旅の記憶 1994・夏 トルファン #3
30年前の夏
僕は中華人民共和国 新疆ウイグル自治区
トルファンにいた
バザールの人々
この頃の地方の街には
スーパーみたいな店舗はまだあまりなくて
買い物といえばこんな感じのバザールが主だった
僕たちもそこで食料を求めたり
何か変わったものを探したりするのだが
僕が一番好きだったのは
そこにいる人達を見ること
こんな少年が
店番をしていることも珍しくなく
大人のお客さんと
立派に値交渉をしていたりするし
ちょっと強面のこんなおじさんも
話しかけると案外優しくて
僕みたいな旅行者は
絶対に買わないとわかっているだろうに
商品の説明をしてくれたりする
商売の邪魔をしちゃ悪いかな
なんて最初は考えたけれど
邪険にされることはなかった
中には、大道芸人みたいな人もいて
この親子は楽しげに踊りながら楽器を奏で
チップを稼ぐ
市場には、あらゆるものと
あらゆる人がいて
僕たちは一日中を
ここで過ごすことになるのだ