英語教育(とある大企業の禁忌目録#25)

大企業の英語熱はとどまることを知らない。社内公用語を英語とするIT企業が現れ、物議を醸しだした。国策としては、高度な技術を持つ外国人はビザが発行されやすくなっているので、日産のカルロス・ゴーン氏のように幹部が外国人になることもない話ではない。
他方、日本人が積極的に外国人を職場に呼びたい局面も増えてきている。海外企業とのやり取りの窓口要員、通訳・翻訳では海外企業の出身国の人材がチームにいるほうが成果につながりやすい。

問題は、英語そのものが神格化してしまって、仕事の成果はそっちのけで、英語を話せる組織にするという強迫観念が生まれている。大企業は管理職にTOEIC700点程度を昇格条件とすることが多く、英語研修や団体受験の試験を無償で受けられたりする。大企業の英語教育を推進する立場の人からすると、TOEICの点数という非常に明確な指標で、部門ごとに平均点を出し、基準をクリアする人数を評価するのは成果として非常にわかりやすい。
一方で、現場としては英語を全く使わない仕事もたくさんある。もしくは、多少英語でのメールのやり取りがあったとしても、翻訳をどこかに依頼したほうが効率的だったりする。全社で必要な英語力と実務に必要な英語力を整合させるのは簡単なようで難しい。その英語の研修、費用対効果は合っているのだろうか。

実務で英語を使う必要がないとすると、社員の学習モチベーションが上がるわけがない。ゴルフでラウンドしたくないのにもかかわらず、ゴルフ道具が無償で借りられて素振りをするように命じられ、練習だけさせられる状態に近い。それでTOEICが600点に上がったとしても、外国人相手にハキハキと自分の主張を伝えられるとも思えない。
逆に、駐在員は赴任が決まると、すごい勢いで現地語を覚える。生活がかかっていると学習モチベーションが違う。人間、環境が変わればできるわけだから、使うかどうかわからないのに、英語を社員全員に課すことが本当にみんなの幸せなのか疑問が残る。あれ、みんな不幸になってない?

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