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熱_0:25

37度超の熱が身体中を這う中、2日目のテスト教科である理科と英語を只管脳内に焼き付ける。
時間が経つにつれ症状の悪化は目に見えていた。
鼻が出るだけだったのにふらつきを覚え、視界の歪みを感じ、噎せるような咳も出始めた。
 『 38度を超えてしまったら休んでもいい 』
いつの日か言われたこの言いつけを、いまでもしっかり守っている。
平均体温が35.8位なのに38度が出てしまえばきっと死の間際その物だろう。
つまり、『 死にかけたら休め 』ということ。
きっと、そう。
37.5なんて微熱だ。という方もいるだろう。
生憎わたしの中では熱の部類に入る。
ぐわぐわとする視界、声を出すと喉を刺されたような痛感が走り、嘔き気は安定にある。
なんだ、こんなことで弱音を吐くのか、と自分を自嘲する。
笑い続けることすらしんどくなり始め、これはまずい。と流石に思い、さっとお風呂に入り片付けをし布団に入った。
静かで真っ暗な寝室に響く自分の呼吸は、普段の呼吸とはかなり違っていた。
基本音を立てない呼吸が、すぅっと聞こえる。
息を吐く度重くなるからだに抗うように、目一杯呼吸をする。
どくどくと脈打っているのは自分でもわかった。
瞳を閉じ、ぼんやりとしていると、ひさびさに蝶がみえたきがした。
暗闇の中にはっきりとうつる、黒蝶が。
いつものように手を伸ばす。
とうぜんつかめず、遠のいていく幻覚に安堵する
よかった、と安心する。

ぼく、このまま死ねたりしないかな。

そうおもった。
熱なんかでしねるわけ、
よくわかっていた
無意味。
寂寥感に駆られていようとそんな簡単に死ねるわけがない。
ただ、しんどいだけだ。
掴めるはずのない蝶をつかもうと、くうを切る。
力が入らなくなり、がんっと鈍い音を立ててタンスに向かって手を落とした。
正直痛かったが、きにはしない。
まけずとまた空を切る。
そしてぶつけて、くりかえし。
たのしくなんかない。
けれどこれが、ほんのすこしだけ、らくになる。
ぼくのまわりには、手を差し伸べてくれる人が居ただろうか。
風邪を引いた時、気がついてくれただろうか。
このような余計なことを考えないようにしながら、ねこのように蝶を追いかける。
次第に疲れ、やめる。
めをとじてもみえるのだから、そう思い目を伏せる
やはりみえる、こわい、とはおもわない
もともと蝶はすきだ。だからよけい、綺麗に思える
だって、真っ暗な世界に、真っ黒な蝶々。
本来ならどうかして見えないだろう?
けれど、みえる。
それが美しくて、綺麗なんだ。
こうして駄文をつづっているいまも、視界の片隅にはうつる。
ひらひらと、きれいに。

「 ぼくもこんなふうに舞えたら、 」

そうおもう。
ぼくだって、はしりたいし、およぎたい。
踊りたいし、回りたい。
できることなら、たいいくだって…
なんて、おもってしまう。

ぼくは、なにをしたいんだろう。
まいにちそうおもうんだ。
こんな駄文を綴って、
いみもなく、、
もういいんだって、おもっているのに
行動は起こせなくて。
やになる。
それだけ。
きっとこんなかんじなのは、熱があるからだ。
そうだ、熱のせいにしてしまおう。
そういうことに、してしまおう。



しにたいのも、逝きたいのも、ぜんぶぜんぶ、
熱のせい。

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