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記憶の連続性からみたBD、SZ、およびDID。加えて、BDの分類への懐疑的見解。

二大精神疾患として双璧を成す双極性障害(BD: Bipolar Disorder)と統合失調症(SZ: Schizophrenia)。そして解離性同一性障害(DID: Dissociative Identity Disorder)。もちろん、これらは全く異なる障害である。

最たる違いはBDとSZの2つには「ほぼ」完璧な記憶の連続性が保たれているのに対し、後者は失われている点にあると考える。実際は僕は双極性障害患者なので、SZとDIDについては想像の域を出ない。DIDについては書籍などで得られる知識からは人格間の記憶の連携には個人差(ここでは外見上の個人を指すものとする)によるようである。

何故こんな事を書いているかというと、最近躁状態の時に周囲の方に大変なご迷惑をお掛けしたからである。その方が絶妙に最悪なタイミングで、これまた絶妙に最高点を叩き出すポイントを狙ってトリガーを引いてしまったと言えなくも無いのだが、それは今さら言っても仕方がない。不幸な事故だったという側面も否定できないので、そこは少しだけ諦めて欲しいと思っている。と言うわけで、現在は正常(と誤解しているだけかも知れない)な頭でこの記事を書いている。

双極性障害の患者の多くは、鬱状態の時の辛い記憶を時の経過と共に曖昧にしていく。少なくとも僕はそうである。終わりの見えない希死念慮や自殺企図との攻防の日々は、時間感覚を失わせる。さしたるイベントのない日々を個別に記憶するのは難しい。その反面、躁状態に起きたことは鮮明に記憶していて、忘れられるのは難しい。10年以上前の出来事が、数日前のことに思えるのも決して珍しくはない。躁状態での行動は多くの場合うまくいかず、後悔と羞恥に塗れており、過ちとして記憶される。それらを幾らか無責任で軽い調子にも取れる「やらかし」と表現する人が多いのは、そうしないと受け止め切れないからと考えて欲しい。

双極性障害の患者の背後には、躁状態時の過ちという多くの島が並んで浮かんでいる。そこから逃れようと幾ら船を懸命に漕いでも、何故かそこからは離れることは出来ない。それどころか、島の数は増える一方である。今にも追いつかれそうだ。

先述のSZにしてもDIDにしても、比較的健常者(民衆と呼ぶべきか)からの理解が得られやすい。貴方がテレビで特集番組を見ると想像したら分かりやすいだろうか。SZは幻覚・妄想があるので、その症状を見せれば良いし、DIDは人格が入れ替わる瞬間の映像を見せれば視聴者は喜ぶ。分かりやすいし、感情移入しやすいのである。そして残念ながら、それらは同時に趣味の悪い「見せ物小屋」でもある。

これに対して双極性障害の患者がテレビに取り上げられることは、ほぼ無い。とにかく絵面が地味すぎて、視聴率を稼げないだろう。その背後にあるのは健常者の、「気分の浮き沈みなんて、誰にでもある」という至極真っ当な認識である。僕が自身の障害について周囲に説明したところで、返ってくるのは大概「嗚呼、そういうの俺にもあるよ」である。それは「大したことないから大丈夫だ」という彼らなりの共感や励ましなのかも知れないし、「その程度のことは皆んな我慢して働いてるんだ。ガタガタ言うな」いう苛立ちなのかも知れない。



さて、少し双極性障害について詳しい人、その多くは当事者だと思うが、は双極性I型障害と双極性II型障害の2種類があると言うのは既にご存じのことと思う。基本中の基本ですからね。知らない人のために書いておくと、I型は躁状態と鬱状態が周期的に、II型は軽躁状態と鬱状態が周期的に起きる障害。どちらも寛解はあっても完治はしない。一生涯、薬剤療法が必須。
躁状態は入院が必要なレベル、軽躁状態は普段より調子が良いレベル。躁状態は4日以上続く場合、軽躁状態はそれ4日未満などなどが診断基準として定められています。
これだけ書くとII型の方が軽症と思うかも知れませんが、II型は急速交代型になりやすいとか、症状をコントロールしにくいとか、I型に比べて自殺リスクが高いなどの問題があり、どっちもどっちだった気がします。ここら辺はうろ覚えなので、引用禁止です。

まあ、そこはどうでもいいんだ。

この診断基準、どれだけ信用できるんですかね? 

患者側は基本的にサンプル数=1(自分自身)なんですよ。それに比べて、医者側は多数の患者を診ている。では、医者が信用できるのかというと、それも疑問だ。何故なら、医者は患者本人とは別人格と言う単純な理由による。躁と軽躁の区別、それで良いの? 4日って、どこから出た数値? その点については懐疑的である。

僕はプロフィールに双極性障害とは書くけれども、意味があるとは思わないので、I型、II型かは書かない。診断書ではII型にはなっているし、入院経験はない。しかし、薬物の過剰摂取(アルコールなので、合法だが)で複数回救急搬送されているし(逆行性健忘のため何も覚えていない)、4桁の積読はそれなりに異常とも言えるし(そして現在も増え続けている)、「仕事」という名のもとに高額の買い物依存も治っていない。一応、主治医に「仕事」について伝えてあるが、まさかほとんど……これ以上はやめよう。主治医の基準では、躁状態が4日以上続いても関係なく、入院が必要なければII型なのだそう。

そもそも、I型とII型を分ける意味はあるんですかね? 
双極性障害はいわゆる鬱病との区別が難しい上、他のパーソナリティ障害との併存率も高く、状況は複雑である。それを更にI型とII型に分けるなんて細やかな芸当、本当に出来るのか? 主治医のいう、入院が必要ならI型、その他はII型が大雑把に見えて実は正しいのかも知れない。



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