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「懐かしい」が 心と脳に与える影響と マーケティングとの意外な関係

「昭和レトロ」で人気の旅行先:熱海

8月の最終日曜日、MOA美術館の「びじゅチューン展」に行ってきました。(「びじゅチューン」:日本や世界の著名な美術作品をテーマにしたオリジナルソングとア二メーションを紹介するEテレの番組です。)

クリムト「接吻」がテーマのアニメーション。曲と歌詞が面白い。


美術館の最寄りの熱海駅。
駅前のアーケード街では、20代の女子2人連れ・カップル・男女グループが路地を埋め尽くしていました。びっくり!
数年前から、若い世代に熱海が人気だとは聞いていたけど

「こんなに大勢、なぜ?」「熱海に何を求めてくるのかな?」

熱海駅ビルのお土産物売り場に行ってみました。
特設コーナーでは、熱海の老舗ホテルやレストランの外観をプリントしたTシャツ、温泉に入っているこけし風の人形の置物、温泉マークの入った黄色いプラスチックの洗面器など「熱海レトロ?」な商品が売られていました。(写真、撮ってくればよかったなぁ)

そこへやってきた20代の女子2人が 黄色いプラスチックの洗面器を手に「かわいい~」と。。。

「『かわいい』の世代間ギャップ」
「『かわいい』の多様化?」

「熱海」といえば、古き良き昭和時代は人気の新婚旅行先でした。
お仕事で関わっている老舗和菓子屋の社長は、当時のことを懐かしそうにお話してくれます。今の賑わいよりも、もっともっと、たくさんの人で溢れかえっていたんだよ、と。

今でも熱海には、昭和の雰囲気をたたえた外観・内装のレストランやカフェ、お土産物店が並んでいます。
「昭和レトロ」が平成生まれ世代に人気といわれていますが、熱海に若い世代が大勢来ているのは、それも1つの要因のようです。

※MOA美術館「ゴールデンびじゅチューン展」より風神・雷神 
(本筋に関係ないけど ”かわいい”から載せちゃう)


平成生まれにとって「昭和レトロ」は「懐かしい」?

以前「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)という映画がヒットしました。
昭和30年代の東京が舞台で、当時の商店街などの風景や登場人物の服装など、その時代に東京で過ごした人達は「懐かしい」ものだったと思います。
これは「個人的ノスタルジア」と言われます。

そして、当時生まれていない世代の人もこの映画の映像に、「どこか、なんとなく懐かしい」気持ちになりました。「なんとなく知っている気がする」と。。。

これは「歴史的ノスタルジア」と言われる、集団が共有している懐かしさの感情だそうで、それを感じる理由には諸説あり、

・頭に入っている様々な知識によって、あたかも自分が体験したように思ってしまうため
・かつて見たことがある古い車、看板、消火栓などが場面に映っているため

などが考えられるそうです。

熱海駅平和通り商店街周辺。「なつかしの味」熱海プリンは、若い世代の行列
「なつかしい」って、ちゃんと書いてあるのがポイント!?

「懐かしさ」を感じると快感?

「懐かしさ」「レトロ」に、人が反応するのは なぜ?

それは、「懐かしさ」を感じると、脳内にドーパミンが分泌されることが関係しています。
「ドーパミン」といえば、快感をもたらす神経伝達物質で、昇格・昇給、試合での勝利、褒められることや賞賛されることなどが きっかけとなって分泌される「報酬」「ご褒美」。

「『懐かしさ』を感じると活性化する脳の領域」と 「『報酬』に関係している領域とが同じ」なので、
「懐かしいなぁ」と感じることで心理的な「報酬」を得られ、脳内にドーパミンが分泌されるとのこと。

「懐かしい」と感じると「快感」が得られる・・・・

平成生まれ世代が、SNS投稿や写真で熱海の「昭和レトロ」に触れ、「知らないのに、どこか懐かしい」と感じて楽しくなる(報酬)。
「熱海行こうか」と盛り上がって、友達と週末に小旅行。昭和レトロな店やモノに触れて元気になる(快感)。「熱海、楽しかった~!」となる。
そんな感じかな。

商品の販促や観光誘客に、「懐かしい」も大切な要素ですね。

「ノスタルジア」を使った商品やテレビCMなど

思いつくものを書いてみると・・・

●ラムネ瓶
縁日(っていう言葉もレトロ?)やお祭りで売られている「ラムネ」は、日本では1880年に初めて生産されたそうですが、今でも緑色の瓶のデザインやビー玉は変わりません。
お祭りで見つけると、なんとなく懐かしく感じて、思わず買ってしまう人も多いはず。。。

●お菓子など食品パッケージ
グリコ・ポッキーやカルビー・サッポロポテトやポテトチップス、明治・ブルガリアヨーグルトなどなど。
これらは、マイナーチェンジはされているけど、私が子供の頃と今とで、商品パッケージ全体のイメージや色は大きく変わっていません。
食品の場合は「昔から食べている」安心感というのも、販売するうえでは大切ということで、薬のパッケージが変わらないのも、同じ理由。

●アニメ・キャラクター活用CM
最近、ある携帯電話のテレビCMで、出川哲郎さんがバカボンのパパ役、芦田愛菜さんがバカボン役をされています。キャラクターの活用には様々な理由があるけど、天才バカボンのアニメを見ていた世代の「懐かしさ」もその1つなのかな。
他にもドラえもんやドラゴンボールなど、アニメの登場人物を使ったプロモーションなど色々とあるので、それぞれの商品のターゲット層を意識して広告を観ると楽しいです。BGMも同じで、その曲をよく聞いていた世代がターゲットの商品CMで使われることが多いですよね。

●蒸気機関車
静岡県西部の大井川鐡道では、今も蒸気機関車(SL)が走っています。SLが現役だったころに乗っていた人は今では少ないかもしれませんが、SLに乗ったことのある両親に連れられてSLを見にいった子供たちが「ノスタルジア」を感じる。その子がやがて大人になり、今度は自分の子供を連れて大井川鐡道のSLに乗る・・なんていうこと、ありますよね。
大井川鐡道は 3世代それぞれの「ちょっと特別なもの」、懐かしい家族の思い出の鐡道になりますね。

大井川鐡道「きかんしゃトーマス号」。ホームには、親子連れがいっぱい。

●クラッシック車
キューバには、1950年代のアメ車が現役で走っていますが、私はなんとなく懐かしく感じます。
キューバにも行ったことはないし、1950年代に生まれていたわけではないし、アメ車に乗ったこともない。だけど、60~70年代の洋楽が好きで、当時のアメリカのテレビ番組の映像を観たり、古いレコードのジャケットをカッコいい~と見たりしていたからかな。キューバは「行ってみたい国No.1」。
クラッシック・カーは、キューバの観光資源です。

キューバの街を彩るクラッシック・カー。かわいい!


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