交差させたッ!
 その背からは湯気のごとく闘気が立ち上るッッ!!
 大気が張り詰め、呼応したように雷鳴が轟き始めるッッ!!
 異様な雰囲気にツソは油断なく構えるッッ!!
 すると、烈火の肉体がメキメキと音を立てて膨張ォッッ!! 全身の筋肉という筋肉に大量の血液がめぐって血管が浮き出るゥッッ!!

「カァァァァァァッッ!!」

 両肘を一気に引くッッ!! 同時に闘気が爆発的に放射ッッ!!
 筋肉の超常的バルクはなおも継続ッッ!! ついには衣服がはち切れてパンプアップされまくった上半身が露出ッッ!!
 もともとツンツンしてた髪が真っ赤に染まり、倍近く伸びたッッ!!
 そして下半身の衣類も容赦なく破れ、割合かわいらしい水玉模様のトランクスが現れるッッ!!
 その瞬間、画面がモノクロになり、作画が劇画調のタッチに変わるッッ!! そして漢らしく達筆なフォントで「泰斗降神紅」とテロップが出たァァァァッッ!!

 説明しようッ! 泰斗降神紅とはッ! なんかすごい感じの呼吸法でなんかすごい力が出る感じのなんかであるッッ!!

 具体的には次に放つ攻撃の威力が百倍とかになるッッ!! スゴイ!! 実際スゴイ!!

 恐るべきハイパーモードを前にして、しかしツソは余裕の態度を崩さないッ!

「はっ、浅はかだなァ……! その形態、なるほどパワーはあるのだろうが、スピードは落ちると見た! 当たらんよ、そのような見え透いたテレフォンパンチ!」
「あ、エロ本が落ちてる」
「何ィ!?」
「隙ありゃアアアアアアアァァァァァァァァッッ!!!!」
「ゲバアアアアアアアァァァァァァァァッッッッ!!!!?」

 TYO☆KU☆GE☆KIッッ!!
 ツソの顔面に弧を描く光線のごとき拳撃がブチ込まれたァァァァァッッッッ!!!!
 着弾の瞬間、天文学的な威力の衝撃波が全方位に拡散し、周囲の世紀末荒野を粉砕ィィィィッッッッ!!!! あたり一面が砕け散った砂礫の海と化し、遠くの廃ビルも次々と消し飛んでゆくッッッッ!!!!
 ツソはキリモミ回転しながらブッ飛んだァァァァッッッッ!!!!
 そのツラはもうふた目と見られない変顔だったッッ!! このままでは腐女子が離れて行ってしまうッッ!!
 白目剥いて気絶ッッ!!

 決 着 ! !

 世紀末空間解除ッ!!
 空が晴れ渡り、街の喧騒が一気に押し寄せてくる!!

「ッシャコラ―! どんなもんじゃいコラー!」

 顔面がなんかすごい変形して倒れ伏すツソの胸ぐらをつかみ、がくがく揺さぶる!

「あっ、もどってきた!」

 小柄なモヒカンが○スバーガーから駆け寄ってきた!

「あにきだいじょうぶ? ケガとかしてない?」
「あぁん? よゆーよゆー! マジノーダメ安定っすわ」

 烈火、ニヤリとしてサムズアップ! しかし口の端から血が垂れてた!

「もーウソばっかり! ……って、ぎゃあ!?」

 モヒカン(コータ)が慌てて後ろを向いた!
 その辺のモヒカンの見せ筋とは格の違うギリシャ彫刻がごとき荘厳なマッソォで鎧われた烈火の裸体は、女の子にはちょっと刺激が強かった!

「もー! また降神紅こーしんこー使ったでしょ! そのうち猥陳罪でしょっぴかれても知らないんだからね!」
「パンツがあるから恥ずかしくないモン!」
「モン! じゃねーよ! パンツ一丁はふつうにセクハラだよ!」
「つまりこれも脱げばいいのか!」
「天国のおかーさん、最近あにきの露出狂化が止まりません……オレどうすればいいんでしょーか……」

 それは神龍か聖杯にでもお願いしないとどうにもならない問題だった!

「あらあらまあまあ、小歌ちゃんじゃない」

 と、そこへおっとりした声が聞こえてきた!
 見ると、えぐちさくらとそのかーちゃんがおててつないで歩いてきていた!

「あ、おにーちゃんもいるっ!」

 さくらちゃんは輝く笑顔だ! 烈火の目にはモヒカンにしか見えないから何もかも台無しだが!

「さっきぶりですねー。ご主人は見つかりました?」

 駆け寄ってきたさくらちゃんをナデナデぷにぷにしながら小歌は尋ねる!
 一方、烈火はかーちゃんの方を視界に入れた瞬間、背筋に電撃が走るのを感じたッ!

「ええ、たった今見つけたわ。まったくこの人はもう……あら? そちらの方が小歌ちゃんの彼氏さん?」
「生まれた時から好きでしたッッ!! 結婚してくださいッッ!!」

 烈火、全身の筋肉を瞬発させてノータイム跳躍!
 からのノータイム告白!
 アーンド、唇を尖らせてノータイムチッスの構えだァーッッ!!
 急にどうした烈火! 気でも触れたのか! あ、それはいつものことか!
 だが烈火は今、目を輝かせていた! まるで砂漠でオアシス見つけた時みてーなツラだ!
 それもそのはず! そこには女神がいた! モヒカンの海に飲み込まれた世界に、一筋差し込んだ光があった!
 ゆるくウェーブのかかった茶色の髪が優美に流れ、肩や背中を流れている! 少し垂れ目気味の潤んだ瞳が優し気に烈火を見上げている! あと目尻には泣き黒子も完備だ! わかっておる! わかっておる喃! ノースリーブのワンピースドレスが白く華奢な両肩を効果的に魅せるゥッ! そして何より特筆すべきは脇を覆い隠すほどにたわわに実った母性と包容力の象徴がずっしりと重たげにワンピースの生地を押し上げておりますぞデュフフフフ!!
 瞬間、毒蛇のごとく跳ね上がった白い手首が、とびかかる烈火のアゴを打ち抜いたァッ!

「ごぶへっ!」

 吹っ飛ぶ烈火!

「あらあらまあまあ、情熱的な方。でもごめんなさい。わたしこの人の妻なんです」

 そう言って、さっきから伸びてるツソの首根っこを片手でつまみ上げる!

「え」
「で、こっちが娘です」

 さくらちゃんの頭をぽむぽむする!

「え」
「ほら、あなた? またモヒカンを従えて略奪でもしてたのかしら? 本当に何度言ってもわからない人ね。後で戮斗惨滅斬の刑ね」

 モガモガとツソが口を動かし始める!

「こ、後悔はしていないのふぁ! 略奪は男の本能ふぁ!」
「はぁい、口答えしないの♪」

 ツソの後頭部を白魚のような繊手が掴んで地面に叩きつける! アスファルトに蜘蛛の巣状のヒビが入ってツソの顔面がめり込んだ!
 明らかに世紀末伝承者の腕力だ!

「本当にもう、困った人。わたしがいないとてんでダメなんだから」

 ちょっと赤くなった頬に手を当てて幸せそうに微笑む! ダメ男に惚れやすいタイプか!
 ちなみにその間もツソの頭を持ち上げては地面に叩きつける動作は継続中だった!

【続く】

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