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#24_【読書】「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係~ /巽好幸(光文社新書)

突然ですが 「日本列島ってどこにありますか?」と聞かれたら、どのように答えますか?
極東?、アジアからはみ出た離れ小島?、太平洋を見渡せる最前線?、様々な言い方がありそうですが、とりあえず、どこから見るかによって、まったく変わりますよね。
以前、「島根は鳥取の左」だの「鳥取は島根の右」だのという話もありましたが、少なくとも朝鮮半島やロシアから日本を見ると、それは正しくありません(苦笑)。

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介します本は「「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係~」です。

2013年12月に、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、そこには日本の気候風土、さらには気候風土が作り出す地質や地形と密接に関係していることを紐解いた内容になります。
例えば、日本には出汁、豆腐、日本酒といった水をふんだんに使い製造される食品が数多くあったり、様々な魚介類が全国各地で水揚げされたりしますが、名産地がなぜ名産地と言われるのかというゆえんを、地質という観点から解説されています。
対馬に関する記述はありませんが、ブリ、カニ、ホタルイカなどに代表される富山湾や能登半島の海の幸、宍道湖のしじみなどは、日本列島がアジア大陸から分裂し、現在の場所に位置していなかったら味わうことができなかったと考えられています。もちろん、日本列島によって湾のようにぐるっと囲まれた日本海に、北からの千島海流と南からの対馬海流が流れ込んで生み出されていることは、いうまでもありません。
このあたりは、富山県が作成している「逆さ地図」をご覧いただくと、分かりやすいかと思います(著作権がありますので、下記のリンクよりご覧ください)。

よく「ジオパークはお金にならない」と揶揄されますが、ジオパークに認定された地域にどのような特徴があるのかを見てみますと、だいたい全国的に知られる海山の幸か、温泉があります。阿蘇、雲仙、洞爺湖・・・。
地質がどうやってお金を生むのかと考えますと、御影石や陶石などの採石や、石炭などの鉱物資源くらいしか思いつかなさそうですが、実は食とも密接につながっているんですね。そのつながりを知るだけでも、豊かな気分になれる気がします(^^ )。

【定置網漁の水揚げです。】
【いか漁の漁火が天に向かって伸びています。】
【いかの天日干しの光景です。】
【浅茅湾ではマグロの養殖が盛んです。】
【対馬の保存食「せん」作りの様子です。】
【「せん」は作るのに千の手間がかかるといわれるほど時間をかけて作られます。】
【縄文時代に朝鮮半島を経由して対馬に伝来したといわれている対州そば。】

 一方で、山梨のワインや明石のタコは、火山噴火によって形成された土壌や、海底プレートの動きによって作り出された地形がもたらしているものですので、火山の噴火や地震といった試練と隣り合わせであることも認識しておかねばなりません。
ともあれ、色々な奇跡が重なり合って、今の日本の食文化が作り上げられてきたわけですね。

ところで、2022年度から高校で地理が必修になったそうですが、私の大学受験の頃は、地理を受験科目にすると受けられる学校が限られてしまうので、娯楽を嗜む感じで地理の授業を聞いていました。
ケッペンの気候区分以外に何を学んだのか、まったく記憶にありませんが(苦笑)、これから地理の勉強をし直そうと思いますf^_^;)。

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