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汚れなき人 第1話:柚子

ゆづ「ごちそうさま」

男「ねぇゆづ、今日部屋とってるんだけど」

ゆづ「ごめんね。誕生日は毎年いきたいところがあって」

男「え、男?」

ゆづ「それはどうかなー」

男「なんだよ、それ」

ゆづ「私嫉妬深い男嫌い。さよなら」

と言い終わる前に、私は席を立って歩き出していた

コイツも他の男達と一緒だ

私をただの食べ物だと思ってる

だけど私の体はまだ誰のものでもなかった

男「っち。あの女にいくら注ぎ込んだと思ってるんだよ」

私は今日25歳になった

ゆづ「あの時の先生と同い年になったよ」


(翌日)

ひかる「おはよーゆづ。昨日の誕生日はさぞかし豪華な一日を過ごしたんでしょ?」

ゆづ「別にーホテルでフレンチ、カルティエの時計もらったぐらいかなー。もうあの男は切ったけどね」

ひかる「え、なんで?もったいなーい。」

ゆづ「あ、この時計売ってきて、半分あげるから」

ひかる「え?これ最新の超人気のやつじゃん!本当に売っちゃうの?多分持ってた方が価値あがるよ?」

ゆづ「興味ない」

ひかる「出た出たー。本当にゆづって物欲ないよね。なんでそんなに現金に拘るの?」

ゆづ「だって。お金は裏切らないじゃん」

目標金額をやっと超えたのだ

高校を中退して、この世界に入ってからずっとナンバー1でやってきたけど、流石にもう限界がきてるのはわかってる

それにどんどん似てくるあの人の容姿に頼るこの生活から早く抜け出したかった

だから1年前から資格の勉強をしていた

第二の人生は整体師としてやっていく

これからは手に職をもって容姿には頼らずに生きていきたい

あの時の私はただ早く大人になりたかった

あの時、未成年のわたしを住み込みで働かせてくれたママには感謝している

ママ「ゆづ、これ」

ゆづ「え?」

ママ「お誕生日おめでとう。あと資格おめでとう」

ゆづ「ママ、、勝手な事ばっかりしてるのに、、ありがとう」

ママ「あなたを雇った私の目にくるいはなかったわ。長い間ナンバー1として稼いでくれたし、元は充分すぎるほどとったw

ねぇ開けてみて」

ゆづ「うん、え?時計?」

ママ「そう。整体師さんも時計は必要でしょ。ゆづはただでさえ女性からのやっかみ凄いから、目立たないようなお値段をチョイスしといた」

ゆづ「ありがとう。ママ」

ママ「寂しくなるけど、しんどくなったらいつでも戻ってきなさいね」

ゆづ「うん」

今日私はお店を辞めた

もらったプレゼントは全部お金に変えて

物欲もない私はずっと貯金してきた

やっと貯まった1億円

マンションは小さいけど、既に購入してもらってるから、

一人で働かずに死ぬまで生きていくなら十分な額

新しい職場は男性が多くて、何もしなくてもみんな優しかった

男性は本当に私の外見しか見てない

その日院長に個人的な歓迎会をさせてくれと言われた

男ってみんな同じだ

私を食べ物にしか見えてない

まぁ私も男の事がお金にしか見えてないから、どっちもどっちか、、、

小さい頃から家以外の場所では常にチヤホヤされてきた

でもそれは自分に注がれるものではなく、私ごしに母に注がれていると幼いながら気づいてしまった

保育園でも「ゆづちゃんのお母さんは綺麗だねー。かわいいねー。」と毎日言われていた

幼児の父親達はもちろん母親達ですら、憧れの眼差しで母を見ていた

私は多分産まれた時は父親似で、みんなあんなにお母さんは綺麗なのに、、、

ちょっと可愛そうみたいな目線で私を見てきていた

母は毎日違う男と出かけに行っていたから、誰が本当の父親だったのか未だに分からない

それでも一応はちゃんと育ててくれたし、高校にあがるぐらいの時は母の遺伝子が私の容姿を変えてくれていた

学校では私を知らない人はいなかった

いったい何人に告白されたかわからない

私は母に認めてほしくて、自分磨きを頑張った

母に似てると認めて欲しかった

女性として憧れていたから

(高校1年の夏)

