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汚れなき人 第4話:雨

すみれさんに会いたくて、あれから何度か自腹でお店に会いに行った

あの日はひどい雨が降っていた

山縣「すみれさんって女の子いますよね?」

すみれ「あれ、私話したことありましたっけ?」

山縣「信じてもらえないと思いますけど、俺会ったことあるんです。9年前。まだおれが高校生だったころ。お二人に」

すみれ「??、、えーその頃の私もちゃんと可愛くできてました?」

あきらかに戸惑った顔してたのに、瞬時に笑顔に戻してプロ意識の高さを感じた

山縣「はい‼︎だって俺一目惚れだったんです。あの時美術の宿題が終わらなくて、花を持って帰ってて、その花をきっかけにあなたと会話出来たから、そこから植物に興味を持つようになって、生物の教師になったんです。」

すみれ「お花、、」

山縣「だからすみれさんがいなかったら、俺はこうはなってなくて、また会えるなんて思ってなかったけど、9年も経ってるのにあの時のまま全然変わらなく綺麗で、、」

気づいたら勃起していた

決してエロい想像をしたわけじゃないけど、9年前始めて見たあの衝撃とずっと頭の中で妄想していたすみれさんと今こうして話ができている事が、どうにも全身の興奮を抑え切れてなかった

どうしても伝わってほしかった

思い出して欲しかった

今思えば思い出すわけないのに、、

店中に響き渡るぐらいの大声で初恋の人なんです。のクダリを話してしまったことに気づいて恥ずかしすぎて、、顔が上がらなくなった俺に彼女は耳元で囁いた

すみれ「今日この後アフターできますか?お店の外でその続きお話ししませんか?」

山縣「、、え?」

アフターってなんだ?いくらするんだ?とかもよぎったけど、憧れの人が誘ってくれている

行かない選択肢なんてなかった

(ホテルの部屋)

山縣「すみれさん俺、、」

すみれ「何も言わなくていいから、集中して」

山縣「はい、、」

その日、すみれさんと身体を重ねた

もちろん客として。

アフターのお金とホテル代を払った

だけど、ほんのちょっと期待してる自分もいた

帰り際のあの言葉を聞くまでは

山縣「あの、、また会えますか?」

すみれ「もちろん。また」

またの後に「お店で」という言葉が聞こえた気がした

すみれさんは一度も俺を「お客」として以外の目線ではみていなかった

憧れのヒトと寝れた

何度も妄想の中でも抱いてた

妄想の数百倍気持ち良かったその一瞬の幸せは、あっという間に終わってしまった

俺がしたかったのは、これだったのか

あっけなくて、この現実を頭の中で整理出来てなかった

すみれさんはお金を払えばまた会ってくれるし、多分また寝てくれる

でも抱き合ってたとき、ほんの少し震えているようにも感じた

お客なら誰とでも寝てるんだろうけど、こんな事やりたくてやってるとは思えない

俺がもっと稼げるようになれば、彼女を自由に出来たりするのかな

きっとあの女の子の為なんだろうな

シングルマザーは想像以上に生きていくのは大変だ

少なくとも俺は、すみれさんの素の姿を知ってる

どうしてもあの時の見た笑顔のすみれさんがこんな事を望んでする人だとは思えないのだ

きっと俺はまだすみれさんの素を引き出せてないんだ

あの子の前だけでみせる素のすみれさんを

そもそもあの女の子は誰の子なんだろう?

あの時はまだすみれさんに似ている感じには見えなかったけど、今は小学生ぐらいかな?

きっと可愛く育ってるのだろうな

聞きたいことが沢山あるのに、彼女の前だと何も言いたいことを聞けない

聞いてしまうと、もう二度と手の届かないところに行ってしまいそうで、、

すみれさんとの距離が遠すぎて、、

会えば会うほどその距離の遠さが見えてきて辛くなる

(お店)

お店のママ「あら、すみれちゃんおかえりなさい。雨大丈夫だった?」

すみれ「うん、すぐタクシー乗ったから大丈夫」

ママ「あの先生若そうだけど、アフター大丈夫だった?ちょっとペース早いんじゃない?」

すみれ「いつもよりね。でも大丈夫。あの子広尾に住んでた子みたいなの。きっと実家お金持ちのはず。金持ちは簡単なのよ。欲しいモノはなんでもお金で買えると思ってるから。まだ若いけど、取れるだけ取るわ。私にぞっこんだからあの教師」

ママ「また悪い顔してるわよー。スイッチ入ったすみれちゃんは本当に怖いわよね。」

すみれ「ちょっとひどい!ちゃんとお店にもバック入れてるでしょー」

ママ「はいはい。毎度あり!いつもありがとうございます。」

すみれ「とんでもございません。ゆづもこれからどんどんお金かかるし、私ももう若くない、稼げる時に稼いでおかないと」

ママ「ゆづちゃんも来年中学生かー。時が経つのは早いわね」

すみれ「うん。」

(現在:12年後)

整骨院

スタッフ「あー今日はもう止まなさそうですねー。雨だとお客さん来ないですよねー」

私は雨が嫌いだ

雨の音が自分の孤独さを追い立ててるように聴こえてくるからだ

小さな頃はこの音を必死で耳を押さえて聞こえないようにしていた

高木「雨だと外に出れるの怖いんですよね」

ゆづ「え?」

高木「ぼくは耳からくる情報が頼りなので、雨の音のせいで、ほかの音が聞き取りずらくなってしまうので」

ゆづ「今日も来る時大変でしたね」

高木「あ、はい。でもまぁ自宅までなら全然大丈夫なんですけどね」

ゆづ「高木さんってあの交差点の先の方でしたよね?私通り道なので、帰り一緒に帰りましょうか。今日」

高木「え、いいんですか?」

ゆづ「私も雨の音嫌いなんです。こーいう日は一人でいたくなくて。だから送らせてください」

高木「ありがとうございます。どんな理由でも良いです。単純に嬉しいです。」

ゆづ「こちらこそ」