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いまさらおめーの再登場とかいいからマジで

  目次

 知性のかけらも感じられない咳払いが鳴り響いた。
 みんなで一斉にそっちを見ると、烈火がわざとらしく握り拳を口に当てている。

「なんだ、黒神。お主もさっさと構えよ。」
「はぁ~~~~~~~~~~~~~(クソでか溜息)。お前らは、本当に、なんっっっっっっっにもわかってねえなぁオイ?」
「どゆことでありますか?」
「……テメェら、なんでVSクソでかオークくんがここまで長くこじれたと思ってんだ? あ?」
「なんでって……」
「お前とッ!」

 烈火はギデオンを指差した。

「お前がッ!」

 烈火はトウマを指差してきた。

「この超天才の超天才ムーブを邪魔し続けたからに決まってんだルォォォォォォォンッッ!?」

 烈火の立っていた地点が突如爆裂!!!!
 慌てて視点を上に向けると、なんか空中でバレリーナみたいにクルクル回っている烈火がいた。
 そのままドリルめいて急上昇し、血の神アゴスの胸板の前に至る。
 瞬間、拳を後方に引き絞った姿勢でピタリと停止。
 獰猛な笑みを口の端に乗せながら、

「天ッッ!! 才ッッ!! パァァァァァァァァァァァァァァンチッッッッ!!!!」

 神々しさすら宿るほど完璧に鍛え上げられた全身の筋肉を爆縮させ、究極の一撃を放つ!!!!
 それは拳によって引き起こされる天変地異。あるいは宇宙開闢の再演。
 インパクトの瞬間、世界から音が消え失せ、ただ閃光だけがあった。
 直後、圧倒的暴力的な爆風が壁のような圧力を伴って押し寄せ、同時にひとつの世界が砕け散る。
 断末魔すらなかった。
 烈火の拳が命中した箇所を中心に、汚染幽骨が球状に抉れたかと思った時には胴体が粉々に分解され、拡散する衝撃の余波だけで頭部や三対の腕にもヒビが広がっていって崩壊していった。
 暴虐の巨神は、特に何もしないまま一撃でこの世から消滅した。

 えぇ……(困惑)。

 途端、赤黒く刺々しく変異していた周囲の幽骨が元の妖美な蒼い色彩を取り戻し、王都は瞬時に元の姿を復元してゆく。
 意識を失っている三人以外の全員が、口を開けたまま眉をひそめて突っ立っていた。ドン引きであった。

「キョーキョキョキョ!!!! くやしいのうwwwくやしいのうwwwせっかく劇的復活からパワーアップして第二形態披露したのに一回も攻撃しないまま瞬殺されてねえどんな気持ち? ねえねえどんな気持ち? 『オレは世界を肯定するゥ』とか大物系イキリかました手前これは恥ッッずかしィー!!!! ざまぁwwwざまぁwwwオラてめぇらこの超天才を讃えろやァーッ!! 拝み崇めろ奉れやァーッッ!!!! ヒャーハッハッハッハッハ!!!!」

 ツカツカと総十郎が歩いて行って、刀の鞘で烈火の顎を殴り飛ばした。

「でべェーーッ!?」

 回転しながら吹っ飛んで顔面から着地。折れ曲がった脚先の踵がごつんと後頭部に当たった。
 直後に跳ね起きる。

「だからテメーはいきなり何すんですかコラァーッ!!」
「何故殴られたか、わかるか?」

 総十郎の据わった目を前に、急にキョドりはじめる烈火。

「えっ、あ、うん、ボクわかんないッス……」

 美貌の青年は世紀末伝承者の胸ぐらを掴み上げ、睨みつけながら言った。

「今日の祝勝会には小生秘蔵の霊熊肉をすべて放出しようと思うが、貴様も料理のアヰデアを出すが良い。」
「殴った理由を言えやァァァァァァァァッッ!!!! あと煮込みにもローストにも飽きたしハンバーグにしてみようかと思うんですけど構わないッスかクソロリコンこの野郎!!!!」
「うむ、よきにはからえ。あと貴様はなんか腹立つので罰としてこれから一生変な語尾をつけて喋るように。」
「わかっためう!!!! がんばるめう!!!!」

 そういうことになった。

「……緊張感のない連中だな」
「きっとすぐ仲良くなれるでありますよギデオンどのっ!」

 言われて、隣の少年をやや困惑気味に見下ろすギデオン。
 だが、やがて苦笑が浮かんだ。

「そうか……そうかもな」

 瞬間。
 精霊力粒子が震え、汚泥が煮立つような声を奏でる。

『そうダ……悪かネえ……悪カねえんだ……』

 宙に浮かぶものがある。奇怪に、残虐に歪んだ、一振りの大剣が。

【続く】

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