先輩の女たち「お前さぁ、みさきの彼氏寝とっただろ!?何とか言えよ」

またか、、

みさきって誰だよ、、

こーいうタチの悪いやっかみも最近は慣れてきた

ゆづ「先輩、すみません。私男には困ってないので、わざわざ先輩の彼氏さんに手だしたりしません」

先輩「はぁー?まじで調子乗りすぎなんだけど。とりあえず謝れよ。土下座しろ」

うざい。

ウザイ。

「おーい、もう下校のチャイムなってるぞー?」

先輩「うわ、ヤマガタだー。行こう」

逃げるように去っていく女達

良かったー。やっと終わった。

ヤマガタ先生「大丈夫?」

ゆづ「別に助けてくれって頼んでませんから」

ヤマガタ「君1年3組の菅野ゆづでしょ?」

ゆづ「は?」

ヤマガタ「僕は山縣ちあき。今月から産休に入る南先生の代わりに生物を担当します」

ゆづ「あ、そうなんだ。」

ヤマガタ「久しぶりに1年生をみるから、名前と顔を一致させときたくてね。柚子。綺麗な名前だね。君にぴったりだ」

ゆづ「みんなそう言う。」

山縣「君はとても健康そうに見えるもん」

ゆづ「は?」

山縣「とにかくよろしく。気をつけて帰れよ」

あの日、先生と初めて喋った日、まだ先生の魅力には気づいてなかったけど、声がとても心地よかったのを覚えてる

(現在:職場)

新しい職場にも慣れてきた

相変わらず院長からのセクハラは続いていたけど、お小遣いももらってたし、その生活にもある意味慣れてきていた

院長「みんな集まって。今日から新しいメンバーが入ります。じゃ挨拶して」

高木「はじめまして。今日からこちらでお世話になることになりました。高木はやとです。産まれた時から弱視なので、色彩はギリギリ見える事もありますが、人の顔や字を読む事ができないため、書類作業とかはお願いしてしまうので、ご迷惑をおかけしてしまいますが、よろしくお願い申しします。」

目が見えないのか。

へぇー。でもビックリするぐらい綺麗な顔してる

勿体ない

スタイルも良くて、顔も綺麗なのに

この容姿を自分で気づいてないなんて

院長「菅野くん、君が最初はフォローに入って、ペアとして動いてね」

ゆづ「え?私ですか?私もまだ三ヶ月ですけど、、」

院長「あ、高木くんはね整体師としてのキャリアは君とは比べ物にならないのよ。だから事務作業のとこだけ君がサポートすればよいから」

なんだそれ

ゆづ「承知しました」

ゆづ「高木さん、はじめまして。菅野です」

高木「はじめまして。菅野さんってきっと綺麗な人なんでしょうね。」

ゆづ「え?あ、院長なんか言ってました?」

高木「いえ、オーラというか色彩が見えるんですけど、菅野さんは白に近い金色というか。とても神々しいオーラがします」

ゆづ「...ありがとうございます。高木さんも普通にカッコ良いですよ」

高木「みなさんそう言ってくれるんですよね、不思議ですよね」

ゆづ「不思議とは?本心だと思いますけどね」

高木「ははは、僕はひねくれてるんです。ゆづさんみたいにはっきり意見が言える性格の人に憧れます」

ゆづ「私性格悪いですよ?友達1人しかいないですし」

高木「1人いれば十分ですよ。僕は誰かの手を借りないと電車に乗る事すら出来ません」

ゆづ「あ、ごめんなさい。」

高木「え?急に謝らないでくださいよw冗談です。何年目見えないと思ってるんですか」

ゆづ「、、高木さんのキャラが掴めません、、」

高木「ははは。僕は障がい者ですけど、障がい者だから可哀想とか思われたくないんです。だから同情という感情だけは僕に抱かないでください。そこだけお願いします。」

ゆづ「なるほど、わかりやすいです。承知しました!」 

目が見えないからかな

高木さんは私を見た目だけで判断しない人なような気がした