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クライミングゲーム「Jusant」備忘録

「Jusant」というクライミングゲームをクリアした

ので
個人的に気になったゲームデザイン視点のポイントを書きました。

発売元:DON'T NOD(ライフイズストレンジを作った会社)
発売日:2023年10月31日リリース
対応プラットフォーム:PC / PS5 / Xbox Series X|S https://store.steampowered.com/app/1977170/Jusant/

『Jusant』はまったく新しいアクションパズル登攀ゲームであり、高くそびえる塔の頂上を目指す瞑想の旅でもある。自分のペースで限界と向き合い、様々なルートを開拓し、今は亡き文明の秘密を明らかにしよう。

steamより紹介文引用

ゲームの感想(ネタバレなし)

どんなゲームか、ちょっと気になってた、という人向けにざっくり感想をかくと

世界観は「ICO」のような空気感を持つゲームで、ビジュアルも(ライフイズストレンジのビジュアルに似て)幻想的で美しく世界観を堪能出来る。

基本的には、高い塔を上にひたすら登っていくシンプルにクライミングを楽しむゲーム。
横道などで収集物などはあるが登る以外での必須のお使い要素などはなく、迷うことなく地道にじっくりと登ること自体を楽しめるような作りになっている。

価格が3000円くらいで10時間かからない程度でクリア出来るボリューム感なのもちょうどよく収まっていて個人的にも、ちょうどよく満足感はありました。

ストーリー的には主人公は喋らず、その世界に落ちている痕跡を読み取っていくことで世界観を語っていくスタイル。
ゲーム進行を優先してクリアしたので解像度高くストーリーを追いかけられたわけではないですがゴールまでたどり着けば終わりをちゃんと感じられるし、テキストを読み進めて世界観に浸れるとより楽しめるとおもう。

本作の軸であるクライミングについては(後述もしますが)
コントローラーの左右のトリガーが主人公の左右の手を掴む動作とリンクしており、実際に登っている身体感覚に近い感覚を味わえるのがこのゲームの醍醐味
少し操作が難しい箇所などもあるが、かなり遊びやすく配慮されて作られており、そのあたりのチューニングがしっかりされているのも好印象で
多くの人が楽しめる作品になっていると思います。

じっくり操作の感覚を掴んでいって自分の成長を感じながら遊ぶことを楽しめる方にはオススメの一作。

ゲームデザイン備忘録

面白さのトレードオフを感じた、手触りの遊びとゲーム進行

個人的に一番気になった点。

そのまえに少し話がそれますが
実は、その昔Wiiで出ていたロックンロールクライマーというWiiのゲームがありまして。

任天堂ウェブサイトから引用(WiiWare懐かしい!)

実はJusantというゲームにこのロックンロールクライマーで味わった面白さ。
ボルダリング的、身体感覚の面白さを個人的に期待していたというのがあります。

このゲームの面白さは(ビジュアルはさておき‥)Wiiリモコンで岩に手を伸ばし、トリガーで掴むという動作で登っていく。
加速度センサーで手の移動を検知し、トリガーボタンで掴む行為が
本当にリアルの登るという行為とリンクしている感覚で、体重移動も人間の体重移動も加味されたリアリティが感じられ、1つ1つの登る動作に対して、身体をシンクロさせる面白さを感じられた隠れた名作でした。

Jusantは基本コントローラーのトリガーボタンだけが登る動作のセンサー役となっているので、Wiiのように加速度センサーによる手の移動や角度などは加味されないディスアドバンテージはあるものの

左右の手と連動した左右のトリガーを掴んで登っていく感覚があり
登っていく身体的感覚(岩をコントローラーで掴み登っていく)も感じられるし、ロックンロールクライマーで感じた面白さ、体現出来てる!と感じれました。

と、最初は思っていたのですが。。

いや、面白いんです、ちゃんと登る感覚もあり、岩を掴む感覚もあって十分に手触りがいいんです。なので良い体験出来てるんです。

ただ、だんだん慣れてくると、トリガーをカチャカチャと適当に押すだけでも登っていけることに気づいてくる。
体重移動もそれほど身体構造など意識しなくてもゲーム側でいい感じに補正してくれたりして案外融通が利く。
遊びやすくチューニングされていて、変なストレスなく登っていけることに気づき始めるんです。

なるほど、このゲームは塔を登っていくという一連のつながりを持った長尺の体験を提供するということと。
同時に
落下などに対するやり直しのストレスが極大化しないように単純に登ることに対してのユーザーリスクはかなり配慮されている、配慮されなければならないゲームなのだと気づいたんです。

ロックンロールクライマーのようなステージ型でゴールが見えているゲームではないため、1手1手の重さを重要視するわけにはいかないのだと。
それは、
身体の動きや体重移動などの繊細な登ること自体の遊びに面白さを見出すことをしてしまうと、ヒトツナギの塔を登っていくことを楽しみとするウォークスルーとしてのゲーム進行から感じられる面白さを阻害してしまうため、登ることにはある程度の快適さが求められたのだろう。

ヒトツナギである以上、落下や失敗に対するハンデも大きくなりがち。
落っこちて、最初まで戻っちゃったみたいなオンリーアップみたいなことが起こるのはこのゲームの体験とは合わないのである。

