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<録画配信&まとめ記事>フェミニズムとパレスチナ:みんなの解放のために

2022年2月25日、ウェビナー「フェミニズムとパレスチナ:みんなの解放のために」を開催し、自らを「文化労働者」と位置付けるゲストスピーカーの須川咲子さんにお話し頂きました。後半はパレスチナ/イスラエルの地域研究がご専門の金城美幸さんを交えてのお話を伺いました。

本ウェビナーはBDS Japan Bulletin (BJB) のYoutubeにて、録画配信を公開していますので、見逃した方はこちらからご覧ください。2時間弱たっぷり話して頂きましたが、こちらは主なポイントだけをまとめた記事です。これを読んで興味を持ったら、是非Youtubeへ!

フェミニズムとパレスチナの関係とは?

さて、早速本題に入ります。フェミニズムとパレスチナってそもそも関係あるの?と思われた方もいらっしゃることでしょう。須川さんも数年前まではピンとこなかったそうですが、逆に、私たちは「なぜフェミニズムとパレスチナは関係ないと考えてしまうのか」と問いかけ、その背景を紐解いていきます。

まずは、米国拠点のパレスチナ人、アラブ人女性たちのネットワーク「Palestine Feminist Collective」が、パレスチナ問題はフェミニズム問題である、と宣言した話から。この宣言は2021年、またたくまにネットで世界を駆け巡りました。どういうことか、一緒に見ていきましょう。

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今までの主流派フェミニズムの問題点が鍵!

彼女たちの主張を理解するには、私たちが今暮らしている社会の構造について、そして今まで主流派だったフェミニズムについて理解する必要があります。

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これまでフェミニズムを牽引してきた主流派は、比較的裕福で、高い教育を受けた欧米諸国の白人女性たちでした。彼女たちが求めた「男女平等」は、黒人男性との平等、あるいは労働者階級の男性との平等ではなく、白人男性がトップにいる支配構造の中で、支配者層にいる白人男性と同等の権利を求めるものでした。

主流派フェミニズムは、黒人の解放や先住民族の主権回復、パレスチナ人がイスラエルからの解放を求める運動などとは切り離し、もっぱら白人女性たちの要求を優先してきました。例えば、有色人種の女性達がフェミニスト運動内での人種差別に声を上げると、「別の問題」を持ちこんで「フェミニズム運動を分断するな」と批判してきました。

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上の図のピラミッド構造を見てください。今までのフェミニズムは、この限られたピラミッドの中で、いかにして(主に裕福な白人)女性が上に上がるかということに重点が置かれ、ピラミッド構造自体を打ち破ってみんなの解放、平等を目指そうという声はかき消されてきました。

なぜ、このような少数の女性たちのフェミニズムが主流になりえたのか?その理由として、特権階級の白人女性が自分たちの主張を通す資源とアクセス(高等教育へのアクセス、支配階級やメディアとの近さ)を持っていたこと、彼女たちの主張が植民地主義や資本主義、白人至上主義と相性がよく、そういった既存システムの脅威とならなかったことなどが挙げられます。

インターセクショナリティ(交差性)の視点

一方で、この主流派フェミニズムとは全く異なるフェミニズムの流れも、ずっと続いていました。それが最近また改めて注目されている、インターセクショナル(交差的)な社会主義のフェミニズムです。彼女たちは「全ての女性の解放」を目指しています。

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女性が抑圧されるのも、黒人や先住民が抑圧されるのも、労働者階級の人々が抑圧されるのも、障がいがある人が抑圧されるのも、同じ人間としてすべてダメじゃない?ということです。黒人やパレスチナ人が抑圧されたまま、女性がみな解放されることはあり得ませんから。

このフェミニズムの考え方に照らせば、「パレスチナ問題は、当然フェミニズム問題である」となるのです。パレスチナ人女性たちの宣言も、このフェミニズムの延長線上にあると理解することができます。

一個人は、「女性」と「男性」という性別だけに属するわけではなく、その他の様々なアイデンティティを同時に持ち合わせています。その交差したアイデンティティと、そのアイデンティティを持つが故に強いられる抑圧すべてを解放しよう、互いに異なる抑圧を尊重することで、すべての人の解放に向けて連帯しよう、という考え方が「インターセクショナルなフェミニズム」です。

更に詳しく知りたい方は、須川さんが挙げる以下の文献もご参考に。

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これをパレスチナ/イスラエルに当てはめてみると

後半の金城さんのお話の中には、これまでの主流派フェミニズムに疑問を呈し、声を上げ始めたパレスチナ人女性たちが出て来ます。イスラエルのフェミニズムも主流派フェミニズムに通じるところがあるからです。特権を持ったイスラエル人が女性の「解放」を唱えながら、パレスチナ人の解放は認めないどころか、「フェミニスト・ウオッシュ」でイスラエルの国家暴力を隠蔽することに加担しているため、パレスチナ人女性たちもこれに対する批判を強めているのです。

また、特に米国では「シオニスト・フェミニスト」というのはあり得ない、つまり女性の解放を唱えながらパレスチナ人の解放を阻害し、人種差別に根差したシオニズムを支持することはできない、という考え方が広まりつつあります。同じ理由で、Black Lives Matter運動とパレスチナ人の連帯も勢いを増しました。これもつまり、インターセクショナル(交差的)な連帯です。

この後もまだまだお二人の話は続きます。更に詳しく知りたい方は、是非録画をご覧ください。

最後に、須川さんのスライドに出て来る素敵なイラストは、Center for reproductive Laborのインスタグラムより。こちらは移民労働者、ソーシャリスト・フェミニストたちと連帯し、再生産労働について学ぶプラットフォームです。こちらも是非のぞいてみてください。すべては繋がっているのです!

(Simsim)

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