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#好き011 新潮文庫

印刷業界で働いた経験があるためか、印刷物を手に取ると、手の上でクルクルと回しながら、製本の仕組みや、特殊加工や、装丁などを眺めたうえで、出版社と印刷や製本をした会社をチェックするクセがある。
それを見たところで、大したことは解らないのだが。

新潮文庫が好きになったのは、そんな変なクセがつくずっと前のことで、学生のころからだ。

まず、カバーのデザインがシンプルまたは控えめで良い。絵柄がある場合も、作品への無用な先入観を与えないような、控えめのデザインでいい。
好きなのは谷崎潤一郎の赤色、ヘッセの薄い水色、カミュの銀色など、例を挙げたらきりが無いけど、作家ごとに分かれているのがいい。なお、デザインのシックさと統一性で言えば、岩波文庫の方が勝っているが、私が手に取る本に岩波は少なかったので、新潮ほどの親しみは感じられない。

続いて製本について、必ずしおりの紐(スピン)がついてること、本の上部が不揃いで凸凹していること(天アンカット)が、新潮文庫の特徴だ。凸凹はしおりを付ける都合で必要な加工だそうだが、そこにちょっとした陰影が出来るのが私は好きだ。これらがない文庫本を手に取ると、少しがっかりしてしまう。

それから、紙がいい。「新潮文庫用紙」という、少し赤味のかかった紙が好きだ。目に優しい印象があるのと、新しい本でも古い本と同じような質感で、よそよそしさを感じさせない。そもそもつるつるで真っ白の紙では風情がない。あと、気のせいかもしれないが、本が柔らかく適度にしなる気がする。少し折り曲げて弧を描くように掴んだときのフィット感がいいし、ズボンやジャケットのポケットに入れたときに、ほどよく馴染むのも好きだ。

また、フォントだとか、文字サイズだとか、余白のバランスだとか、そういったことも、とにかく全てが安心で、不快な思いを一切することなしに、読書に入りこむことができる。

新潮文庫の良さを感じるタイミングは、新潮文庫以外の残念な文庫本を手に取ったときである。ほんの些細の、ちょっとしたストレスを感じたときに
「あぁ、これは新潮文庫じゃないんだ」と思わせる。

いつもありがとう!新潮文庫。これからよろしく。


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