故に単純操作のミスに対しては非常に寛容な措置が取られていることも進行を楽しんでもらうことを重要視している点はうかがえる。

細やかな配慮の仕様
基本的に崖から落ちないように崖からは普通に歩いているときは落ちないようになっている配慮があったり
それだと、崖を登る(落下出来ないなら登れない)ことができないので登るときには必ずロープをハーケンという楔をうつ仕様になっていて、その状態になることで崖から落下(ロープに最悪ぶらさがって落ちても戻れる状態を維持)出来るような仕組みになっている。

その仕様であれば、無駄に落下してやり直しとなることはほぼない、踏破したところまでは、確実に状態が確保され後戻りする危険度の少ない配慮が仕様的になされている。

何がいいたかったかというと
Jusantはクライミング自体の掴んだり体重移動したり腕を伸ばしたり、試行錯誤して1つ1つの手数を楽しむゲームではなく

ロープで壁を走ったり、ジャンプしたり、登れる場所を探したり。
ギミックを見つけたりするような、明確に意図されたギミックデザインを楽しむというカタチになっているゲームになのだ。

ゲーム的にどこを重要視しているかの話なので
そこに良し悪しはないが、登ること自体の楽しさがアクションとして少々深みがなかったのはちょっと残念ではあったかな。。(トレードオフなので仕方ないが、勝手に期待してたというのもある)

ギミック自体も驚きのある仕組みや達成感を覚えるものもそれほどなく、最後を迎えたという印象でもあった。
これは実際に遊びとしてのギミックをストレスのないカタチで組み込むことも、見せたい部分を優先することでそうせざるを得ないゲームだったのかなと考えています。
→ 遊びを増やせばストレスが増すリスクがある。といった具合に。

美しいビジュアルと相反する機能性と奥行きのジレンマ

些細な点ではあるが、美しいビジュアルであるが故の
どこ行けばいいのかが分かりづらかったり、岩の突起(つかめる場所)など登れる箇所や移動出来そうな場所を見つけるのが難しかったように思う。

アートワーク的に塔の至るところに意味ありげなオブジェクトが多く配置されており、賑やかしや雰囲気、生活感のようなものを感じさせることで、ユーザーは多くの妄想や想像力を掻き立てられる魅力ある世界になっているが
そのわちゃわちゃ感とトレードオフ的に

進行可能な記号としてのビジュアル面が少し弱かったのかな‥
と感じるところはあるが
雰囲気を優先したゲームなので、ポリシーを貫いた感はある。

たくさんのオブジェクトが想像力を掻き立てるビジュアル

あと、登っていく中で奥行きの揺さぶりも多く、手前から見ていて掴めていると感じる場所でも奥行きが届いてなかったー、で思ったとおりに行かないケースが何回かあったがこれは3Dのアクションを伴うゲームならあるあるネタ。
しょうがないところだが、このゲームの特徴として塔を登っている構造上、外側の壁を登っているときは背面に空間があるのでカメラが見やすいのだが、塔の内側を移動するときなどは狭い場合が多く、カメラがちょっと酔う印象もあった。
ダンジョンのような大きな構造設計にすれば広く作れ、視界も安定するがその構造自体を登っていくという、スケールの制限もあって奥行きに対する配慮の仕方もある程度ゲーム的に調整きかないところもあったのだろうと推測される。
人喰いの大鷲トリコも同様の課題を抱えていたようにも思う。

奥行きや持ち手の分かりにくさは登りやすさで配慮

ポテンシャルを十分出しきれなかった印象のクライミングギミック

1つ目の点でも書いたが
登る動作自体に面白さの重要点を置かなかった、というかストレスなく進行を指せる必要があったため、基礎アクションの動作はかなり快適に操作が可能となっていた。
そのため、遊びのバリエーションやギミックが少なく、なるほど!と発見を伴うような面白さもそれほど多くなかった印象で、おそらく登る動作自体を簡単にした結果、ギミック側のデザインのバリエーションをもたせることが難しかったのかな。。と推測される。
結果、基本形の登るという動作をカタチを変えて見せていくという手法が多かったように思う。

どの部分が掴むことが出来るか、進行先は少々わかりにくいなど

結論

クライミングの面白さと雰囲気を味わってもらうための長尺のゲーム進行を両立させるには一定のトレードオフが必要で

アクション性をとるか、世界観をとるか
後者を優先して表現したかった作品だったのかなと感じられた。

そう、ライフイズストレンジ作った会社!っていうので合点。ガッテン。した。

と、気になる点はいろいろと述べたものの
トレードオフとなる点をちゃんと理解し、このゲームの良さを失わないように活かし最善のところに落とし込んだバランス感覚は素晴らしいなと感じた作品でした。

課題を抱えながら最良のバランスへ落とし込んだ良作!

ということで、備忘録を締めたいとおもいます。
いい尺感のちょうどいいゲーム。

ガッツリすぎるゲームなかなか気後れしてしまうので
こういった中規模のチャレンジしているゲームは遊んでいても発見があって楽しいし、応援もしたくなります。

ぜひ、興味があればプレイしてみてください。

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