子ども本人に手渡すということ

教師の役割を井上(2022)は次のように示しています。


「『その子にとっての学びやすさを探り、試していくこと』だという思いは変わらない。そのうえで、その子が環境の変化に左右されず学び続けていくための前提条件は、『本人に手渡していく』こと」


この言葉はとても深いのではないでしょうか。

個人的にとても響いたのが「本人に手渡していくこと」というフレーズです。

教育のゴールが子どもの自立だということを考えると、子どもが学び続けるためには「自分の学び方を知る」ということが必要になります。

自分の学生時代の勉強方法を考えると、むやみやたらに暗記するといった勉強法でした。

中学校で「とにかく問題を解きまくる」「書いて書いて書きまくる」という学習方法を確立して以降、その学習法でなければいけないみたいな変なスタイルが身についています。

中学校の先生に価値づけられたのもきっかけの1つかと思いますが。

この学習法が悪いというわけではありませんが、この学習法だけでは通用しなくなります。

やはり、教科に応じた学習法や自分に適した学手法をいくつか持っておくことが大事なのではないでしょうか。

そう考えると、一斉学習ではさまざまな学習法を身につけることが難しく、個別最適な学びが求められているが背景が分かるような気がします。


さて、先日特別支援教育の学習会に参加する機会がありました。

そこでの学びを3つの視点で振り返りたいと思います。



1方法に目を向けること


子どもの中には「そのやり方は分かる、成功のイメージもできる、だけどできない」という子がいます。

これは大人でも当てはまる人も多いのではないかと思います。

学校に置き換えて考えると、「読むこと・書くこと」ができないは1年間ずっと続いていきます。

どれだけICTが普及したとしても「読むこと・書くこと」がなくなることはなく、ずっと向かい続けなければいけません。

漢字を書いて覚えるのが苦手な人が、いくら漢字を書いても覚えることはできません。

自分がが苦手な方法を繰り返してもできるようになるわけがありません。

そこで、「方法に目を向ける」ことが大事であると言われていました。

上記の例でいくと、書くという方法以外のものを試し、その子に合ったものを探していくということです。

「特別支援=オーダーメイド」という言葉が腑に落ちました。



2仮説を立てて検証していくスタンス


さて、書くという活動に焦点を当ててみたいと思います。

書くという活動が行われるまでには大なり小なり様々な過程があります。


・文字を思い浮かべる

・線の長さや形を意識して書く

・集中を持続させる


などなど、まだまだ過程はたくさんあります。

教師は、書くという大きな視点で子どもの実態を捉えるのではなく、もっと小さな視点に立って子どもの実態を見極めることが必要です。

学習会では、「何に困っているか(現象)→なぜそうした困難が生じるのか(困難の背景の予想)→どんな支援が必要か(手立て、含教具)」ということが紹介されていました。

子どもを変えるという発想ではなく、苦手な部分を支える発想という発想が大切だということが分かりました。

様々仮説を立て、試行錯誤し、その子に合ったものを探し出す根気強さを大事です。



3学習量を減らせばよいわけではない


学習会の中で「あの子はできないからといって、学習量を減らすのはその子のためにならない」という指摘がありました。

確かにその場は良しとなるかもしれませんが、将来の自立を見据えると、自分ができないことから逃げていることに他なりません。

学習量を減らすと、そのことができないまま大人になっていきます。

先ほども述べましたが、「読むこと・書くこと」がなくなることは考えにくいです。

ということは、この力は身につけなければなりません。

最後の1段を子どもが登り、「自分でできるんだ!」「最後まで自分でやり遂げることができた」と子どもが経験することができるように、教師が方法にアプローチした支援を行う必要があります。

そうすることが、「1人で解決できる=自信につながる」となり、子どもが主体的に学習に取り組むようになるのではないでしょうか。



参考文献

井上賞子(2022)「学びにくさのある子への読み書き支援」Gakken

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