②/②この本、ここが使えます!『ストーリーとしての競争戦略』_「戦略と目標を混同してませんか?」
戦略をたてるとき、私達はマーケティング分析やSwot分析をしたり、他社にない新技術・新サービスを見出そうとしますが、
ふと気がつくと目標を戦略と混同してしまうことはありませんか?
今日は、『ストーリーとしての競争戦略』楠木建著 東洋経済新報社の「戦略と目標」の違い、「戦略の立て方」を参考にして、ビジネスの現場で使えることを考えてみたいと思います。
1.「What」_「目標を立てることが戦略」の勘違いの恐ろしさ。
読者はこんな経験はありませんか?
戦略を考えているはずが具体的な戦術を思いつき、それに心を奪われていつのまにか目標を立ててしまう。
目標ができたら、戦術を日程計画落とし込んで、
「はい! これで戦略・戦術・実施計画の一丁上がり!」
いざ実践してみたら思うように事が運ばず頓挫してしまった。
というような経験です。
私の現役時代には、このような経験はかなりありました。
当時の私を思い起こすと、目標・戦術は明確になっていても、どこに行くかも、どこをどうやって行けばよいのか道筋が全く分かっていなかったように思います。
2.「Why」 他社との「違い」は自分では気づけない理由
私の失敗した戦略は、具体的な目標や戦術は明確になっていても、目指すべき終着点があいまいな戦略でした。
同書では、戦略とは「違いを作って、繋げること」だと言っています。
「違い」とは ⇒ 他社との違い
「繋げること」とは ⇒ 複数の事柄の因果関係を明らかにして繋げる
「因果関係」とは ⇒ 事柄を繋げてストーリーを作ること
ここが抜け落ちていると、単なる戦術と目標がバラバラに積み重ねられた戦略となってしまいます。
ここで最も重要なことは、
他社との「違い」を把握することです。
きっと、マーケティングの経験がある読者なら、Swot分析をすぐに思いつかれたのではないでしょうか。
Swot分析は、自社にどんな「強みや弱み」、「機会や脅威」があるのか分かり易く示してくれます。
しかし、
なぜそれが自社の「強み」になっているのか?
なぜそれが自社の「弱み」なのか?
など、「強み」「弱み」が生まれた因果関係はSwot分析では知ることができません。
例えば、日本製品は、高品質という「強み」があります。
日本製品はもともと高品質でしたが、トヨタが発明した品質管理システムTQC(Total Quality Control)が広まってから、日本の製造業の品質は一機に上がりました。
今ではTQCは日本だけのものではなく、世界中の企業に採用されていますが、なぜ日本製品はいまだ高品質として評価されているのでしょうか?
それは日本人特有の気配り、気働きという暗黙知があるからだと思います。
つまり、この気質はいくらTQCを採用したところで、日本人特有の気質は他国は決してマネできない「強み」であり「違い」ということになります。
戦略を考えるとき、
こういった他社にマネできない「違い=強み」を武器として、そこから生み出された新らしい価値を顧客に喜んで頂くか?
ここを終着点として、戦略を考えれば戦略と目標が混同されることはなくなります。
しかし、そうは言っても暗黙知の違いを見つける事って、そんな簡単なことではないんですよね。
なぜなら、暗黙知とは社員同士が当たり前だと思っていることが、他社にとっては凄いことで、自分ではなかなか気がつかないことなんですから。
うーーん 悩ましい。。。
3.「How」 「違い=強み」を基盤とした戦略戦術はどうやればできるのか?
まずは何を「違い」と定義するかで戦略が大きく変わります。
1)他社との「違い」には2種類ある
1つ目の「違い」は、競争戦略(SP戦略 Strategic Positioning)です。
他社と同じ土俵で、付加機能、価格競争、付加サービスなどで「違い」を商品化することですが、これは他社でもすぐにマネできることです。
つまりレッドオーシャンで戦うということです。
2つ目の「違い」は、全社戦略(OC戦略 Organizational Capability)です。
他社がマネしようとしてもできない「違い=強み」を活かした、製品・サービスを提供する戦略です。
「強み」とは、自社特有の習慣、風土から生まれた暗黙知が基盤となった製品・サービスを創造し、他社にマネできないものです。
つまりブルーオーシャンで戦うということです。
2)「強み」を基盤とした戦略を作る
この本の中で面白い事例があったので要約してご紹介します。
セブンイレブンの特質すべき戦略は「仮説検証型発注」です。
「仮説検証型発注」は、店舗発注者が自ら立てた仮説に基づいて商品や数量を考えて発注するものです。
例えば、店舗近くの小学校で運動会があるという情報を聞いたら、「普段よりお握りが多く売れるのではないか」という予想を立てて発注するというものです。
これに対してローソンは「自動発注システム」で、本部から店舗に発注すべき数量が示されるというものです。
つまりセブンイレブンの戦略は、以下のようになります。
・現地の情報をいち早く知り、発注は店舗責任者が決める。
・成功した事例は、発注システムに組み込まれる。
・暗黙知の成功事例は、「強み」としてアルゴリズムに組み込まれる。
3)マネできない戦略が生まれるプロセス
その後、ローソンも「仮説検証型発注」を採用したそうですが、セブンイレブンほどの成果を上げられなかったそうです。
何故でしょうか?
それはセブンイレブンは、ローソンがマネしている間も「仮説検証型発注」をどんどんアップデートしているので差が縮まらないからです。
ローソンがセブンイレブンを追い越すためには、自社ならではの「違い=強み」を見出し、それを基盤としたイノベーションを起こすしかないということになります。
4.この本は、本当に実践に活かせるか?
他社、他者との「違い」は、一朝一夕には見出すことができません。
それは自社、自分にとって当たり前のことが、他社、他者にとっては驚異的なことだからです。
だから、本人はなかなか気づかない。。。。
本書の述べているように、「違い」を見出せれば、そこからイノベーションを起こすことは可能になります。
では、どうやって「強み」となるような「違い」を認知するのか?
これは、日頃の活動のなかでWhat~Howを分析して、時系列に記録して観察するしかありません。
What(現状把握) 何が起こって
Why (仮説設定) 何故そうなって
Why (課題設定) 解決すべき問題=課題は何か?
How(戦術) 課題を解決するためには何をすればいいのか?
具体的なやり方は、以下マガジンに詳しく書きましたので是非覧下さい。
https://note.com/bauhause6/m/m30f879b64d21
【最後に】
この記事は、全ての物事をWhat~Howに分解するロジラテ思考で書いています。ご興味ありましたら、是非ロジラテ マネジメント マガジンお読み下さい。
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